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「Developers Night Cafe 第4回 GitHub Copilot以外のPrompt」 レポート
はじめに
2025年4月17日に開催された「Developers Night Cafe 第4回 GitHub Copilot以外のPrompt」は、エンジニアの皆さんが日々向き合っている“プロンプト”というテーマに焦点を当てたオンラインイベントです。一般的にはGitHub Copilotやコード生成のシーンが注目されがちなプロンプトですが、開発にはミーティングやメール対応など、コード以外に時間を割く場面も少なくありません。今回のイベントでは、MicrosoftのHatakeyama氏(Principal Technical Architect)とIshida氏(Global Black Belt)によるディスカッションを通じ、「お仕事に直結するプロンプト活用の原則」と「エージェントの価値」について、具体例や実体験を交えながら解説されました。
以下では、イベントで語られた内容をいくつかの観点に分けて振り返りつつ、Q&Aで交わされた印象的なやり取りもまとめています。
プロンプトはなぜ重要なのか
コード以外の場面でこそ生きるプロンプト
まずお二人が強調していたのは、プロンプトの有用性が「コーディング支援」だけにとどまらないという点です。GitHub Copilotなど、コード生成に最適化されたツールばかりが話題になる反面、実際の開発現場では仕様調整やドキュメント作成、ミーティングでの情報整理など、“コード以外”に費やす時間が膨大に存在します。そこで、プロンプトを駆使してメールを要約したり、会議の記録から必要事項を抽出したりする仕組みが組み上がれば、大幅に業務効率を向上できるわけです。
プロンプトの構造が決め手になる
さらに、複数の大規模言語モデル(LLM)や機能がリリースされる昨今においても、“プロンプトさえしっかり書ければ、ツールが変わっても対応しやすい”というのが、イベントを通じた大きなメッセージでした。たとえばHTTPやHTMLが時代を経ても基盤であるように、“LLMを動かす指示”としてのプロンプトは、モデルが多少変化しても不変の鍵となる可能性が高いからです。
プロンプトを書く際の大原則
1. 必要最小限の情報を明確にする
プロンプトを何行も連ねると、書いているうちに自分でもゴールを見失う場合があります。そこで、お二人は「一発で完璧を狙わず、まずは最低限のゴールと必要情報だけ提示し、状況に応じて少しずつ要件を足す」スタイルを推奨していました。逆に言えば、最初から過剰にステップバイステップを命じすぎると、最新のモデルでは逆効果になるケースがあるそうです。
2. 役割設定(Persona)の明示
シフトスケジュールの最適化をさせたいなら「数理最適化や統計学に強い先生」を、コード監査を任せるなら「セキュリティレビューの専門家」を、といった役割をはっきり指示するだけで回答の質が大きく変わると強調されました。役割はシステムプロンプト(あるいは最初に与えるコンテキスト)に明示的に書くことで、モデルが一貫した視点を保ちやすくなるのです。
3. 情報不足時の“問い返し”を促す
やりたいことは曖昧なのに、ユーザーが「とにかく実行してくれ」と要求すると、モデルが誤ったまま作業を続行してしまうリスクがあります。そこで、「情報が足りなければ聞き返してほしい」とプロンプトに書いておくことが有効だということです。会話形式のモデルにとっては本来得意とするアクションであり、“曖昧さをチェックする”手順を指示するだけで、結果の正確性が飛躍的に向上します。
イベントでのQ&Aとディスカッション
Q: プロンプト力はどうやって磨けばいいのか
多くの参加者が気になるのは「プロンプト力をどう身につけるか」という点でした。お二人は、公式ドキュメントやチュートリアルにあるベストプラクティスがモデルごとに用意されているので、まずはそこを素直に試すことを推奨。加えて、完成したら「このプロンプトを一発で書くならどう書くべきか?」をモデル自身に訊いてフィードバックをもらう、という方法も有効とのことです。毎回同じ書式を手動で打つのが面倒な場合は、自分用のスニペットやテキストをGitHubなどで管理しておくのも手だと語られました。
Q: 最新モデルで長文プロンプトは不要になる?
