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MCPでLLMはどう進化する? 〜からあげさんに学ぶ、AI開発の最前線〜 レポート
はじめに
2025年4月25日に開催された「MCPでLLMはどう進化する? 〜からあげさんに学ぶ、AI開発の最前線〜」は、MCP(Multi-Context Protocol)の最新動向や、実際にMCPサーバーを開発した際のリアルな知見を共有するイベントとして、大変な盛り上がりを見せました。登壇者は、株式会社松尾研究所に所属し、AI分野の技術解説や著作活動で精力的に情報を発信されているからあげさんです。
「MCPってそもそも何なの?」「どうやって使うの?」「実際に作るにはどうすれば?」といったトピックを軸に、チャット欄やSNSにも数多くの質問や感想が寄せられました。まだMCPを触ったことのない方にとっては、技術や環境構築のハードルが高く感じられるかもしれません。しかし本イベントでは、からあげさんが実演デモを交えつつ、MCPサーバーを簡単な一歩から体験するためのヒントを具体的に紹介。実際のQ&Aを通じて、セキュリティ上の注意点や、ツール選定のポイントなど、多岐にわたる知見が共有されました。
本レポートでは、からあげさんの講演内容を中心に、当日のディスカッションやQ&Aをまとめます。MCPの可能性を探りたい方や、LLMを活用して新たな価値を創出したい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
MCPとは何か
MCPの背景と位置づけ
からあげさんはまず、「MCPはあくまで“規格(ルール)”であり、それ自体が単体で実態を持つわけではない」と強調しました。LLMの世界では、チャットUIを通じて様々なタスクをこなす段階を経て、コードエディタ上でAIコーディングツールを使うエージェント的な開発が広まりつつあります。そこにさらに汎用的なツール接続のための企画として登場したのがMCPです。
このMCP(Multi-Context Protocol)を使うことで、LLMは複数のサーバー(MCPサーバー)を意図的に組み合わせ、ユーザーの目的に応じたツールを呼び出せるようになります。からあげさんは「ドラえもんと秘密道具」に例えながら、「MCPホスト=ドラえもん」「MCPサーバー=秘密道具」としてイメージすると分かりやすいと説明。のび太(ユーザー)が何かをお願いすると、ドラえもん(LLM)が適宜秘密道具(MCPサーバー)を使って問題を解決してくれる――という発想です。
MCPが注目される理由
自由度の高さ MCPサーバーは自分で作ることもでき、公開されているSDKを用いれば比較的少ないコード量で実装できます。既存の外部サービスやアプリと接続するサーバーが次々に公開され、拡張性の高さが注目されています。
エコシステムの可能性 OpenAIをはじめ大手各社が参入することで、MCPが大きく普及する下地が整いつつあります。からあげさん曰く「優れた仕様が勝つとは限らないが、いち早く“デファクト”になり得る状況になっている」とのこと。
MCPの使い方
基本ステップ
MCPを使って何かを実行する大まかなステップは下記のとおりです。
パソコン環境構築 PythonやJavaScript、Dockerなどの仮想環境を整え、MCPサーバーの動作環境を用意。
MCPホストの設定 VS CodeエディタやAIコーディングツール(クライン、カーソルなど)を使う場合、それぞれの設定ファイルでMCPサーバーへの接続情報を追記。
外部サービスやアプリとの連携設定 GoogleやMicrosoft系の認証、あるいは自前のAPIキーなどが必要になるケースが多い。慣れるまではここが一番面倒だが、AIコーディングツールに頼りながら設定を進めるのがおすすめ。
マークダウン変換MCPサーバーの例
最初の一歩として、公式が公開しているマークダウン変換用「マークイットダウン(markItDown)MCPサーバー」を導入する方法が紹介されました。Pythonのパッケージ管理UVでインストールし、VS Codeなどでサーバー起動情報を設定すれば、パワポ資料やPDFをマークダウンに変換するタスクをLLMが自動的に実行可能となります。
「一度MCPサーバーを動かしてみると、LLMが“これやるならあのサーバーを使おう”と判断してくれる楽しさが体感できるはず」とからあげさんはコメント。慣れれば「こんなMCPサーバーがあったらいいのに」という発想が自然と湧いてくるとのことです。
MCPサーバーを開発する
