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内製か、外注か?—トレンドを読み解き、自社に最適な選択を
はじめに:内製か、外注か——議論は繰り返す
ビジネスにおいて、「ITエンジニアリングを内製すべきか、外注すべきか」という議論は、時代を問わず繰り返されてきました。 一時期は「内製こそが正義」とされ、外注には批判的な見方が強まった時代もありました。しかし、景気やテクノロジーの進化、社会情勢によって状況は絶えず変化しています。 この記事では、2025年現在の視点から、内製と外注の現実、選択時の注意点について解説していきます。
内製 vs 外注の背景
2015年から2022年にかけて、日本では**「エンジニアバブル」**が続きました。 ITエンジニアの転職市場は非常に活発で、企業はこぞってエンジニア採用に投資。優秀な人材を確保するために、リモートワーク制度や高待遇を打ち出す企業も増加しました。
この時期、
「社内にノウハウを蓄積するためにも内製化すべき」
「外注に頼るのは短期的な視点、将来的に不利」 といった内製推進論が強く主張されるようになります。
一方で、「外注はノウハウがたまらない」「コントロールが難しい」という認識が広まり、外注を選ぶ企業に対して批判的な見方も根付いていきました。
景気の陰りと、内製化への疑問
しかし2025年現在、状況は大きく変わりました。
スタートアップは資金調達に苦戦
外資系IT企業はレイオフを継続
事業会社もエンジニア採用に慎重姿勢
一方で、コンサル、SES、派遣業界といった「人月ビジネス」を行う企業は、比較的元気に採用活動を続けています。
事業会社やSIer、SESにヒアリングをすると、現在は新規事業案件が大幅に減少していることがわかります。需要があるのは、手堅い保守・運用案件です。
また、日本では社員を解雇するハードルが高いため、安易な人員増加はリスクを伴います。
エンジニアバブル時代に上昇した給与水準
人件費という固定費負担
これらが経営に重くのしかかるようになり、内製化を選んだ企業が逆に苦しむケースも増えてきました。
さらに、バブル期には「エンジニアを採用=成長投資」という認識があり、フルリモート制度などが加速しましたが、現在では逆にリモート制度を縮小し、自主退職を促す動き(サイレントリストラ)も見られるようになっています。
「外注」と一括りにするのは危険
「外注」という言葉だけでは、実態を捉えきれません。 実際には様々な形態が存在し、それぞれコストやリスクが異なります。
外注の種類 | 特徴 |
---|---|
SIer | システム開発の委託。請負型・業務委託型いずれもある。大規模案件向きだがコスト高。 |
SES | 業務委託型。人材を柔軟に補充できるが、スキル差あり。 |
フリーランス | 専門スキルに特化。即戦力だが、契約リスク管理が必要。 |
オフショア | 海外拠点を活用しコスト削減。ただしコミュニケーションに壁。 |
副業人材 | 低コストで高スキルを得られる場合もあるが、稼働時間に限界あり。 |
自社の目的(スピード重視か、コスト重視か、品質重視か)に合わせて、最適な外注方法を選択することが重要です。
外注リスク:知らぬ間に公安案件に?
外注を選ぶ際には、セキュリティリスクにも注意が必要です。 近年、問題になっているのが北朝鮮IT労働者による受託案件です。
フリーランスやSESの再委託先に北朝鮮籍のエンジニアが紛れ込むケース
依頼した企業側も知らずに関与してしまい、公安調査対象になるケース
こうしたリスクは、公共・金融案件では特に重大視されており、フリーランスや多重商流SESを排除する動きが強まっています。
外注先を選ぶ際には、
エージェント・SESの信頼性
再委託の有無
契約時の本人確認 を厳しくチェックすることが求められます。
生成AIの台頭と、エンジニアの新しい役割
さらに、2025年現在では生成AIが急速に進化。 新規開発案件では、生成AIを活用できるエンジニアが重宝される傾向にあります。
つまり、今後は単に「エンジニアを増やす」ではなく、
生成AIを適切にハンドリングできるスキル
AIと共創できるプロジェクトマネジメント能力 が求められます。
これができる人材を採用できれば、本当の意味での「内製化」に近づくでしょう。
久松が見ている、今後のシナリオ
現在、発注側企業の資金余力は思った以上に乏しいと感じています。 特に、ITエンジニアという高コスト職種に対して、十分な投資ができる企業は一握りです。
ある人材紹介会社と話した際にも、エンジニア採用をエンジニアバブル期と同じテンションで採用コストをかけている新興自社サービスは、たった一桁社しかありませんでした。
この現実を踏まえると、今後は
手堅い保守・運用案件にエンジニアを固定化
地方拠点を活用し、人件費を抑えた内製化
開発領域は厳選し、メンバー層は外注で補完 といった、堅実な運営スタイルが主流になっていくと考えています。
特に、生成AIの台頭により、スキルアップ速度が問われる時代においては、 中堅・メンバー層をむやみに抱えるリスクも再認識されるでしょう。
まとめ:内製か外注か、ではなく「自社に最適か」
結論として、「内製が良い」「外注が悪い」といった単純な二項対立では語れません。 大切なのは、自社の現在地、事業フェーズ、資金力、リスク許容度を正しく認識したうえで選択することです。
そして、もし迷ったときには、Yardのような専門家マッチングプラットフォームを活用し、
自社の課題整理
最適な体制づくりのアドバイス をスペシャリストから得るのも、有効な手段です。
2025年の今、改めて「内製か、外注か」という問いを、冷静に、そして現実的に考え直してみませんか?
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