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AIもハイブリッドにできる?!ローカルLLMとクラウドの組み合わせの可能性! イベントレポート
5月9日、ハイブリッドクラウド研究会(HCCJP)第62回勉強会がオンライン配信されました。 今回のテーマは 「AIもハイブリッドにできる?! ローカルLLMとクラウドの組み合わせの可能性!」 。 生成AIが爆発的に普及した今、「社外に出せないデータを扱いつつAIを活用したい」「従量課金を気にせず自由に試したい」という声は日に日に高まっています。本レポートでは、登壇者のプレゼンと質疑応答を通して見えた“ローカル×クラウド”時代のリアルをお届けします。
ローカルLLMブーム到来の背景
機密データのガードSaaS型LLMは便利ですが、送信先が外部になる不安は拭えません。ローカル実行なら社内ネットワーク内で完結し、情報漏えいリスクを最小化できます。
コストコントロールGPT-4クラスの高性能モデルは従量課金が重くのしかかります。ローカルであれば電気代とハードウェア投資のみ。長期的にはコスト優位に立てる場面も多いでしょう。
モデルの進化スピード量子化・蒸留などの軽量化技術が急速に進み、一般的なゲーミングPCでも数十億パラメータ級モデルが動くようになりました。
こうした追い風を受け、ローカルとクラウドを場面に応じて使い分ける“ハイブリッドLLM”の構築パターンが注目されています。
セッション① 胡田昌彦氏
「AIもハイブリッドにできる?! ローカルLLMとクラウドの組み合わせの可能性!」
1. ローカルLLMを動かすための選択肢
ツール | 特徴 | 想定ユースケース |
|---|---|---|
Transformers+Hugging Face | Pythonで数行。モデル選定自由度が高い | エンジニアの検証・PoC |
Ollama |
の一行で実行。CLI派に◎ | ターミナル中心の開発環境 |
LM Studio | GUIでモデルを検索・DL・チャット。OpenAI互換APIも立ち上げ可 | ノーコードで体感/既存アプリを改修せず接続 |
vLLM | 高速推論エンジン。マルチユーザー向けに最適化 | 社内推論サーバー |
GPU 6 GBのミドルスペックPCで動作させたデモは圧巻でした。特にLM Studioが提供する「OpenAI互換エンドポイント」は既存コードのベースURLを差し替えるだけでローカル推論に切り替えられるため、参加者の関心を集めました。
2. プロキシ/ゲートウェイというもう一つの解
アプリ側に複雑な振り分けロジックを書き込むのではなく、LLMゲートウェイを置く設計も紹介されました。
OpenRouter:クラウド上の多数のモデルを単一APIで呼び分け
LiteLLM:コンテナでオンプレ展開可能。予算制御やレート制限機能付き
これらを使えば「まずローカルで推論し、処理が重いときだけクラウドへフォールバック」といった構成も容易です。
Q&A ハイライト
質問 | 回答要旨 |
|---|---|
「社内10名程度で使う場合、どの程度のGPUが必要?」 | VRAM 6 GB級でも小~中規模モデルなら動作可能。ただし同時接続が増えると遅延が生じるため、vLLMなど高速エンジン+キャッシュを併用すると良い。 |
「モデルを軽くする方法は?」 | エンドユーザー側での“魔法”は少ない。量子化/蒸留済みモデルを随時ウォッチし、適切なサイズへ乗り換えるのが現実的。 |
「チーム開発でローカルLLMを共有するには?」 | LiteLLMのようなゲートウェイを立て、OpenAI互換APIでアクセスさせると管理・課金トラッキングが容易。 |
控えめに言って“質問タイムがミニ勉強会”という濃度。ローカルLLM導入の勘所が具体的に共有されました。
セッション② 高添 修氏
「Microsoft "Adaptive Cloud" Updates」
Adaptive Cloudとは
クラウドとオンプレミスをシームレスに接続する“適応型クラウド”の概念。Azure ArcやAzure Stack HCIを核に、運用・セキュリティ・AIを統合管理する取り組みです。
5月の主なトピック
Azure Arc Insights for Power BIArc配下サーバーのOSバージョンやパッチ状況をグラフィカルに可視化。
Windows Server Summit 2025 ダイジェストホットパッチ適用やオンプレログ統合など、ハイブリッド管理機能が強化。
Azure Local Cluster 25H1 PreviewGPUパーティショニング利用時のライブマイグレーションが正式対応へ。
ローカルLLMが注目される今、オンプレGPUリソースをAzure管理面に統合するメリットは計り知れません。胡田氏の技術デモと高添氏のプラットフォーム戦略が見事に補完し合う構成でした。
今後の展望
課題 | 期待される解決策 |
|---|---|
GPU資源の偏在 | Edge/HCIサーバーを社内推論基盤として共用し、ライトLLMなどで制御 |
モデル更新の追従コスト | ゲートウェイ側でモデル切替を一元管理。アプリは“名前”だけ指定 |
セキュリティ・監査 | Arc+DefenderでオンプレGPUノードもクラウドと同等に可視化 |
ローカルとクラウドの“いいとこ取り”が拓く未来
ローカルLLMは「閉じた環境で自由に遊べるおもちゃ」から、「業務システムに組み込める企業資産」へ確実にステージを上げています。 今回の勉強会で示されたのは──
動かすハードのハードルは想像以上に低い。
OpenAI互換APIが“接続の面倒”をほぼ解消した。
Adaptive CloudがオンプレGPUもクラウドの一員にしてくれる。
つまり、“やってみる”までの距離は驚くほど近い、ということです。クラウドの最先端モデルとローカルの自由度をどう組み合わせるか。その設計こそ、これからのエンジニアリングの醍醐味になるでしょう。
気づけば勉強会は62回目。次の集まりでは、誰かが社内ハイブリッドLLMの成功談を披露してくれるかもしれません。
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