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Rust開発の裏側 各社が語る課題と今後の挑戦とは? レポート
はじめに
2025 年 4 月 17 日、「Rust開発の裏側 各社が語る課題と今後の挑戦とは?」というテーマで行われた Findy 主催のオンライン LT イベントが開催されました。TypeScript や Go に並び、エンジニアが「今後習得または強化したい言語」の上位に挙がる Rust。今回は、その Rust を実際に採用している 3 社——Fairy Devices 株式会社、Gen-AX 株式会社、ユニークビジョン株式会社——の技術リーダーの方々が、各現場での導入背景や開発課題、そして今後の展望を語ってくださいました。
本記事では、それぞれの発表内容をまとめ、Rust 活用の最前線をご紹介します。実際の現場でどう Rust が選ばれ、どう使われているのか。そこに至る過程やリアルな課題、そして「なぜ Rust が楽しいのか?」といった興味深い話題も飛び出しました。ぜひ最後までご覧ください。
Fairy Devices 株式会社:C++からの置き換え、そしてラストで広がる開発
発表概要
最初の登壇は、Fairy Devices 株式会社 プロダクト開発部 部長の吉川哲史さん。音声処理やウェアラブルデバイス開発を手がける同社では、入社当初に C++で書かれていたシステムの一部を Rust へ移行し始めた背景が語られました。
事業概要
音声認識 API や音声処理技術を提供する「mimi」
首にかけるウェアラブルデバイス「THINKLET」を活用した遠隔支援サービス「LINKLET」
Rust 採用の経緯
音声ストリーミングの非同期処理を、安全かつ生産性高く実装したかった
C++でよく起こっていたエンバグを防ぎやすい言語として Rust がフィット
実際の活用例
「mimi」の API サーバー、デバイス制御基盤、またリンク周辺のバックエンドに Rust を導入
クラウド API や Web 会議との連携を含め、非同期処理と相性のよい Rust でリアルタイム性と安定性を確保
課題と今後の挑戦
クレートのバージョン管理やビルド時間への対応は、継続的な最適化が必要
さらに AI 関連ツールとの連携や、サーバーサイド以外への Rust 展開を模索中
Gen-AX 株式会社:新設スタートアップで選択した Rust という挑戦
発表概要
続いての登壇は、Gen-AX 株式会社 テックリードの中村秀樹さん。AI ソリューションを BtoB 向けに提供する新会社で、最初から Rust をバックエンド言語に採用した理由を語ってくださいました。
事業概要
ソフトバンクの 100%子会社として設立
生成 AI 技術を活用した SaaS プロダクトと、コンサルティング事業を展開
Rust 採用の方針
BtoB 向けの高信頼性なサービスには、静的型付け言語のなかでもエラー管理が厳密な Rust が好適
関数型的アプローチ(ROP)を取り入れ、エラーハンドリングを明確化
「0 から作るならチャレンジングなほうを選ぼう」というスタートアップらしい判断も後押し
得られたメリット
コンパイルが通ったあとの安心感が非常に高い
分岐が単純化され、ハッピーパスが見やすいコードになった
直面している課題
周辺の情報量やクレートの更新頻度がまだ追いつかない部分がある
ビルド時間や CI の最適化、依存クレートのバージョンアップが大きなテーマ
ユニークビジョン株式会社:SNS キャンペーン運用から見えた Rust 運用ノウハウ
発表概要
最後に登壇されたのは、ユニークビジョン株式会社 取締役 CTO の青柳康平さん。SNS マーケティングを主力とする同社のさまざまなキャンペーンシステムで、いち早く Rust を業務導入した経験をシェアされました。
事業概要
Twitter(X)や LINE など、多様な SNS を活用したキャンペーン運営・分析ツールを提供
「レシート応募」「フォロー&リツイート応募」など大規模かつリアルタイム性の高い処理が求められる
Rust 導入のきっかけ
大量データを扱う CSV 生成で Ruby on Rails が落ちてしまい、試しに Rust を使ったところ高速かつ安定
その後 LINE キャンペーンの負荷要件にも対応すべく、バックエンドを全面的に Rust へ置き換え
活用例
SNS 投稿のクローラー
当選抽選ロジックと在庫管理
当選通知や DM 送信などの非同期処理
抱える課題と解決策
動的カスタマイズを Lua で実装しているが、今後は WebAssembly 活用も検討中
テスト容易化やクレート化などの工夫を継続的に発信しており、社内外で Rust 普及に貢献
最後に:Rust がもたらす価値と、これからの挑戦
今回のイベントを通じ、3 社が置かれた状況やプロダクト特性はさまざまでありながら、Rust の持つ「安全性」「高パフォーマンス」「エラーハンドリングの明確化」という強みが、各社の開発現場でメリットをもたらしていることが改めて浮き彫りになりました。
一方で、バージョンアップの頻度やビルド時間など、実際に運用するなかで直面する課題も共通しています。Rust がエンジニアに「楽しい」と感じさせる大きな要因は、コンパイル時にしっかりコードを“鍛えて”くれるところにあるようです。その分、コンパイル通過までのハードルを超える苦労は避けて通れません。しかし、その「苦労=品質向上に直結するプロセス」をポジティブにとらえられるエンジニアが多いのも Rust ならではといえるでしょう。
今後は、AI との連携や WebAssembly の活用など、新しい領域への踏み出しが各社で始まろうとしています。レガシーシステムから Rust へ移行している事例もあれば、ゼロから Rust で創り上げている事例もあり、それぞれの形で Rust が「次の可能性」を広げているのが印象的でした。
新しい技術は常に課題との戦いでもあります。しかし、そこにこそイノベーションの種が潜んでいるもの。これから Rust でどんなプロダクトが生まれ、どのように課題が解決されていくのか。次回の Rust 関連イベントも、ますます盛り上がりを見せてくれそうです。
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