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「MCP Ops LT大会!!!」イベントレポート
はじめに
2025年6月2日、「MCP Ops LT大会!!!」がオンラインで開催されました。本イベントは、いま盛り上がりを見せるModel Context Protocol (MCP) と Agent2Agent (A2A) をはじめとするプロトコルを使った実用知見を共有するライトニングトーク大会。各登壇者が生成AIやLLMをいかに“本番運用”や“PoC”の段階で使いこなしているか、様々なテクニカルチャレンジが披露されました。
LTのテーマは、MCPサーバーの作り込みやクライアント活用、エージェント設計、内部ツールと連携する具体例など多岐にわたり、参加者同士で活発な議論も。今回は全6名のスピーカーが情熱を注いだ実装・工夫点を語り尽くしました。
本レポートでは、各LTのポイントをダイジェスト形式で振り返り、最後に全体を通した感想をまとめます。
1. イベント概要と登壇者紹介
MCP Ops LT大会!!! は、MLOpsコミュニティ主催のもと、MCP (Model Context Protocol) や Agent2Agent (A2A)など、新しい生成AIの運用技術に注目したLT(ライトニングトーク)です。 6名のスピーカーが、それぞれが取り組むPoCから本番導入の現場知見を発表。以下が当日の登壇内容と登壇者です。
LT#1: 「Agent AI開発におけるフレームワークについて」 株式会社ディー・エヌ・エー 滝口啓介 さん
LT#2: 「MCP Clientを活用するための設計と実装上の工夫」 ウォンテッドリー株式会社 Yudai Hayashi さん
LT#3: 「Langfuseで取得した結果をClickhouse MCPを使って分析してみた」 ガオ株式会社 Yuto Toya さん
LT#4: 「MCP×生成AI:スライド作成の効率化」 サイバーエージェント じゅん(ハンドルネーム) さん
LT#5: 「エレベーターを自然言語で動かす」 電気通信大学 佐伯明俊 さん
LT#6: 「PMと協力して、AIでサービス開発をちょっとだけ楽にしている話」 株式会社ココナラ さいぴー(金子彩貴) さん
以下、各LTのトピックをかいつまんで紹介します。
2. LT1: Agent AI開発フレームワークのおさらい (DeNA 滝口啓介さん)
テーマ: 「Agent AI 開発におけるフレームワークについて」
最初のLTでは、DeNAの滝口さんが「エージェントAIを実践するためのフレームワーク・ライブラリ」について整理し、社内PoCで触った所感を共有。 特に注目されているのが、LangChain や LangGraph のような既存ライブラリだけでなく、 クルエAI(クレア)やDeepFlow といった「エージェント特化型」や「ディープサーチ特化型」フレームワークも次々登場している点。
LangChain / LangGraph ユーザーが柔軟に組み合わせながらワークフローやマルチステップ推論を作る。LangChainが有名だが、LangGraphはグラフ構造で処理フローを可視化しやすい。
クルエAI エージェント同士の会話やワークフローを、より少ないコードで実装可能にする。「バックストーリー」「ゴール」「シークエンス」などを定義し、複雑なマルチエージェントシステムを楽に作る。
DeepFlow ディープリサーチ特化型で、大規模な情報探索を自動でこなすエージェントを作りやすい。
滝口さんは「選択肢が増えすぎて悩ましいが、プロダクト特性やチームスキルにあわせて適切なフレームワークを見極めたい」と強調。今後さらに多様なフレームワークが増える見込みで、各社のチョイスにも注目が集まりそう。
3. LT2: MCPクライアントでの設計と実装の工夫 (ウォンテッドリー Hayashiさん)
テーマ: 「MCP Clientを活用するための設計と実装上の工夫」
2人目の登壇者は、Wantedlyのデータサイエンティスト Hayashiさん。 同社で開発中のチャットアプリ内に「MCPクライアント機能」を実装してみたところ、セッション管理 や 複数サーバー連携 が意外と大きなテーマだったとのこと。
1つ目の課題である「セッションの保持」は、アプリがLLMとのチャットを繰り返し行う中で必要以上にセッションを貼らず、アプリ起動時にツール情報(MCPサーバー情報)をキャッシュ し、必要に応じてサーバーに接続する方法を採用。 2つ目の課題「サーバー複数化」の際は、サーバーごとにツール重複が起きたとき「どちらを呼べばよいか」を明確にするために「サーバー名+ツール名」の組み合わせでクライアントが一元管理する設計にしたそう。 Hayashiさんは「複数のMCPサーバーを使う場合は、ハンドラーでツール名の重複を吸収する仕組みがあると便利」とまとめていた。
4. LT3: Langfuse×ClickHouse×MCPで生成AIログ分析 (ガオ株式会社 Toyaさん)
テーマ: 「Langfuseで取得した結果をClickhouse MCPを使って分析してみた」
ガオ株式会社のToyaさんは、LLM運用の評価基盤としてLangfuseとClickHouseを組み合わせた事例を紹介。さらに、MCP経由でエージェントを立ててログ分析レポートを自動生成するPoCを行った話が注目を集めた。
Langfuse: 生成AIシステムの“ログ”を蓄積・可視化するツール。
ClickHouse: 高速クエリが特長のカラム型DB。Langfuseで取得した生成AIログを格納。
MCPエージェント: 解析結果をさらに要約・改善案を出すレポート化の役割。HTML生成も専用MCPで行い、アプリのUIに反映。
結果として、「自動レポート出力で生成AIの改善アクションが具体化し、継続的な実験サイクルを回しやすくなった」そう。これにより「評価で終わりがち」のログ分析が実際の改善へスムーズに繋がり、一歩進んだMLopsワークフローを実現しているという。
5. LT4: MCP×生成AIでスライド作成を効率化 (サイバーエージェント じゅんさん)
テーマ: 「MCP×生成AI:スライド作成の効率化」
じゅんさんは、スライド作成の地味に時間がかかる作業をMCPと生成AIで一気に効率化した話を披露。「スライドの構成検討からデザイン、画像生成まで大部分をAIが自動化でき、手作業を半減にできた」という。
使用ツール: カーソル(Cursor) + Devin(AIコーディングツール)など
何を自動化?
