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Gemini CLI実験レポート ─基礎理解から活用の可能性について イベントレポート
AIコーディングエージェントの戦国時代に、Googleが放った新たなる一手、「Gemini CLI」。ターミナルという、開発者にとって最も身近な仕事場に直接統合されるこのツールは、先行するClaude Codeとどう異なり、私たちの開発スタイルにどのような変革をもたらすのでしょうか。
2025年7月25日、その答えを探るべく、リリース直後からGemini CLIの可能性を深く探求してきた2名のパイオニアが集結し、オンライン勉強会が開催されました。
イベント前のアンケートでは、参加者の半数以上が「まだ触ったことがない、あるいはこれから」と回答。まさにコミュニティの誰もが固唾を飲んで見守る中、語られたのは、その基礎的な使い方から、ライバルとの決定的な違い、そして未来の可能性に至るまで、極めて実践的な「実験レポート」でした。
『公開初日に個人環境で試した Gemini CLI 体験記など』
豊田 陽介氏
最初のセッションは、リリースされたその日に個人環境でGemini CLIを使い倒したという豊田氏による、ライブ感あふれる体験記から始まりました。彼がまず強調したのは、Gemini CLIが持つ 「圧倒的な導入の手軽さ」 でした。
「個人向けのGoogleアカウントと無料枠を使えば、すぐにでも試せる。これは、先行するツールが有料プランやAPIキーを必要としたことと比べ、非常に大きなアドバンテージです」 —— 豊田 陽介氏
彼のライブデモは、Gemini CLIが単なる対話ツールではなく、ローカル環境と深く結びついたワークフロー自動化ツールであることを鮮やかに示しました。
シームレスなシェル連携: AIとの対話モードから
!(エクスクラメーションマーク)ひとつでシェルモードに移行し、lsやcatといった使い慣れたコマンドを実行。再びEscapeキーを押せば、すぐさまAIとの対話に戻れます。ローカルツールのオーケストレーション: 彼のブログ記事をWebから読み込み(
webfetch)、その内容を要約させ、ローカルにフォルダを作成(mkdir)。そして、その内容をローカルのpandocコマンドを呼び出してHTMLに変換させる。この一連の流れを、全て自然言語の指示だけで完遂させました。
さらに、Gemini CLIがネイティブでは対応していない動画ファイルの内容を把握させるために、CLIツールffmpegと組み合わせる実験も紹介。動画から10秒ごとに画像を切り出させ、その静止画をGemini CLIに解釈させることで、間接的に動画の内容を理解させるというハックです。
豊田氏の発表は、Gemini CLIの真価が、ターミナルという開発者の「母艦」に常駐し、既存のCLIツール群をインテリジェントな「糊」として繋ぎ合わせる能力にあることを示しました。
『Gemini CLIの"強み"を知る! Gemini CLIとClaude Codeを比較してみた』
KDDIアジャイル開発センター株式会社 / 久古 幸汰氏
豊田氏が示した「使い方」の先に、久古氏は「では、その本質的な強みは何か?」という、より戦略的な問いを投げかけました。彼は、最大のライバルであるClaude Codeとの直接比較を通じて、Gemini CLIのユニークな個性を浮き彫りにします。
「AIエージェントの比較は、モデルの性能、内部プロンプト、メモリ、参照ファイル、そしてユーザーの指示と、変数が多すぎて非常に難しい。それを前提としつつも、明確な強みが3つ見えてきました」 —— 久古 幸汰氏
強み①:Web検索能力
「LLaMA 3とRAGについて、参考文献付きで説明して」という同じ指示に対し、両者の違いは明白でした。Claude Codeも的確な回答を生成するものの、Gemini CLIは、Google検索という世界最強のエンジンを背景に、より網羅的で、出典が明確な14もの参考文献を提示。調査や学習といったタスクにおける、圧倒的な情報収集能力を見せつけました。
強み②:マルチモーダル解釈の思想
イベントページのスクリーンショットからHTMLを生成させる実験では、さらに興味深い思想の違いが現れました。
Claude Code: 画像に写っている要素を、ピクセルレベルで忠実に再現しようとする。
Gemini CLI: 画像の**「意図」を解釈**し、よりプロダクションに近い、意味的な構造で再構築する。例えば、元の画像にあった広告部分は、``というコメント付きの
div要素として生成されました。
「手書きのスケッチを忠実に再現されても困りますよね。Gemini CLIは、単なる再現ではなく、リリースを前提とした『解釈』をしてくれる。これは大きな強みです」
この思想の違いは、Gemini CLIが単なる模倣者ではなく、開発者の意図を汲み取るパートナーとしてのポテンシャルを秘めていることを示唆しています。
強み③:導入のハードル
そして、豊田氏も指摘した**「無料から始められる」**という点。これは、個人の学習用途はもちろん、チームや組織にAI駆動開発の文化を広めていく上で、計り知れないほどの推進力となります。
久古氏の分析は、Gemini CLIがコーディング能力の絶対値で勝負するのではなく、Googleの強みである「検索」と、実用性を重視した「解釈」、そして「オープン性」 という独自の土俵で戦おうとしていることを明らかにしました。
検索の巨人、ターミナルに降り立つ
今回のイベントは、Gemini CLIという新たなツールの単なる機能紹介に留まりませんでした。それは、AIエージェントが持つべき「知性」のあり方について、Googleが示した一つの哲学を読み解くような、知的な時間でした。
Q&Aセッションでは、「gemini.md(メモリファイル)には何を書くべきか?」という質問に対し、久古氏が「プロジェクトの全体像、フォルダ構成、そして守ってほしい規約など、言語化されていないチームの常識を書き込むべき」と答えたのが印象的でした。
私たちはAIに、単にコードを書かせるのではありません。私たちのチームの文化や思想を教え込み、対話を通じて、共に成長していくパートナーとして迎え入れるのです。
Claude Codeが、圧倒的な言語能力でコードを紡ぎ出す「饒舌な実装者」だとすれば、Gemini CLIは、世界中の知識にアクセスし、私たちの意図を深く解釈しようと努める 「賢明なリサーチャー兼設計者」 と言えるのかもしれません。
ターミナルという古くからの仕事場に降り立った、検索の巨人。彼がこれから私たちの開発スタイルをどう変えていくのか。その進化から、ますます目が離せません。
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