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【イベントレポート】LT大会#10「LLMの活用・機械学習・データ分析関係のいろいろな話題にふれよう」
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約4912字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
目次
1. ハッカソンでDifyを使おう!〜3位を取った生成AIアプリの作り方〜(久古幸汰)
発表概要
Q&Aピックアップ
2. テクスチャ画像付きのメッシュモデルを3次元点群へ変換する (板倉健太)
発表概要
Q&Aピックアップ
3. Functional APIから再考するLangGraphを使う理由(大嶋勇樹)
発表概要
Q&Aピックアップ
4. 私なりのデータ分析・活用の解釈_インスピレーションを得た書籍を交えて (くどう)
発表概要
5. Computer Useを使ってみた感想と課題(上野彰大)
発表概要
Q&Aピックアップ
6. Graph RAGとAstra DBを用いたハルシネーションの改善策(東山竜也)
発表概要
質疑応答
全体を踏まえた感想
2025年3月13日、オンライン(Zoomウェビナー)にて「LT大会#10 LLMの活用・機械学習・データ分析関係のいろいろな話題にふれよう」が開催されました。
本イベントは、生成系AI(LLM)や機械学習、データ分析などにまつわる複数のテーマを短い時間で発表するライトニングトーク形式で進行され、さまざまな視点から最新技術の可能性や事例が紹介されました。以下では発表内容を中心に、当日のQ&Aもあわせて全体の盛り上がりをレポートします。
1. ハッカソンでDifyを使おう!〜3位を取った生成AIアプリの作り方〜(久古幸汰)
発表概要
KDDIアジャイル開発センター株式会社の久古(ひさこ)さんからは、AIアプリ開発プラットフォーム「Dify(ディファイ)」を使ったハッカソンでの活用事例が紹介されました。特に、短時間でモックアップやプロトタイプを作る際にDifyが大いに役立った体験談が中心でした。
発表では、以下のポイントが強調されていました。
Difyの基本:ノーコード/ローコードで生成AIアプリを作成しやすいプラットフォーム。ワークフロー作成からAPI化まで簡単に行える
ハッカソンでの事例:英語学習と最新技術キャッチアップを同時に行うアプリをDifyで構築し、短時間で完成度の高い成果物を発表。最終的に3位入賞
メリット・デメリット
小規模開発における爆速プロトタイプに適している
一方、バージョン管理が難しい、アップデート時の不具合が発生しやすいなど運用面の懸念
Q&Aピックアップ
「Difyで作ったアプリのUI部分をどうするか?」という質問が挙がり、久古さんは「ハッカソンなど検証中心ならStreamlitやフラッターなど、目的に応じて柔軟に選択する。最近はバブルなどのノーコードツール、あるいはChatGPTなどにコードを書かせてReactを使うなど、手段はいろいろあり迷いどころ」と言及していました。
Dify自身が“バックエンド寄り”の機能を強化していることもあり、フロント側の実装は参加者間でも多数の意見が見られたのが印象的です。
2. テクスチャ画像付きのメッシュモデルを3次元点群へ変換する (板倉健太)
発表概要
ImVisionLabs株式会社の板倉さんからは、3Dスキャンやレーザースキャナー等で得られる3次元データの活用事例が共有されました。特に、「メッシュモデルを点群へ変換する」過程での手法や考え方が中心です。
ポイントとしては以下が挙げられます。
3Dメッシュモデル:三角形(または四角形)の面を大量につなぎ合わせた構造
点群(Point Cloud):3D空間上にある座標の集合。さまざまな解析アルゴリズムが存在
変換の必要性:点群解析に特化した手法を使うには、メッシュモデルをいったんサンプリングして点群化したほうが良い場合が多い
課題:メッシュ形状やテクスチャ情報が複雑だと、点群変換の際のサンプリング戦略をどうするかが鍵になる
Q&Aピックアップ
時間の都合もあり大きな質疑はなかったものの、「点群から再度メッシュへ戻すことはできるか?」という意見がチャットで挙がり、板倉さんは「可能だが精度や手法は多種多様。利用目的に合わせて元データを適宜選択したほうが良い」と補足されていました。
3. Functional APIから再考するLangGraphを使う理由(大嶋勇樹)
発表概要
ジェネラティブエージェンツの大嶋さんは、LLM導入のワークフロー設計フレームワーク「LangGraph」に注目し、特に最近登場した「Functional API」方式がもたらすメリットや使う理由を解説しました。
トピックの要点は以下のとおりです。
LangGraphとは:LLMを含む複雑なワークフローをグラフ構造で管理できるフレームワーク
Functional API:デコレーター(
@task
や@entrypoint
など)を用い、より自然なPythonコードに近い形でワークフローを定義できるなぜフレームワークが必要?
