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Qiita Night「企業における生成AI活用」レポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約3423字
2025年3月26日、日本最大級のエンジニアコミュニティ「Qiita」を運営するQiita株式会社によるオンラインLTイベント「Qiita Night~企業における生成AI活用~」が開催されました。 本イベントでは、生成AIのビジネス活用に最前線で取り組む各社のエンジニアやプロジェクトリーダーが登壇。自社内における生成AIの活用事例から、チーム内・社内浸透をどう進めているのか、組織や業務の壁をどう乗り越えてきたのかなど、多種多様な視点で語られました。 実際に成果を出しているチームならではの具体的Tipsが惜しみなく共有され、参加者からの質問や意見も大いに盛り上がった様子を、本レポートで振り返ります。
イベント概要と狙い
Qiita Nightは、Qiita株式会社が開催するエンジニア向けオンラインLTイベントです。毎回異なるテーマを掲げ、エンジニアリングやテクノロジーに関する知見を共有。エンジニア同士の情報交換や学びの促進を目的としています。
今回のテーマは「企業における生成AI活用」。近年、“生成AI”というキーワードはあらゆる業界で注目を集めています。 とはいえ、
「社内での導入が進まない」
「そもそも何から始めていいか分からない」
「導入してみたはいいが効果が出せない」 こうした悩みを抱えるケースも多く、「どう活用すればビジネスの成果につながるのか」が明確になりきらない現状があります。
そこで本イベントでは、各社が持つユニークなユースケース・課題の克服ノウハウをLT形式で公開。さらに、パネルディスカッションを通して組織目線での推進ポイントや守るべきガバナンスを掘り下げました。
LT1: αU placeの接客サービスでの生成AI活用事例
登壇者:KDDI株式会社 / 河路 慶一 氏
KDDIが取り組む“αU place”というバーチャルショッピングサービス。その接客システムに生成AIを導入している事例が紹介されました。店舗をデジタルツイン化し、ユーザーがオンラインで接客を受けられる仕組みを構築。 ポイント
まずは社員向けに安全な生成AI利用環境を整備し、リテラシーを高めた
全社的にプロンプトのテンプレート共有や教育制度を整え、ボトムアップで浸透
そこから生まれた技術・知見を、対外向けサービス(バーチャル接客)に応用
実際の利用データを見ると、業務効率だけでなく「新しい接客体験創出」につながる可能性を感じる取り組みとして注目されました。
LT2: LIFULLの内製生成AI基盤と普及戦略
登壇者:株式会社LIFULL / 二宮 健 氏
不動産情報サイト「LIFULL HOME'S」などを運営するLIFULLでは、車内に“keelai”という内製生成AI基盤を導入し、複数の部署が柔軟に利用できる状況を作り上げています。 ポイント
エンジニア中心に「軽量化プロジェクト」を立ち上げ、生成AIによる業務効率化を推進
スラック連携や翻訳、自動ドキュメント要約など、日常業務を支援する機能が続々
活用を拡大するために「活用推進リーダー」を各部署に配置し、細やかにサポート
結果、約1年で社内全体の利用率が大幅に向上し、数万時間規模の業務時間削減に成功。組織全体へ短期間で広げるうえでのステップや、利用者同士をつなぐコミュニティづくりが印象的でした。
LT3: みずほFGの生成AI活用を加速させる内製開発ラボ
登壇者:株式会社みずほフィナンシャルグループ / 齋藤 悠士 氏
金融業界では規制やセキュリティ要件が厳しい反面、業務効率化や顧客体験の向上に向けた期待が大きい。みずほFGでは、内製アジャイル開発ラボを立ち上げ、生成AI関連のアプリを次々と実装。 事例
面談記録自動化:営業担当が商談後に記録作成しなくても、音声録音→AI要約→所定フォーマット作成まで自動
生成AIを活用したドキュメント検索:「ここに書いてある項目がどこに紐づくのか」を瞬時に整理し、ヒューマンエラーを大幅削減
