👩💼
【イベントレポート】マネジメントは嫌いですけど - Forkwell Library #78
公開
2025-02-20
文章量
約2682字
イベント概要
- イベント名マネジメントは嫌いですけど - Forkwell Library #78
- 開催日時2025年1月10日(木)19:30〜21:00(オンライン)
- 主催 / 運営Forkwell
- テーマ・背景チームパフォーマンスや予算確保、人事評価・教育など、多様な問題を求められるマネジメント。本書では「解決策が見出せない課題」は後回しにする前に「そもそも解決策は自分で作れるのでは?」という視点を提示。著者が経験した「本来やりたくなかったマネジメントを通じ、チームや組織の課題と向き合い続けた実録エッセイ」であり、“人を動かす”では手の届かない新しい答えの探し方が詰まった一冊となっている。今回は、その著者である Guutara 氏(グータラさん)にご登壇いただき、本書の核心や執筆の裏側を語っていただいた。
登壇者紹介
講演者: Guutara 氏(本名: 関谷 正弘 氏)
- 1960年代前半生まれ。若手時代からエンジニアとして技術力を高めつつ、さまざまな組織で“いやいやながら”マネージャーを担当。
- SES的な携帯やユーザー企業など複数の現場で、「マネジメントは嫌いだけれど、誰かがやらなければいけないからやってきた」実体験を元に執筆。
- 初めての書籍『マネジメントは嫌いですけど』では、技術者としての視点で“新しいマネジメントを作る実験”をどのように積み上げてきたか、その苦楽と学びをまとめている。
基調講演:Guutara 氏が語る「マネジメントは嫌いですけど」
1. タイトルに込めた想い
- 「マネジメントは嫌いですけど」という斬新なタイトルは、著者自身の心の叫び から来たもの。
- 若手時代、よく見かけたマネージャーは「技術に明るくない」「失敗を認めず謝らない」など、エンジニア視点から見ると辛さを感じる存在が多かった。
- その結果、当初は「自分は絶対マネージャーになりたくない!」と思っていたが、いつしか組織の都合でマネジメントを任され、そこから“実験的に”マネジメントに取り組むこととなった。
2. 書籍の構成と狙い
- ノウハウ本や組織論の教科書ではない。
- むしろ「こうすれば完璧にできる!」というマニュアルではなく、著者が試行錯誤の実験をどう重ね、課題にどう対処してきたか がエッセイ風に記されている。
- 「マネジメントのやり方は固定ではない。新しいやり方を作っていけば、解決できる課題はもっと増える」という問題解決マインドを強調。
- 特にテック企業ではなく、ユーザー企業やSES的環境でも発生しがちな「エンジニアの扱い方」や「技術者組織の育成」を題材にしており、再現性よりも“こんな生々しい事例があるんだ”というヒント が満載。
3. マネージャー嫌いのはずが、なぜマネジメントを?
- 著者いわく「見渡す限り、嫌なマネジメントをする人が多かったため、自分がやるしかない と思った」。
- 実際、マネジメントへの苦手意識は拭えなかったが、「技術を大切にする」スタイルを捨てずにマネージャーを継続。
- 実験を繰り返し、うまくいったものは続け、失敗すれば「こういうやり方も駄目なんだな」と修正する。そこに「正解がある」感触は一切なかったが、やり方を自分で創ること自体がマネジメントの醍醐味にも感じた。
4. 実践的トピック(本の目次例)
- マネジメントとは何かをゼロから再構築
- 自分と役割を切り離す/失敗したら本人も辛いが、やらせた人にも責任がある/新しい問題は新しいマネジメントで解決できる。
- 部下を持つということ
- 「人を思い通りに動かせるわけがない」の前提で、本能的にテストされる立場になるが、それを「仕方ない」と受け止める工夫。
- エンジニアの育成と予算確保
- 一流エンジニアを“教師”として迎え、チームに大きなインパクトを与える。
- 経理・財務など「他部署の専門性」を活用する姿勢がポイント。
- キャリアや評価の難しさ
- 直接利益を生む部署ではないエンジニアの昇給やロール設定をどうするか。
- 結果、自分で新しい指標や仕組みを作らざるを得なかった実例など。
5. Q&Aセッションのハイライト
- 「マネージャーになって無力感が辛い。向いてない?」
- Guutara 氏:「マネージャーと自分を切り離して考えよう。EM(エンジニアリングマネージャー)はあくまで役割。失敗しても個人の人間性全てを否定されるわけではない。」
- 「技術力が衰えるのが不安。両立できるのか?」
- 「手を動かす仕事を全く捨てる必要はないが、時間は限られている。リソースをどう切り詰めるか、あるいは“自分がやりたいことは貫くが、周りにも任せる”など、リスクを取る覚悟も伴う。」
- 「教師になれるエンジニアが少ない場合?」
- 「外部委託(契約)の活用などで一流人材を部分的にでも迎え入れると効果が大きい。再現性が低いように見えても、契約形態を工夫するなどして“短時間でも濃い教育”をしてもらう道もある。」
- 「なぜ著者はマネージャーに任命されたのか?」
- 「失敗しても平気なメンタルを持ち、周りに対して“新しい施策や実験”を打ちやすかったからでは。周りの成果を自分の成果とみなす発想で臨んだ。」
6. 「最も難しく、かつ自然に行われているマネジメント」とは
- Guutara 氏いわく「母親が毎日、子どもを育てる行為こそ命に関わるほど厳しく、時間的制限も著しく、そして誰にも代替されない究極のマネジメント」。
- 組織マネジメントは比べれば“まだ簡単かもしれない”と締めくくり、「自分でも新しいやり方を作れば解決できる」 というメッセージで講演を終えた。
まとめ
「マネジメントを嫌い」と言いながらも、実際に数十年にわたり技術者組織の運営を行ってきたGuutara氏。その試行錯誤の過程は、よくある教科書的マネジメント論とはまったく異なる“体当たりのエッセイ”として本にまとめられている。
本イベントでは、「なぜ嫌いだったのか」「どうやって新しいマネジメントを作ってきたか」など、生々しいエピソードを余すことなく紹介。
参加者は「マネージャーと自分を切り離す発想が初めて」「一流エンジニアを“教師”にする話は衝撃的」など、多くの気づきを得たようだ。
結論として、マネジメントに正解はない。
しかし、「エンジニアであること」を捨てずに実験的に取り組めば、「こういうやり方もアリなのか」という新たな地平が見える。
本書はそんな“誰も見たことのないマネジメント”を作る勇気を与える一冊として、多くのエンジニアにとって良い指針や考え方の刺激となった。
Yardでは、テック領域に特化したスポット相談サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポット相談をお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。