ワークフローの途中でユーザーの介入を待つ「ヒューマン・イン・ザ・ループ」やエラー発生時の再開をするためのチェックポイント機能が整備されている
単なるコード分割だけでなく、実行結果を保存して再開できる点が大きい
Q&Aピックアップ
こちらもQ&Aで注目が集まり、オープンAIのAgent SDKとの比較について言及がありました。大嶋さんは「OpenAIの純正SDKは高機能になっていく可能性はあるが、LangGraphはヒューマンインザループやマルチモード(複数モデル対応)など柔軟さで利点がある」と述べました。加えて参加者からは「モデルに任せる形でどこまで行けるかは今後の進化次第」という声も出ており、幅広く議論が盛り上がっていました。
4. 私なりのデータ分析・活用の解釈_インスピレーションを得た書籍を交えて (くどう)
発表概要
くどうさんからは、データ分析をどう活用していくか、その大枠を捉えるためにおすすめの書籍を織り交ぜながら解説されました。プレゼンは次のポイントに絞られていました。
データは「迷ったら細かくモーラ的に」取得しておく
一度取り逃すと後から補完できないケースが多い
可視化・ダッシュボードは「少ない情報量」にまとめ、問いを立てることが重要
グルーピングして改めて傾向を見いだす
ダッシュボードの設計は「何を解決したいか」の問いを必ず入れる
おすすめ書籍
『武器としてのデータ活用術』
『ダッシュボード作りの教科書』
『実践的データ基盤への処方箋』など
カフェ経営の例で、来店時間やメニュー別販売数といったデータをどう使うかが具体的に示され、「得られたインサイトから何をアクションにつなげるか」が大切だと強調されました。
5. Computer Useを使ってみた感想と課題(上野彰大)
発表概要
PharmaX株式会社の上野さんからは、LLMがコンピュータ画面上の操作を“代理実行”するOSSツール「Computer Use」を試してみた体験談と課題点が共有されました。
Computer Useの概要
LLMが画面のスクリーンショットを取り、ボタン座標などを推定しながら実際にクリック・入力を行う
API連携のない環境下でも、エージェントが「人間がGUIを操作する」のと同様の手順を再現できる
デモで試したこと
スラックチャンネルを開いてメッセージ送信するなど、“人間がPCを使うフロー”をエージェントで自動化
可能性と課題
可能性:API非対応でも動作し得るので、医療システム等さまざまな既存環境で応用できる
課題:処理速度が遅い、画面認識の不安定さや誤操作が多い、1台のPCを長時間占有する恐れがあるため実用面で難しさも大きい
Q&Aピックアップ
上野さんのセッションでは「そもそもGUIが人間に見やすい形で作り込まれる意味は、エージェントが台頭してきたときには薄れるのでは?」という鋭い質問が出ました。上野さんは、
モデルが十分にGUI認識を高精度化するには、ある程度画面設計が整っているほど誤操作が減る
今後API化できないレガシーシステムを“合意に”自動操作する場面は増えうるが、人間を上回るスピードやミスの少なさを実現するにはさらに時間が必要 などと回答。将来的にUIそのものが不要になるシナリオも議論はあるが、少なくとも1〜2年スパンでは「どこまで代替できるか微妙」という認識を示していました。
6. Graph RAGとAstra DBを用いたハルシネーションの改善策(東山竜也)
発表概要
最後に、ピープルソフトウェア株式会社の東山さんは、いわゆるRAG(Retrieval Augmented Generation)の手法にナレッジグラフを組み合わせる「Graph RAG」を活用しつつ、Astra DBを使ってハルシネーションを軽減する取り組みを紹介しました。
主な内容は下記の通りです。
Graph RAGの基本フロー
文章をチャンク分割し、ベクターストアへ格納
質問文をもとに類似度計算して該当チャンクを取り出す
ナレッジグラフの関係性などを参照しながら最終回答を生成
ハルシネーションの原因例
そもそものテキストデータが偏っている
チャンクごとの関連性が薄い
モデル自体の精度など
デモ
アニメ「呪術廻戦」を題材にPDFから抜き出した2万文字を格納し、一部登場人物の関係性に着目した質問を行う
Graph RAGを導入することで多少改善は見られたが、内容が複雑になるほどハルシネーションは依然発生
東山さんは「元データに偏りがあると、より強固なナレッジグラフを構築しても答えが十分に正確にならないケースが多い。データの質をどう補正していくかが次の課題」と結ばれました。
質疑応答
最後のセクションではZoomのQ&Aに寄せられた質問に発表者同士や参加者も交えて回答が行われました。全体として、以下の話題が特に盛り上がりました。
UIツール選定:Difyなどでノーコード開発する際のフロント実装手段は多岐にわたり、状況次第でReactやFlutter、Bubbleなどさまざま
GUIの存在意義:エージェントがすべての操作を代行する未来が来るのか、あるいは画面設計の工夫が変わらず重要なのか
OpenAIのAgent SDK vs LangGraph:いずれも注目度が高いが、マルチモデル対応や人間介入の再開制御といった細かい機能をどう評価するかで使い分けが変わりそう
いずれのテーマも「まだまだ技術が過渡期で、1〜2年先には大きく変わる可能性がある」という声が共通し、今後も継続的に追いかけたいトピックとなりました。
全体を踏まえた感想
今回のLT大会では、LLMや機械学習を主軸にしながらも、ハッカソン事例や3Dデータ、データ分析設計、そしてGUI全般に関わる話題まで幅広い視点が見られました。共通するキーワードは「実用化へ向けた最適化と課題解決」ではないでしょうか。
特に印象的だったのは、
AIツールによる迅速な開発(Dify、LangGraphなど)
GUIを自動操作するエージェントへの期待と現実
大量データを扱うための分析手法と正確な回答を導くための工夫
実際の業務やサービスへ展開するには、安定性やコスト、運用フローの再構築といった乗り越えるべきハードルがまだ残っています。しかし、それぞれの発表者が示した取り組みや改善策、具体的な成功・失敗経験は、今後の道を切り拓くヒントをたくさん与えてくれました。
今後も、LLMをはじめとしたAIの技術トレンドは目まぐるしく進化し続けると考えられます。今回のように、新しい取り組みや課題を率直に共有し合う場は、技術コミュニティ全体の底上げに欠かせないでしょう。参加者・登壇者それぞれが持ち帰った学びが、次のサービスや研究開発につながることを期待しています。
以上、LT大会#10「LLMの活用・機械学習・データ分析関係のいろいろな話題にふれよう」のイベントレポートでした。次回以降の勉強会やハッカソンも、引き続き注目していきたいと思います。ご参加・ご発表いただいた皆様、そして運営の皆様、素晴らしい時間をありがとうございました。
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