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Devin Meetup Japan #1 イベントレポート
2025年3月26日、日本の開発シーンに、新たな時代の幕開けを告げる火蓋が切られました。「Devin Meetup Japan #1」。それは、世界初の自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」を迎え入れた日本の開拓者たちが、その「着任初日」のリアルな記録を持ち寄った、歴史的な一夜でした。
Devinは魔法の杖か、それとも手に負えない新人か。期待と不安が入り混じる中、登壇者たちが語ったのは、AIという新たな「チームメイト」との、試行錯誤に満ちた人間らしい物語でした。
本レポートでは、この日繰り広げられた数々のセッションの中から、特にDevinとの未来の関係性を描き出した4つの発表を厳選。彼らの言葉から、私たちがこれから歩むであろう「AIとの協働」のリアルな姿を紐解きます。
『Devin徹底解説 AIチームメイト=Devinで変わる開発プロセス』
kagayaさん
イベントの冒頭、kagaya氏がまず提示したのは、Devinを理解するための「取扱説明書」でした。Devinとは何者で、私たちは彼(彼女?)をどう扱うべきなのか。その核心は「AIチームメイト」という言葉に集約されています。
「Devinは、ジュニアエンジニアのように扱うのが基本です。具体的で、スコープが明確なタスクを渡し、シニアエンジニアがレビューする。この関係性が重要になります」 —— kagayaさん
Devinを動かす心臓部となるのが、 「ナレッジ」 と 「プレイブック」 です。
ナレッジ: 「プルリクエストが作られたら、変更点を要約して」といったように、特定のトリガーで発動する長期的な記憶。チームのルールや暗黙知を教え込むことで、Devinを組織の一員として「教育」できます。
プレイブック: タスク実行時に再利用できるプロンプトのテンプレート。再現性の高い作業を任せる際の強力な武器となります。
kagaya氏の解説は、Devinが決して魔法の箱ではなく、明確なインターフェースと特性を持つ、論理的なシステムであることを示しました。この「ジュニアエンジニア」というメタファーは、イベント全体を通じて、Devinとの適切な距離感を測る上での重要な道標となりました。
『モノタロウでのDevinとの付き合い方を現場からお届けします!』
Takumi SATOさん@モノタロウ
新入社員のDevinを、いきなり売上を支える大規模でクリティカルなシステム開発に投入したらどうなるか。モノタロウの佐藤氏は、そのリアルな結果を、成功も失敗も包み隠さず語ってくれました。
当初の目論見は、リスクの小さいUI改善などからDevinに慣れてもらうこと。しかし、現実は甘くありませんでした。
「コードの品質が安定せず、レビュー対応も意図通りに進まない。自律性が高いがゆえに『何をされるかわからない恐怖』があり、リスクを取りにくい僕たちの環境では、逆にレビューやQAの負荷が高まってしまいました」 —— Takumi SATOさん@モノタロウ
結果、チームは一時的にDevinから離れ、より制御しやすい他のツールへと回帰します。しかし、彼らはそこで思考を止めませんでした。問題はDevinにあるのではなく、Devinが働きにくい環境にあるのではないか。この発想の転換が、ブレークスルーを生みます。
「AIそのものに目を向けるのではなく、AIを活用するための環境整備が大事。これって結局、DevOpsの考え方だなと思いました」
品質が自動で担保される仕組み、人間が介在する作業の削減。AIが働きやすい環境を整えることこそが、AIの能力を最大限に引き出す鍵である。この教訓は、ツールを導入するだけで満足しがちな私たちに、より本質的な問いを投げかけます。
『Devinを実務に導入して3ヶ月経って得られた知見』
鹿野 壮 Takeshi Kanoさん
