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著者あらたまさんに聞く!エンジニアリングマネージャーお悩み相談室 イベントレポート
「“EM”という肩書はもらったものの、正解が見えない」——そんな現場の声に応えるべく開かれた本イベント。登壇者は『エンジニアリングマネージャーお悩み相談室』の著者であり、LayerX でプロダクトチームを率いる 新多真琴(あらたま)さん。 前半は書籍にも通じる基調トーク、後半は参加者からの生々しい悩みに答える Q&A という二部構成で進行した。
セッション1
「マネジメントって難しい、けどおもしろい」
1. マネジメントが“難しい”理由
正解がない。 組織も人も常に変わり続けるため、昨日の打ち手が今日は通用しない。
意思疎通の摩擦。 伝えたかったことが届かないこと、受け取れないことが日常茶飯事。
唯一解の欠如。 100 % 納得できる合意は存在しない。だからこそ “Disagree and commit” が要る。
2. それでも“おもしろい”理由
一人では出せない成果を、チームで引き寄せる醍醐味。
自分の引き出しが増え続ける成長曲線。 「分からない→試す→分かったかも→また分からない」の無限ループが刺激になる。
メンバーの変化を一番近くで見届けられる幸福。 「こんな景色が見られるとは思わなかった」と感謝を受けた瞬間が生きがい。
3. 期待交換ワークのすすめ
自己想起 – まずは自分が「周囲から期待されている」と思う役割を書き出す。
相互記述 – チーム全員が、互いに期待する役割を付せんに書く。
ギャップ共有 – 本人の自己認識と周囲の期待を突き合わせ、齟齬を可視化。
“私たち”に主語を切り替え、チームとしての強み・弱み・リスク・追い風を議論。
ポイント:合意しただけで終わらせず、ワーク後 1 か月程度で振り返ると効果が持続する。
セッション2
Q&A ハイライト
質問 | あらたまさんの回答(抜粋) |
|---|---|
Tech Lead と EM、どちらを選ぶべき? | 「決めなくていい。目の前の課題を解きながら、自分の“体力50で成果100”を出せる領域がどちらかを棚卸しすると方向性が見える」 |
EM にテックリード経験は必須? | 「チームと技術の共通言語を持てる程度の理解は要るが“突き抜けた技術カリスマ”は必須ではない」 |
リスペクトを得るには? | 「成果を最大化する環境を整えることに集中する。結果として働きやすさと成果が両立すれば自然と信頼は付いてくる」 |
生成 AI スキルはどう評価? | 「100 の労力を 70 に減らせたなら残り 30 で何を生み出したかまでを見る。“使ったこと”自体は手段にすぎない」 |
評価制度が営業基準で合わない場合? | 「課題とデータを抱えて人事・経営に働きかける。外部アドバイザーの知見を借りるのも有効」 |
EM がいない組織に初めて着任したら? | 「まず “取扱説明書” を書いて配る。自分のキャリア・得手不得手・いま重点を置く課題を明示して対話を始める」 |
人は変われる? 採用で何を見る? | 「変化を楽しめるかどうかがカギ。現状維持=右肩下がりの業界だから、変化を追い風にできるマインドを重視する」 |
スケール時に 2 倍以上の価値を出すには? | 「権限委譲を段階的に進める。デリゲーション・ポーカーなどで意思決定を小さな単位に移し、待ち時間によるロスを減らす」 |
書籍『エンジニアリングマネージャーお悩み相談室』の構成
パート1:新人 EM が最初につまずく壁
パート2:チームマネジメント
パート3:ピープルマネジメント
パート4:事業視点と組織貢献
パート5:次のキャリア(EM of EMs、VPoE など)
章立ては「EM のライフサイクル」に沿っており、どこから読んでも“今”の悩みに刺さる作りになっている。
今日から試せる三つのアクション
期待交換ワークを 1 on 1 の延長で実施する – 付せんと 30 分があれば始められる。
自分の“取説”を社内 Wiki に公開する – キャリア・価値観・苦手領域を先出しすることで相談窓口を明確に。
意思決定のボトルネックを洗い出し、権限委譲のガードレールを敷く – チームが倍になってもスピードを落とさない基盤を作る。
イベントを終えて
「マネージャーが一番価値を発揮する瞬間は、その存在を意識させないとき」——あらたまさんの言葉が強く残った。 EM の仕事はスポットライトの外で、チームが自走する舞台装置を整えること。言い換えれば “いなくても回る状態を作る” というパラドックスに向き合う役割だ。
今回のトークと Q&A で印象的だったのは、方法論より“姿勢” の話が多かった点だ。評価制度の歪み、生成 AI の波、急激なスケール——どんな課題も「変化を歓迎できるか」「相手と前提をそろえられるか」という姿勢で捉え直せば、自ずと打ち手は見えてくる。
あらたまさんが掲げるこのマインドセットは、肩書きの有無を超えて、すべての開発現場に効く処方箋だと感じた。今日得たヒントを片手に、あなたのチームでも “期待をかけ合う” 一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
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