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「Cursor AgentによるパーソナルAIアシスタント育成入門―業務のプロンプト化・MCPの活用」レポート
はじめに
2025年4月17日に開催された「Cursor AgentによるパーソナルAIアシスタント育成入門―業務のプロンプト化・MCPの活用」は、AIエージェントを“コーディング支援ツール”としてだけでなく、個人が日々こなしている多彩な業務へ拡張し、いかに「自分専用のAIアシスタント」として育てるかをテーマにした勉強会でした。
登壇者は、AIエージェント技術の研究や開発を手がける大島氏。Cursorをベースとしたエディタ環境で、コード生成のみならず、ドキュメントの管理やマニュアル的なタスクまで幅広くAIに肩代わりさせるアイデアを具体例やデモを通じて共有してくれました。
このレポートでは、イベント内で語られた内容を振り返りつつ、議論の要点やQ&Aでの盛り上がりをまとめます。
Cursor Agentの基本と「パーソナルAIアシスタント」への展望
コード支援ツールから一歩先へ
まず大島氏が強調していたのは、Cursorを「VS CodeにAIを統合したエディタ」としてとらえるだけでなく、日常的な業務も代行できる潜在力を持つ、という視点です。Cursor Agentのエージェントモードに切り替えると、AIが必要に応じてファイルを生成・編集してくれるため、単なるコード生成に留まらないユニークな活用が見えてきます。
会議記録やメールから情報を抽出
イベント中のデモでは、YouTube勉強会の字幕ファイルからQ&Aパートだけを自動抽出し、まとめレポートを作成する例が紹介されました。要点となるポイントを「プロンプト」の形でAIに伝え、結果が思った通りにならなければさらにプロンプトを修正――こうした試行錯誤が、開発以外の業務でも手間を大幅に減らしてくれるそうです。
業務プロンプト化のカギ
大島氏いわく、「パーソナルAIアシスタント」を育てるコツは、まず業務を“プロンプト”として定義し直すところにあります。実際、手続き的なマニュアルをAIが読み込めば、文字起こしやPDF変換、日々の繰り返しタスクなどをエージェントに任せやすくなるとのことです。 一方で、組織での共有を考えると、AIで使うプロンプトや手順の“暗黙知”をどう洗い出すかが課題とも語られていました。
MCP(Model Context Protocol)の活用
MCPとは何か
今回の勉強会では、MCPという新しい仕組みが一つの注目点でした。MCPはアンソロピックが提唱するプロトコルで、大島氏は「AIアプリ用の標準接続ポートのようなもの」と表現。これによって、カーソルエージェントが必要に応じて外部ツールを呼び出すといった高度な連携が容易になるといいます。
既存MCPサーバー vs. 自作MCPサーバー
勉強会では2パターンの事例が紹介されました。1つ目は、Playwrightなどが用意している既存のMCPサーバーを利用する方法。2つ目は、自分でPython製のMCPサーバーを用意し、PDF変換などの機能を追加する方法です。 特に自作のMCPサーバーは、社内の独自ワークフローをAIに組み込むうえで有用とのことでした。ただし、セキュリティ対策やエラー制御など注意すべき点が多いのも事実です。
開発業務以外の可能性
Playwright連携の例では、ウェブブラウザ内ボタンをAIにクリックさせるデモが行われたものの、実際にはカーソル側の理解とブラウザ側の要素が合わず、思うように動かなかった場面もありました。とはいえ、これはモデルの精度やページ構造次第で成功するケースも多く、すでに生成・テストの自動化に活用している事例もあるそうです。
Q&Aセクションのハイライト
イベント終盤のQ&Aコーナーでは、以下のような質問が飛び交い、活発な議論が展開されました。
「プロンプトを組織で共有する方法は?」 大島氏は「個人レベルならGitにプロンプトを管理して試行錯誤しているが、組織全体に展開するにはプロンプト自体をドキュメント化し、どの手順をAIに任せるかを洗い出す必要がある」と回答。加えて、最初から完璧を目指すのではなく、小さく実験しながら徐々に業務範囲を広げていくのが実践的と語りました。
「MCPで外部サービスと連携する際のセキュリティは?」 MCPサーバーに各種認証情報を置く必要があるため、取り扱いには注意が必要。モデルが暴走して勝手に危険な操作をしないよう、承認プロセスやGitによる差分管理も重要だという意見が述べられました。
「カーソルのオートランや承認プロセスをどう設定する?」 これもセキュリティに関連する疑問として多くの質問があったところ。オートラン機能をオンにすればスムーズにAIがコマンドを実行できる反面、意図しない操作を許してしまうリスクがあるので、組織ポリシーやプロジェクトの性質に合わせた設定が不可欠だそうです。
「学習データの容量が大きい場合、プロンプトの長さや実行時間はどうなるのか?」 大島氏は「試すモデルやMCPサーバー次第。長大なテキストでも一部を要約・分割しながら処理する手順を、プロンプトで設計することが多い」と語りました。手動レビューによるやり直しを繰り返す点を念頭に、実践的な運用が望まれるとのことです。
イベントを振り返って
今回の勉強会では、「Cursor AgentをパーソナルAIアシスタントとして育てる」という新鮮な視点が強く印象に残りました。コード生成エディタとしてのカーソルはよく知られていますが、そこに独自のプロンプトやMCP連携を加えることで、議事録の整理やタスク管理といった“地味に時間がかかる業務”も自動化の道が開ける可能性が示されたのは、とても意欲的なアプローチに思えます。
一方で、複数のモードがあるエージェントを動かす際には、人間がどのように指示するかで結果が大きく変わることも事実です。プロンプトを育成し、メモリとしてのファイルを整備し、MCPを駆使する――こうしたパーソナルAIアシスタントの運用は、まだまだ試行錯誤が必要でしょう。しかし、大島氏が紹介したとおり、部分的な成功体験を積み重ねることで確実にプロンプト資産が蓄積し、成果が出やすくなるはずです。
企業やチームで導入するにはセキュリティ管理やコスト面での検討も欠かせませんが、「エンジニアの作業をエディタ上で自動化する」のを越えて、幅広い業務領域をカバーできるAIアシスタントは今後ますます注目されることが予想されます。特に、MCPが普及しさまざまな外部サービスとの連携が容易になれば、エンジニアのみならず多くの職種が“自分専用のAI秘書”を手に入れる時代も遠くはないのかもしれません。
大島氏自身も「不完全でもAIに任せる」「プロンプトが資産化する」といったキーワードを重ねて強調していました。スムーズに動く場面もあれば、ブラウザのクリック実演が難航する場面もありましたが、そうした試行錯誤こそがまさに“育成”過程の証といえるでしょう。次のステップとして、もっと複雑なワークフローや大規模コラボレーションにAIエージェントを活かす取り組みがどのように進んでいくのか、これからが楽しみです。
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