Devinが働きやすい環境を整えた先には、どのような景色が広がっているのでしょうか。Ubieの鹿野氏は、3ヶ月の実践で得られた具体的な成功体験を共有しました。その中でも特にインパクトが大きかったのが、 「コードの民主化」 です。
「エンジニアだけでなく、デザイナーやPMもDevinを使えるようにしました。その結果、ちょっとした文言修正やUI調整を、彼らが自ら安全に行えるようになったのです」 —— 鹿野 壮 Takeshi Kanoさん
これまでエンジニアに依頼するしかなかった軽微な修正を、非エンジニアがDevinを通じて直接行える。CIがパスするところまで面倒を見てくれるため、安全性も担保されます。これにより、エンジニアはより複雑で本質的なタスクに集中でき、組織全体の生産性が向上したと言います。
さらに、鹿野氏はDevinをうまく「操縦」するための、極めて実践的なティップスを披露しました。
キャプチャ機能の活用: UIの変更を依頼する際は、必ずスクリーンショットを撮らせる。これにより、人間によるレビューコストが劇的に下がります。
「プラン提示」設定の活用: 複雑なタスクを依頼する前に、まず作業計画を提示させる設定をONにする。これにより、「いい感じにやっといて」という丸投げを防ぎ、意図しない方向に作業が進むリスクを最小限に抑えられます。
これらは、Devinを「自律的な魔法使い」としてではなく、「指示に忠実なジュニアエンジニア」として扱い、人間が適切にマネジメントするための、具体的なノウハウです。
『300万DLのUnity制アプリ「英語物語」の開発者が、初めてのWEBアプリにDevinで挑戦した話』
ごん@英語物語の開発者さん
最後に紹介するのは、個人の開発者がDevinという相棒を得て、新たな領域へと踏み出した感動的な物語です。Unityでのアプリ開発一筋だったごん氏は、Webアプリ開発の経験がほとんどありませんでした。
「人を採用しては何千万円も溶かしてきた。人じゃなくてAIならいけるのでは?と思ったものの、既存プロジェクトではうまくいかず、500ドルの契約が無駄になる…という危機感がありました」 —— ごん@英語物語の開発者さん
彼を突き動かしたのは、「このミートアップに申し込めば、やらざるを得なくなる」という**「排水の陣」**でした。そして、ゼロからVS Codeの拡張機能開発に挑戦。自身ではレビューも指示も満足にできないという課題に対し、「それもAIにやらせればいい」と、ChatGPTやClaudeを「壁打ち相手」兼「レビュー担当」として活用します。
その結果、彼は見事、自身が欲しかった拡張機能を完成させ、公開にまでこぎつけました。
彼の挑戦は、Devinが単に既存のエンジニアの作業を効率化するだけでなく、専門外の領域に挑戦しようとする人々にとって、強力な学習パートナーであり、実現者(enabler)となりうることを証明しました。お金と締切という強制力が、AIとの新たな関係性を生み出した、非常に人間らしいストーリーでした。
ようこそ、AIチームメイト
「Devin Meetup Japan #1」は、私たちに何を教えてくれたのでしょうか。
それは、Devinが単なるコード生成ツールではなく、人格すら感じさせる、新しい「チームメイト」 であるという事実です。
彼を理解するための「取扱説明書」があり(kagaya氏)、彼が働きやすいように「環境」を整える必要があり(佐藤氏)、彼をうまくマネジメントするための「コツ」があり(鹿野氏)、そして、彼と共に新たな挑戦に踏み出す「物語」がある(ごん氏)。
私たちが迎えたのは、完璧なスーパーエンジニアではありません。得意なことも苦手なこともあり、時には失敗もする。しかし、明確な指示と適切な環境、そして辛抱強いフィードバックがあれば、驚異的なスピードで成長し、私たち人間だけでは成し得なかったことを可能にしてくれる、可能性に満ちたジュニアエンジニアです。
彼の「着任初日」は、終わりました。これから私たちは、この新しい同僚と、どんな未来を築いていくのでしょうか。その答えを探す旅は、まだ始まったばかりです。
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