🤖
Cursor導入でログラス社の現場はどう変わったか - Forkwell AI Study #1 レポート
2025年5月13日、Forkwellが主催する新シリーズ「AI Study」の第1回として「Cursor導入でログラス社の現場はどう変わったか」が開催されました。実務で生成AIを取り入れる際に直面する課題や、具体的な運用ノウハウがどのように蓄積されるのか――。そんな疑問を、株式会社ログラスのエンジニア陣が自社事例を包み隠さず語ってくれました。
本レポートでは、当日の内容を振り返りながら、CursorというAIコーディングツールを全社導入することで広がる可能性と課題、さらに“AI時代のエンジニアキャリア戦略”についての議論をまとめます。
1. イベント概要
イベント名Cursor導入でログラス社の現場はどう変わったか - Forkwell AI Study #1
開催日2025年5月13日
登壇者
伊藤 博志 氏(株式会社ログラス CTO)ゴールドマン・サックス等を経てスタートアップ数社に在籍。2024年11月よりログラスの執行役員CTOに就任。
加賀谷 諒 氏(株式会社ログラス 新規事業開発部)かつてはヤフーでID連携システムの開発を担当。現在はログラスで新規事業を推進中。
パネルモデレータ
赤川 朗 氏(Forkwell ドメインエキスパート)キャリアアドバイザーとして、特に年収800万〜1500万円クラスの上級エンジニアの転職支援に注力。
「Cursor」などのAIコーディングツールを使いこなすことで、開発速度やエンジニアの働き方はどう変わるのか。また、AIが生成するコードを前提とした評価やキャリアの在り方はどこへ向かうのか――。本イベントは、そうした疑問に対するログラス社のリアルな知見を共有する場として開催されました。
2. 基調講演1:全エンジニアにCursorを配布した背景と展望
講演者
伊藤 博志 氏(ログラス CTO)
内容サマリ
2.1 ログラス社におけるAI導入のきっかけ
ログラスは経営管理SaaS「ログラス」を提供しながら、組織的に“いい景気を作る”ことをミッションとしています。開発・拡張を加速させるため、CTOの伊藤氏は「AIコーディングツールの全社導入」を大きく打ち出しました。 伊藤氏によると、ChatGPTが登場した2022年末時点で「AIが開発を担う時代が来る」と確信していたとのこと。その後、Cursorの実用性が急速に高まり、2025年2月に「全エンジニアへ配布」と踏み切ったそうです。
2.2 現在の活用状況
エンジニアに限らず、PM・デザイナ・ビジネスサイドも多数が使用コード生成だけでなく、ドキュメントのブラッシュアップやエラー解析、ナレッジ共有など、多面的にCursorを活用している。
効果開発速度の向上はもちろん、リードタイム短縮やドキュメント整理など幅広い業務効率化に貢献。
カルチャーとの親和性テックバリューに“アップデートノーマル”を掲げ、変化を恐れずに取り入れる社風が導入を後押し。
2.3 未来への展望と課題
AI導入によりコード量が爆発的に増える一方、「レビュー量が増えて大変」「品質保証の方法が従来と異なる」などの課題が見えつつあるといいます。また、形式手法や関数型DDDのようなアプローチをAIと組み合わせることで、さらに高いレベルの品質・保守性を実現できるのではないかと伊藤氏は期待を寄せています。
3. 基調講演2:AIコーディングエージェントのオンボーディング実践
講演者
加賀谷 諒 氏(ログラス 新規事業開発部)
内容サマリ
3.1 新規プロダクトへのAI開発適用
加賀谷氏は新規プロダクトでCursorやDevinを活用してきた経験を紹介。「コードをAIに書いてもらう」スタイルを積極的に導入した結果、爆速で実装が進む一方で“コードレビューが追いつかない”“大規模リファクタのタイミングを見失う”などの問題に直面したと語りました。
3.2 作業時間を増やすための工夫
隙間時間・移動時間にDevinを操作音声入力や複数セッション立ち上げなど、試行錯誤で「常にAIと並走する」状態を作ろうと奮闘。
オンボーディングフローの工夫AIへの指示(プロンプト)を“誰でも”出せるフローを整えることで、PMやデザイナーが細かな修正を出しやすくした。
3.3 AIによるコード量爆増の副作用
AI生成コードに対するオーナーシップ低下
品質を伴わないコードが拡散しやすい
レビュー・テストなど前後工程がボトルネック化
こうした課題はあるものの、「二度とAIなしの時代には戻れない」と加賀谷氏は述べました。あとは、如何にコードの“オーナーシップ”を保ちつつ、AIと組んでリファクタや検証フローを最適化できるかが今後のカギとしています。
4. パネルトーク「AI時代エンジニアの世代別キャリア戦略」
後半は、Forkwellの赤川氏がモデレーターとなり、エンジニアの“世代”ごとにキャリアがどう変わるかについてディスカッション。
同じLLMを使っても結果が異なる理由加賀谷氏は「最終的な5%を決めるのは、入力コンテキストと評価基準。これらをメタ的に整理できるかが大きい」とコメント。伊藤氏は「マネジメント力も鍵。AIとの会話を引き出すには、まるで部下と接するような忍耐力やファシリテーション力が必要」と述べました。
AIが即コードを返す時代、成果をどう測る?伊藤氏は「生産量ではなく、いかに付加価値を創造できるかが大切になる」と強調。レビュー・設計・要件定義など、ソフトウェアの本質的な複雑性に向き合う部分が評価されるだろうとのこと。
“当たり前が書き換わった”30歳視点/40代エンジニア視点加賀谷氏は「日々進化するAIによってコードの書き方自体が変化し、慣れたプラクティスも問い直されるかもしれない。怖さよりワクワク感が勝る」という考え。一方、伊藤氏は「自分個人としてはフルスタックを目指す夢があり、AIがあれば到達できるかもしれない」と、変化を前向きに捉えていました。
5. 全体を踏まえた感想「AIと人間が共創する未来を楽しむ」
「Cursor導入でログラス社の現場はどう変わったか」は、単なるツール導入事例の枠を超え、AI時代のソフトウェア開発がもたらす根本的な変化を考えさせてくれるイベントでした。 講演・パネルを通じて印象的だったのは、ログラス社のメンバー全員がAI導入を“ワクワクするチャレンジ”と捉え、積極的に試行錯誤し続けている姿勢です。もちろん、品質保証やレビュー工数、セキュリティといったハードルは存在します。しかし、その課題すらも「より良い開発文化を作るための機会」と見ているようでした。
特に「行動を書くこと」自体が爆速になる今、エンジニアに求められるのは「いかに問題の本質と向き合い、AIを導くか」というマネジメント的な視点だという指摘は、とても説得力があります。行動があっという間に生み出されるからこそ、要件や仕様、チームでの合意形成が今まで以上に重要になり、そこにこそエンジニアの価値があるのでしょう。
本イベントは、「AIコーディングツールはもう試行段階を越えて実務で活躍している」という現実を示すと同時に、「エンジニアがどうキャリアを築き、チームとしてどう成長するか」を改めて考えさせてくれる内容でした。これからの時代、AIと人間が共創する開発スタイルはますます進化し、私たちの“当たり前”を塗り替えていくはずです。その変化を恐れるのではなく、楽しみながら取り込む――ログラス社が見せてくれた“前のめりな姿勢”が、多くのエンジニアにとって参考になるのではないでしょうか。
Yardでは、AI・テック領域に特化したスポットコンサル サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポットコンサルをお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。
Read next
Loading recommendations...