かつて、モデルを誤魔化さないように「考え方をステップバイステップで書け」「例を詳細に書け」といった手法が、プロンプトの“お作法”として頻繁に言及されていました。ところが、リーズモデル(LLMの新世代)では逆に「不要な指示を増やさず、目的とデータだけを簡潔に書くほうがうまくいく」ケースが増えつつあります。とはいえ、まだ一発で最良の答えが出るとは限らないため、モデルの変更点を意識しながら都度試行錯誤する必要があると説明されました。
Q: 普段の会話やメールから情報を抽出してデータ化したい
Hatakeyama氏自身の体験として、メールやミーティング記録から案件に必要な項目だけ抽出して管理するフローをすでに実践しているそうです。メール本文を丸ごと貼り付け、「必要な項目を列挙し、不足があれば教えてほしい」と促すだけで、プロンプトが仕様書レベルの情報をまとめてくれる例が紹介されました。特に「不明な部分は不明と書いておけ」と明示すると、正確性の検証がしやすく、やり取りの抜け漏れを防ぐ効果が高いとのことです。
エージェント化する意義と可能性
なぜエージェントが必要になるのか
プロンプトの巧拙を高めれば、多くの場合は単発のやり取りで十分に成果を得られます。しかし、「繰り返し同じプロンプトを打つのが手間」「会話の途中で別のデータベース参照が必要」「複数の役割を同時に走らせたい」などの要望が増えると、エージェントの価値が見えてきます。単なるAPI呼び出しではなく、「役割を与えられたモデルが継続的に動き、必要に応じて追加の問答を行う」ことで、よりシームレスな業務自動化が実現しやすくなるのです。
今後への期待
Microsoftをはじめ各社から、AIエージェントに関連するプラットフォームやSDKの発表が続々と予告されています。お二人も「今は手動でプロンプトを使い回している段階だが、やがてチャット画面や組織のデジタルフローにエージェントが常駐し、ボタン一つで必要情報を抽出・記入してくれる未来が近い」と展望を語っていました。プロンプトの基本さえ押さえておけば、そうした新技術の波にも乗りやすいと強調されていたのが印象的です。
全体を通して感じたこと
プロンプトが切り拓く“コード以外”の生産性向上
今回の「Developers Night Cafe 第4回 GitHub Copilot以外のPrompt」は、従来コーディング支援のイメージが強かったプロンプトが、実はメール整理やミーティング記録の要約、意思決定のための項目抽出といった幅広いシーンで威力を発揮することを改めて示してくれました。エンジニアが抱える雑多な作業をプロンプトやLLMに肩代わりさせることで、本来の開発業務に集中できる可能性が広がります。
一方で、「ただ適当に長い文章を打ち込めばうまくいく」という時代でもなく、モデルごとの特徴を踏まえたアプローチが必要だとわかりました。最新のリーズモデルでは、過剰なステップ指定や細かすぎる説明がかえって混乱を招く場合もあるため、いかに目的と必要情報をコンパクトに書くかが試される時代にシフトしつつあります。
参加者からの質問に対しても、Hatakeyama氏とIshida氏は「プロンプトで正確に意図を伝え、不足があればモデルに問合せを促し、最終的にはフィードバック機構を導入する」ことを提案していました。これらの方針はコード生成だけでなく、日々のドキュメント整備や問い合わせ対応にも応用できるため、多くのエンジニアが“プロンプトの汎用力”を再認識したのではないでしょうか。
GitHub Copilotの枠を超え、より多面的な開発支援ツールとしてAIを活用したい方々にとって、今回のイベントは具体的なヒントや着想を得る場となったと思います。近い将来、エージェント技術と組み合わさって、プロンプトが“会話するだけで仕事が完結する”世界を切り拓いてくれる日は、思っているより早くやってくるのかもしれません。
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