情報整理と要約
画像生成 (OpenAIイメージMCPなど)
スライドレイアウトをマークダウン記法で生成
じゅんさんは「スライド作成手順をテキストベースで記述するのが大きなコツ。マークダウンやマーメイド記法に対応していれば、構成とデザインを一気にAIに任せられる」とアドバイス。自前の作業は最終的な微調整と発表内容の細部調整だけですみ、結果大幅な時間短縮を実感した。
6. LT5: エレベーターを自然言語で動かす (電気通信大学 佐伯明俊さん)
テーマ: 「エレベーターを自然言語で動かす」
大学生の佐伯さんは、電気通信大学構内のエレベーターそのものをハードウェア改造し、MCPでAI制御する実験を進行中。まさに「リアルの物理空間×エージェントAI」を地で行く取り組みに、視聴者から「すごい!」「物理制御きた!」と注目が集まった。
構成: エレベーターにIOボードを組み込み→RP2040→RaspberryPi→(FastAPI)→MCPサーバー
実現できること: GPTが「1階へ向かって」などの指示を受け、ラズパイが制御基盤を操作してエレベーターを動かす
今後: カメラ等のセンサー情報を元に人を判別→自動で移動など拡張予定。
佐伯さんは「大学内のDX改革の一環。今後は他の学内インフラもAPI化してMCPでAIから制御する」と意気込み、会場を驚かせた。
7. LT6: PMと協力してAIでサービス開発をちょっとだけ楽に (ココナラ さいぴーさん)
テーマ: 「PMと協力して、AIでサービス開発をちょっとだけ楽にしている話」
最後のLTは、ココナラのさいぴーさん(EM)が、開発現場での要件整理・フロー図作成などをAI活用で効率化した事例を紹介。特にPMとのコラボで「複雑なビジネス要件を構造化し、C4モデルやシーケンス図をAIに生成させ、短時間で繰り返しレビューするワークフロー」が印象的だった。
メリット:
認識のズレが早期に発見でき、エラーケース等を事前に洗い出せる
要件レビュー頻度を大幅に増やせても、実作業はAIが下準備してくれるため時間負荷が抑えられる
MCP活用箇所:
GitHub連携でissueを操作したりコメントを残す。
今後は社内エージェントの展開を進め、さらなる効率化を狙う。
さいぴーさんは「スピードのみならず、議論の質が上がり、PMとエンジニアのコラボも自然と増えた」と強調。小さなところからのMCP導入でも、想像以上に開発体験が良くなる様子が伝わった。
8. 全体を踏まえた感想
今回の「MCP Ops LT大会」では、MCPを軸にしたエージェントやLLM活用の多彩な事例が飛び出し、各社・各人がPoCから本運用へ手応えを得始めている様子が鮮明でした。
エージェントAI開発フレームワーク: LangChainやLangGraphのみならず、クルエAIやDeepFlowなどエージェント特化ライブラリが乱立する様子が紹介され、選択肢の多さと一長一短が注目された。
MCPクライアント視点: Wantedlyやガオ社のように、MCPサーバーだけでなくクライアント側の設計・キャッシュ戦略などを緻密に組む事例も増えてきた。複数サーバーが乱立するなかで「サーバー名+ツール名」で整理する工夫が光る。
日常業務の効率化: サイバーエージェント、ココナラのようにPM・エンジニア間のドキュメント作成やレビュー頻度を“AIが下支え”する事例は、開発現場で即役立つ実装例として好評。
物理空間の制御: 電通大によるエレベーターの自然言語制御は、MCPとハードが紐づく未来を感じさせる大きなインパクトを持っていた。
全体的に、「MCPサーバーを活用する」「そこへのクライアント接続でエージェントを本当に役立つ形にする」アプローチが数多く登場し、単なる技術ショーケースに終わらない“実務での具体的効果”が共有されたのが印象深かったです。特に非エンジニアも含む利用シーンや、ドキュメント生成・業務効率化などの小さな成功事例が、今後さらに広がりを持ちそうです。
MCPによるAIエージェントや連携の取り組みはまだ始まったばかり。 各社・各人のPoCが成熟するにつれ、業務のあらゆる局面が自動化・高速化される日もそう遠くはないのかもしれません。次回のMLOpsコミュニティイベントでも、さらに発展的な“MCP×エージェント”事例が期待されます。
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