想定Q&A生成:提案資料をAIに読み込ませ、顧客から質問されそうな内容や指摘ポイントを自動生成
金融業の常識を変える取り組みを内製で推進し、「業務の全工程を改革したい」という勢いが感じられました。
パネルディスカッション:組織導入を成功させる秘訣
後半は、KDDI株式会社 河路 慶一 氏、株式会社LIFULL 廣瀬 智英 氏、株式会社みずほフィナンシャルグループ 齋藤 悠士 氏の3名が登壇し、Qiita株式会社の清野 隼史 氏がモデレーターを務める形でパネルディスカッションが行われました。
特に印象的だったポイントをまとめると、以下のようになります。
1. トップダウン×ボトムアップの両輪
「トップが明確なメッセージを出すことで、安心して挑戦できる土壌ができる」(KDDI)
「一方で現場が動かないと結局利用が進まない。両方そろって初めて社内浸透が加速」(みずほ)
2. 社員の“心理的安全”を保証する仕組み
「外部の生成AIをそのまま使うとセキュリティ上の懸念が大きい。まずは社内向け環境を整備し、安全に使える状態を作った」(KDDI, LIFULL)
「ヘルプデスクやFAQを生成AIで一括して参照できる仕組みなど、導入初期は“とにかく使わせてみる”が重要」(LIFULL)
3. 効果測定と次のアクション
「利用率やアンケートで定量的・定性的に把握し、成功事例を可視化して社内で称賛する」(LIFULL)
「今は業務効率化が中心だが、将来的にはアプリやサービスの“フロント”でもAIが活躍するはず。リスク管理とチャンス創出を同時に進めたい」(みずほ)
4. 若手からベテランまで、どう育成する?
「今後、生成AIは“当たり前のスキル”になっていく。若手は使いこなしやすい反面、業務知識を学ぶ前にAI頼みになるリスクも」(KDDI)
「逆にベテラン層は抵抗感が強い場合も。研修や実体験で“こんなにも役立つのか”を理解してもらうしかない」(LIFULL)
「業務やサービスをどう作り直すか」「組織が持つデータをどこまでAIに渡すか」など、新しい課題が数多く浮かび上がる一方で、「迷う時間があったら試す。試しながらアップデートしていく」という姿勢が全社的に根付き始めていると感じられるセッションでした。
全体を踏まえた感想
「生成AI」はもう“特別な技術”ではない
今回のQiita Nightを通して感じたのは、「生成AI」という言葉がもはや“特別扱い”されるフェーズを超えつつある、ということです。 もちろんガバナンスや守るべきルールは存在し、セキュリティ面の懸念やプロンプトエンジニアリングの難しさはまだまだ議論が必要でしょう。しかし、登壇者の皆さんは口を揃えて「もう使い始めない理由がない」「むしろ放置していたら大きな機会損失になる」と語ります。
特に印象深かったのは、「生成AI導入で終わりではなく、“どう活用して成果を出すか”が問われている」というフレーズです。どの企業も導入初期の“使ってみよう”から、“どうやって組織全体の生産性やサービス価値に結びつけるか”というステージに移りつつあることを実感しました。
コミュニティが示す、これからの可能性
Qiita Nightだからこそ、エンジニア目線での深い知見が多数共有されたのも見逃せません。技術的なトラブルシュートからガバナンス調整のノウハウまで、多様な観点が交わるこの場でこそ、「会社を横断した広がり」が生まれるきっかけになるはずです。
生成AIを取り巻く技術や環境は日々更新され、まだまだ試行錯誤の連続。そんな中、今回の登壇者たちのように“自社でやってみた”実例を共有し合うことが、エンジニア業界全体の活性化や新たなビジネスチャンスにつながっていくのではないでしょうか。
企業が生成AIをどう使うのか、どんな価値を生み出せるのか。 その答えはまだ完成形ではありませんが、一歩を踏み出した企業たちが着実に成果を上げている様子が見えた本イベント。まさに「これからが本番」。 次回のQiita Nightでも、さらに進化した“生成AI活用”の知見がアップデートされていくことでしょう。自社における新たな可能性を探りたい方は、ぜひ今後のQiitaイベントや各社の発信を要チェックです。
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