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ETL/データ転送ツールの最新動向 2025年版
公開
2025-01-06
更新
2025-01-06
文章量
約3777字
はじめに
2025年、データ基盤の構築は社内データの一元管理にとどまらず、AIやAIエージェントの能力を引き上げるための重要なコンポーネントとして再び注目を集めています。
特に、ETL(Extract, Transform, Load)およびデータ転送ツールは、データ基盤を構築する上で欠かせない技術であり、データ品質を担保する基礎ともなる存在です。
本記事では、技術進化が著しい代表的なETLおよびデータ転送ツールである以下の4つをご紹介します。(なお、Snowpipe、Dataflow、Datastreamなど特定のDWHに特化したデータロードのツールについて今回は取り扱いません)
Embulk
Trocco
Fivetran
AirByte
AWS Glue
主な評価観点は、以下の6
つとします。
処理速度
データを効率的に処理する能力がどの程度優れているか
拡張性
データ量や業務の増加に対応できる柔軟性があるか
メンテナンス性
運用中の管理や保守がどれだけ簡単か
料金
コストパフォーマンスやライセンス料金が適切か
将来性
長期的に利用価値が維持される見込みや、技術トレンドへの適応力があるか
リアルタイム性
データソースの更新があった際に、データ転送先にリアルタイムで反映できるか
① Embulk セルフホスト
概要
Embulkは、OSSのETLツールで、大量のデータ転送処理を効率的に行うことができます。
シンプルな設定と高い柔軟性が特徴で、YAML形式で記述した設定ファイルを使用してデータの抽出、変換、ロードを簡単に構築可能です。
OSSのinput / outputプラグインを組み合わせることに、さまざまなデータソースや出力先に対応できカスタマイズ性に優れています。
コアやプラグインは、Javaで書かれており自分でカスタマイズすることも可能です。
メリット
設定が容易: YAML形式で設定を簡潔に記述できる
低コスト: 料金が安価で、コストパフォーマンスが高い
導入事例多数: さまざまな企業での導入実績が豊富
デメリット
将来性の不安: OSSとしてのEmbulkの将来性にやや不安がある
リソース管理の必要性: 自前でマシンリソース(EC2, EKS, Cloud Run jobなど)を管理する必要がある
導入企業
② Trocco
概要
Troccoは、クラウド環境に特化した日本発のETLツールで、データ統合・管理を効率的に行える点で注目されています。
コード不要のGUIベースで操作可能なため、非エンジニアでも簡単に扱えます。
主要なDWH(BigQuery / Snowflake / Amazon Redshiftなど)やデータソースのコネクタが充実しており、データの抽出、変換、転送を柔軟に実現します。
また、データパイプラインの設定や運用がシンプルで、エラー通知やスケジュール機能も充実しており、メンテナンス性が高いのも特徴です。
日本企業であるため、日本語のサポート・ユーザーコミュニティが充実しています。
内部では、Embulkが採用されている。
メリット
簡単な操作性: GUI形式で設定できるため、導入や運用が非常に簡単
変更履歴の管理: 設定変更の履歴が追えるため、管理が容易
無料プランあり: 無料ではじめられるため、試用しやすい
デメリット
データ量に応じて料金が増加: データ量が増えるとコストが高くなる可能性がある [参考]
IaCの制約: 昨年公開されたTerraform Providerがあるものの、Infrastructure as Code(IaC)に関してはやや弱い(今後の改善に期待)
内部技術の依存: ①のEmbulkが内部で使われているため、OSSの将来性にやや不安がある
導入企業
③ Fivetran
概要
Fivetranは、クラウドベースのETLツールとして、データ統合を自動化するプラットフォームです。
こちらも多様なクラウドベース(SalesforceやGoogle Analytics、Snowflake、BigQueryなど)のシステムのコネクタが用意されています。
Fivetranの最大の特徴は「完全マネージド型」である点です。スキーマの変化や新しいデータソースの追加にも自動対応し、運用負荷を大幅に軽減します。また、リアルタイムに近い頻度でデータを転送できるため、タイムリーな分析が可能です。
従量課金制です。
メリット
グローバルな支持: modern data stackとして世界中で高く評価されている
運用コスト低め: Terraformを用いたInfrastructure as Code(IaC)に対応しており、運用コストが抑えられる
リアルタイム性: データソースからの変更をリアルタイム / 準リアルタイムで同期可能
デメリット
料金が高め: 料金設定がやや不透明で、具体的な料金を把握しづらい(pricing estimatorを使っても、概算のみ可能)
導入企業
④ Airbyte
概要
Airbyteは、OSSのETLツールで、データ統合プロセスを効率化するための柔軟で拡張性の高いプラットフォームです。
ユーザーコミュニティによる貢献を基盤とした設計で、数百種類のコネクタを提供しており、SaaS、データベース、クラウドストレージなど、幅広いデータソースやターゲットに対応します。
特に、独自のコネクタをPythonやJavaで簡単に作成できる点が大きな特徴です。データの抽出、変換、ロードの各プロセスをGUIで設定可能で、コード不要の操作とカスタマイズ性を両立しています。
また、スケーラブルなアーキテクチャにより、大量データの処理にも適しています。
エンタープライズ向け機能も充実しており、有料プランではマネージドサービスやサポートも利用可能です。低コストで柔軟性の高いデータ統合を求める企業に最適なツールです。
メリット
デメリット
国内採用事例の少なさ: 日本国内での導入企業が少ない
採用企業
⑤ AWS Glue
概要
AWS Glueは、AWS が提供するフルマネージドのETLサービスです。データの準備、カタログ化、統合、および分析用にクリーンデータセットを構築するための包括的なツールを提供します。
AWS Glueは、Apache Sparkを基盤としており、分散処理に強く、大量データの効率的な処理が可能です。データカタログ機能を使ってデータセットのメタデータを管理し、Glue Crawlerを使用して自動的にデータを検出・カタログ化します。
さらに昨年から、AWS Glue Studioでノーコードでデータの準備が可能となった。
メリット
フルマネージド: インフラストラクチャの管理が不要で、迅速に始められる。
スケーラブル: AWSの他のサービスと連携しやすく、オンデマンドでスケール可能。
広範な統合: Amazon S3、Redshift、RDS、各種オンプレミスデータストア、AWS以外のクラウドサービスと簡単に統合可能。
開発者フレンドリー: AWS Glue Studioを使用したビジュアルインターフェース、Jupyter Notebookの統合など開発者向け機能が充実。
デメリット
コスト: 他のサービスと比較して高めの料金設定で、使用量に応じて変動。
AWS依存: AWS環境に依存するため、他のクラウドサービスとの連携には制限がある(とはいえ、マルチクラウドでの事例も多数あり)
導入企業
さいごに
以上、5つのETLおよびデータ転送ツールについてご紹介しました。各ツールにはそれぞれ独自の特徴とメリットがあり、導入企業のニーズや用途に応じた選択が重要です。
データの効率的な処理や管理、メンテナンス性、将来性など、さまざまな評価観点から自社に最適なツールを見極めることで、データ基盤の構築と運用が一層円滑になります。
本記事が、あなたのデータ基盤構築の一助となれば幸いです。より良いデータ活用のために、最適なツールを選び、データドリブンなビジネスの発展に貢献しましょう。