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Developers Night Cafe 第 9 回 LLMOpsってなに? イベントレポート
大型言語モデル(LLM)が企業システムに組み込まれる機会が急増する中、「LLMOps」 というキーワードが注目されています。ところが名前だけが先行し、「何から手を付ければ…」と戸惑う開発者も多いはず。本稿では 2025 年 6 月 26 日に配信された Developers Night Cafe の第 9 回「LLMOpsってなに?」を振り返り、登壇者の言葉とデモから学べるエッセンスをまとめます。
LLMOpsが求められる背景
石田さんのオープニングは「チャットボットを作ってからが本当の勝負」という一言に尽きます。企業内で実験的に導入したボットやエージェントは、運用と改善のサイクルを回せなければ“置き物” になりがちです。業務へ溶け込ませるには、
挙動を観測する
問題点を見つける
プロンプトやデータを調整する
再デプロイする というループを高速に回す仕組み——すなわち LLMOps——が不可欠だと語りました。
セッションハイライト
1. LLMOps の定義を解きほぐす
Gamo さんは DevOps→MLOps→LLMOps へと広がった歴史を整理しつつ、「評価軸がコード品質から “対話品質” に変わった」と指摘します。従来の機械学習では正解ラベルと損失関数が評価の軸でしたが、LLM では
プロンプトに従った“ふるまい”
参照データ(RAG)の妥当性
出力の安全性・一貫性 といった定性的かつ多面的な評価が求められます。
2. 評価フローの全体像
スライドに示されたアーキテクチャは圧巻でした。
実運用ログを収集
メトリクスや対話を 評価用データに整形
LLM あるいは人でスコアリング
改善策(プロンプト修正/RAG更新/ファインチューニング)を適用
新バージョンを CI/CD で本番へ コードと同様に “常時改善” を前提にした流れが示され、参加者のチャットにも驚きが走ります。
3. プロンプトとファインチューニングの使い分け
「まずはプロンプト+RAGでどこまで行けるか試す。複雑化したら初めてファインチューニングを検討する」というアドバイスは実践的でした。ファインチューニングはコストも高く、モデル更新時の再学習も必要になるため「最後の切り札」と位置付けるのが現実解とのことです。
4. デモ:評価項目を LLM に“発見”させる
ハイライトは評価観点を自動生成するデモでした。
カスタマーサポート用の長大なシステムプロンプトを LLM に渡す
XML タグで区切りを明示し、指示文として誤解されるのを防止
structure_output機能で観点を JSON 出力 生成された観点は「敬語の一貫性」「機密情報の扱い」「トーン&マナー」など30 項目以上。これを人が確認・修正し、再度 LLM に評価タスクを振ることで スコアリングが自動化 されました。
評価の落とし穴と対策
質疑では「LLM を評価に使うとバイアスが増幅しないか?」という疑問が集中。Gamo さんは実例として“クレーマー応対テスト”を紹介しました。暴言を連発したにも関わらず 98 点と採点された一件です。
ポイントは二つ
人間評価との誤差を常に測る
誤差が大きい場合は Few‑Shot 例示 や ファインチューニング で評価モデル自体を矯正する
完璧を求めず、「差分を取る道具」として割り切る姿勢が重要だと結びました。
Q&A ダイジェスト
最後の 10 分はチャットから即時ピックアップした質問に回答。要旨を抜粋します。
質問 | 回答 |
|---|---|
ファインチューニング必須のケースは? | 指示が長大化し、プロンプトが管理不能になったとき。まずはプロンプト整理と RAG 改善を試すべき。 |
人間評価のばらつき対策は? | 評価者をペルソナ化し、分布を可視化。LLM のスコアは“中央値への収束”を狙う。 |
自動テストの実装は? | ユーザーシミュレータを LLM で生成し、CI パイプラインで定期実行。人の介在ポイントはエラー分析に絞る。 |
さいごに ―― “育てる覚悟”が次の一歩
今回の配信で印象に残ったのは、LLM を育成対象として捉える視点です。モデルは勝手に学ばず、評価も自動で正しくはなりません。
開発と同じだけ運用に手間をかける勇気
小さく試し、差分で確かめる冷静さ
失敗を責めず、ログを資産に変える習慣
この三つがそろったとき、LLM は“実験”から“実用”へと進化します。チャットボットの次に待つのは、特定タスクを淡々とこなすエージェントたち。その裏側を支える LLMOps の道筋が、本セッションで具体的に描かれました。
次のプロジェクトでは、ぜひ開発計画書に 「評価データ作成」「スコアリング基盤構築」 の行を最初から書き込んでみてください。モデルと並走しながら学び続けるチームこそが、LLM時代の価値創造をリードすると感じた一夜でした。
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