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生成AIで拓くシステム開発の新潮流 〜未来を創るソフトウェア・エンジニアリングを徹底解説〜 レポート
公開
2025-03-13
文章量
約3428字
2024年12月19日、TECH PLAY主催で開催された「生成AIで拓くシステム開発の新潮流 〜未来を創るソフトウェア・エンジニアリングを徹底解説〜」。本イベントでは、株式会社日本総合研究所 先端技術ラボのリサーチャーによる講演を中心に、急速に注目を集める生成AIとシステム開発の結びつきが多角的に語られました。
講演タイトルが示す通り、今回のテーマは「いかに生成AIがシステム開発の常識を塗り替え、未来のソフトウェア・エンジニアリングを変革し得るか」。エンジニア支援型のAIツールや研究動向、実際の企業事例、さらに数年先を見据えた未来予測まで、幅広い視点で“いま知っておくべき最先端”が一気に紹介された濃密なセッションとなりました。
以下では、各パートの内容やQ&Aでの興味深い論点をまとめ、最後に本イベント全体を踏まえた筆者の所感を記します。生成AIとソフトウェア開発の新しい地平にご関心をお持ちの方はぜひご覧ください。
1. システム開発における生成AIの現状と主要ツール
幅広い工程での活用可能性
冒頭のセッションでは、まずシステム開発の各工程—企画・要件定義から設計・実装、テスト、運用保守まで—をざっくりと整理したうえで、生成AIが多方面で利用されうる点が強調されました。いわゆるChatGPTのような汎用的対話型AIだけでなく、エンジニア支援に特化した生成AIや、デザイン作成に特化したサービスも次々に登場し、まさに“システム開発のあらゆるフェーズ”をカバーし始めているとのことです。
エンジニア支援ツールの充実
特に登壇者が注目していたのは「GitHub Copilot」や「Cursor」のような、コード作成を補助する生成AIです。IDEやテキストエディタと統合し、プログラマが自然言語で要望を伝えると、自動的にコードを提案してくれるため、コーディングのスピードアップが期待できます。さらに、SQL文やテストシナリオの自動生成、脆弱性診断など、今まで個別ツールでこなしていた作業を“生成AIベース”でまとめて支援してくれる流れも大きな潮流と紹介されました。
ノーコード/ローコード化の波
一部では「v0」や「LlamaCoder」のように、プロンプトを投げるだけで簡単なWebアプリケーションを生成できるツールが注目を浴びているそうです。デザイン段階で作成したUIを、ほぼ自動でフロントエンドのコードに変換するサービスや、マルチエージェントを使ってインフラ設定・CI/CD構築まで自動化を目指す動きも。「プログラミングができなくても、ある程度のアプリが作れてしまう時代」が既に見え始めています。
2. 企業での具体的な導入事例と研究動向
ITベンダ・金融業界で進む先行事例
次に紹介されたのが、具体的な企業動向です。IT大手やSI企業が先陣を切る形で、生成AIの実装を進めており、社内の開発部門で“コード生成の効果検証”や“レガシーシステムのモダナイゼーション支援”などの成果がいくつも報告されているとのこと。金融業界でも、みずほ銀行やシティグループなどが大手ベンダと連携し、コードレビューや障害対応、さらには要件定義フェーズへの適用を模索しているそうです。
また、事業会社が内製化を加速するうえで、生成AIを利用するケースも増えてきており、エンジニア数を大幅に増やすことなく、素早くプロダクトを立ち上げてスケールさせる事例が出ているとのお話がありました。
研究例から見る「未来のソフトウェア開発」
コード生成・テスト自動化に関する研究は既に豊富で、例えばAlphaCodeやGPTダロイといった事例が紹介されました。要件定義や保守運用の分野でもAIエージェントに期待が寄せられ、オープンソースの世界では“自律的にコードを修正し続ける”ツールの実験結果も出始めているそうです。
さらに、マルチエージェント同士が連携して、要件定義から実装・テストまで一気通貫で行う研究も活発化。AIが複数の役割を並行して担当することで、人間がほぼレビューに専念するだけで済む“半自動開発”像が、実験段階とはいえ現実味を帯びつつあるといいます。