簡単なハローワールド
MCPサーバーを自作するメリットとしては、「自社サービスとの連携」「機能や性能を極限まで特化させられる」「MCPやLLMの学習目的」などが挙げられました。具体的な実装例として、Python用のSDKで書かれた数行のコードを示しながら、足し算をするだけのシンプルなMCPサーバーを起動。そのサーバーをLLMに利用させるデモが紹介されました。
ここで起きた興味深い事例は「あえて計算結果を1だけ減らすように実装すると、LLMはまったく疑わずに間違った数字を採用してしまう」というもの。からあげさんは「もし悪意あるコードが忍ばせてあったら、LLMはそのまま実行してしまうかもしれない」とセキュリティリスクにも言及しました。
自作によるカスタマイズ例
からあげさんは、個人的に利用しているノートサービス「ノ」に向けた高速同期用MCPサーバー「ノライト」を自作し、数倍も高速化した事例を紹介。既存の公式MCPサーバーに満足できない場合、自分の用途に合わせて特化させるとかなりの効率化が望めるとのことです。また、AIコーディングツールとの相性もよく、「プロンプトで仕様を伝えれば30分程度でとりあえず動くものができた」という話も会場を沸かせました。
Q&Aまとめ
本編終了後には、参加者からの多岐にわたる質問が寄せられ、からあげさんとのやり取りが大きな盛り上がりを見せました。いくつか抜粋して紹介します。
Q: MCPサーバーを組み合わせるとランニングコストが高くなりませんか? A: MCPサーバー自体を立てるコストは低いが、LLMのAPI利用料金がかさむ点は無視できない。ディープリサーチなどで大量トークンを消費すると月数万円規模になることもある。ローカルLLMの精度向上に期待する声も。
Q: 開発以外の社員が使うにはツールのハードルが高そうです。VS Codeやクライン以外でWebベースのMCPホストはありませんか? A: 現時点ではあまり聞かないが、今後GUIを備えたホストが登場する可能性はあるかもしれない。今は開発者向け色が強い。
Q: どのMCPサーバーを使うかLLMがうまく選択してくれず困ることがあります。改善策は? A: 自作サーバーであれば「こんな機能を提供している」と詳細に書き込むとよい。既存MCPサーバーの場合、AIコーディングツールのルール設定で「ここでこれを使え」とプロンプトを補強するしかない面はある。
Q: MCPが何か怪しい動作をしていないか確実にチェックできますか? A: VS Codeやクラインの場合、MCPサーバーの実行前に必ずユーザーに確認を求める仕組みがデフォルト。ログを追えば実際に使われたコマンドも分かる。初めて導入するサーバーはデフォルトのままオフにし、許可制にしておくのが安全策。
Q: 3DCGのブレンダーで作ったMCPサーバーは実用性がありますか? A: まだ実験的で、まっとうにCG制作をするには難しそう。ただし、今後モデルやツールが進化すれば、より高度な3Dモデリングやアニメーションが可能になるポテンシャルは感じる。
全体を踏まえた感想 —— 進化の最前線で得る“次の可能性”
今回のイベントを通じて、MCPサーバーの登場と普及がもたらす未来像を、からあげさんの実体験からリアルに感じられたのではないでしょうか。「すでに数多くのMCPサーバーが公開されている」「自分でつくっても意外と難しくない」「LLMと組み合わせることで、あらゆるサービスやデバイスが“AI化”の恩恵を受けられる」といった好機が見えつつも、セキュリティやランニングコスト、そしてまだまだ未熟な部分への向き合い方が今後のテーマとなりそうです。
とりわけ印象的だったのは「まずは小さなMCPサーバーを動かす・作ってみる」という姿勢です。LLMのコストやセットアップの面倒はあるものの、小さな一歩から“MCPの楽しさ”を感じとれるはずだと、からあげさんは熱く語っていました。使うだけではなく、目的に合わせて拡張・開発していく流れこそが、MCPエコシステムをさらに盛り上げる鍵になるに違いありません。
今後もMCPサーバーのラインナップは増え、ホスト側のGUI化やセキュリティ強化が進むことで、エンジニア以外の人々にも使いやすい環境が整っていくでしょう。あるいは競合規格とのせめぎ合いによって洗練が進み、より高度なAIエージェントが当たり前に活躍する未来がすぐそこに来ているのかもしれません。まさに「自分たちで未来を作り出す」感覚が味わえるのが、いまのMCPを取り巻く面白さと言えそうです。
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