3. 今後の展望と課題
短期〜中長期で見える変化
登壇者は、生成AIがシステム開発にもたらす影響を短期・中期・長期の3ステージに分けて示していました。短期的には、ペアプログラミングやコードレビュー補助などを通じて、開発スピードと品質の向上が期待されます。中期的には、生成AIが当たり前のように使われる前提で「アーキテクチャ設計やプロジェクト管理の手法」がガラリと変わるかもしれません。マイクロサービス化がさらに加速し、人間が担う範囲が“要件定義や企画部分”に集中する可能性があります。
そして長期的には、事業会社が容易に内製化を進められるようになり、SI企業やソフトウェア産業の構造そのものが変容するかもしれないといいます。現在ですら、大手SIerが「AIプラットフォーム」を提供する動きや、コンサルティングビジネスへのシフトを始めていることは、業界全体の大きな転換期を感じさせるところです。
リスクと注意点
もちろん「生成AIだから万能」というわけではありません。誤情報(ハルシネーション)の出力や、機密情報が外部に流出する可能性、著作権・ライセンスの問題などのリスクが指摘されています。特に大規模システムでの適用時は、アーキテクチャ全体に影響を及ぼす変更をAIに任せきりにするわけにはいかず、最後は人間が要所をレビューし、品質を確保する仕組みが欠かせないと強調されました。
4. Q&Aで浮かび上がったエンジニア像
イベント後半のQ&Aでは、多数の質問が投げかけられました。特に印象的だったのは「エンジニアの仕事は本当に失われるのか?」「今後のエンジニアに求められるスキルとは?」という問いです。登壇者の見解は一貫して「優秀なエンジニアの本質的な価値は変わらない」というものでした。
- “生成AIの提案をただ受け入れる”のではなく、最終的な品質を見極める能力が欠かせない
- 要件定義や運用フローなどは、企業固有の事情を踏まえる必要があり、AIだけでは判断が難しい面が多い。
- デバッグやコードのレビューでも“正解のない問題”を整理し、最適解に導く
- 機能要件や品質要件、セキュリティなど、様々な視点を加味して落とし所を探る工程は、人間ならではの強み。
「仕事の仕方や作業の中身は変わるが、エンジニアが淘汰されるわけではない」という総括は、多くの参加者にとって安心感と新たな挑戦意欲を同時に与えたように思えました。
【まとめの感想】– 未来を創るのはAIと“本質”を知るエンジニア
今回のイベントを通じて改めて印象的だったのは、生成AIがシステム開発にもたらすインパクトの大きさと“進化の速さ”です。数カ月前には想像もつかなかったレベルのツールやフレームワークが、すでに世界中で生まれ続けています。それは開発効率化の可能性を大いに広げる一方、使いこなすためにはリテラシーやリスク管理、そして“何を目指すのか”というビジネス視点が今まで以上に重要になるのだと感じました。
一方で、講演の終盤でも繰り返し示されたように、システムの要件定義やアーキテクチャ、保守運用まで含めた“長く使えるシステム”をどう設計するかという根幹は、やはり人間の知恵と責任に支えられています。変化のスピードが速いからこそ、優秀なエンジニアが培ってきた本質的な能力—問題定義力、設計力、リスク判断力—は今後ますます光を放つのではないでしょうか。
「どう作るか」より「何を作るか」「なぜ作るか」。生成AIが加速する時代ほど、ビジネスやユーザーニーズの本質を見極め、システム全体を見渡す力が問われます。だからこそ、機械に任せるべき部分は任せ、エンジニアはよりクリエイティブな領域や問題解決に集中できる未来が来るのかもしれません。
本イベントは「変化を恐れるのではなく、変化を味方につけて未来を切り拓く」というメッセージに溢れていました。システム開発の現場で日々頑張っているエンジニアの皆さんにとっても、大いに刺激とヒントを得られる時間だったように思います。新しいツールや研究動向を取り入れつつ、これからも“AIと人間の最強タッグ”を目指していきましょう。
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