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各社の事例に学ぶ!アクセシビリティを向上させる開発プロセス イベントレポート
合理的配慮の義務化から1年——。 「どこから手を付ければいいのか」「現場に根づかないまま優先度が下がる」 そんな声に応えるかのように開催された本イベントには、プレイド・グッドパッチ・フリーの3社が登壇し、プロダクト横断・組織横断・全社横断という三つの視点でリアルな実践を共有しました。
セッション1
サードパーティウィジェットのアクセシビリティ
登壇:yuhei さん(プレイド)
ウィジェットこそ“癖物”
YouTube 埋め込み、地図、チャットボット、広告 …自社コードではない第三者提供ウィジェットは、ガイドラインの対象外と割り切られがち。しかし実際のユーザーから見れば“サイトそのもの”。
課題を四つに分解
SDKの再設計 – WebView 配信時にモーダル制御が途切れる問題
既存テンプレートの総点検 – 100種超のコピー&ペースト遺産を手作業修正
アクセシブルな新規テンプレート体制 – もう負債を増やさないしくみづくり
ユーザーガイダンス – Alt入力漏れやコントラスト不足を防ぐ仕組み
まず着手したこと
テンプレート専用ガイドライン を先に作成。WCAG2.2を土台に「接客テンプレートで必ず発生するUIパーツ」に絞った具体例を提示し、Dゼロ社と連携して改善を走らせています。
Q&A抜粋「ガイドラインは抽象化しすぎず“写経できる粒度”にした」「WebView 内モーダルとOS側のフォーカス制御を同期させるSDK改修が最大の難所」
セッション2
組織で取り組むアクセシビリティのはじめ方
登壇:大隅 将輝さん(グッドパッチ)
推進チーム誕生まで
2024年4月、法改正をきっかけに3名で発足
エンジニアリングマネージャがハブとなり、経営合意を獲得
1年間で70名以上が参加する社内勉強会を3回開催
4ステップモデル
チームをつくる – 興味あるメンバー+経営の後押し
社内勉強会で理解促進 – LT大会で“興味の窓”を開く
アクセシビリティ方針策定 – WCAGを参考に自社レベルを定義
外部発信 – ブログ・登壇でフィードバックと仲間づくり
継続のコツ
完璧を急がず「まず続ける」を優先
障害当事者の話を直接聞き、課題を“自分事”に
マネージャーは経営目標と現場施策を翻訳する
Q&A抜粋「一人で抱え込まず“推進チーム”と名乗ってしまうと自然に仲間が増えた」
セッション3
全社でアクセシビリティに取り組む
登壇:ymrl さん(フリー)
“誰もが自由に経営できる”を本気で解釈
全新入社員対象の基礎研修+開発者向け追加講座
スラックに「#ナイスオルト」リアクション文化
展示ラベル付きドリンクバーなど社内設備にも配慮
プロダクト開発フロー
独自ガイドライン:WCAG+会計・労務UI特有の要件を明文化
チェックリスト×多重チェック
デザイナー・エンジニア・QAが段階的にレビュー
有識者チームが横串でフィードバック
利用者事例を収集し公開
全盲ユーザーの会計入力
知的障害者が家族とスマホで年末調整 完結 など
合理的配慮の窓口
2024年に合理的配慮方針をプレスリリース
障害当事者との対話を担保する専用メール窓口を開設
サポート/人事/広報などを含む合理的配慮委員会で全社的に対応
Q&A抜粋「窓口をフォームではなくメールにしたのは“フォーム自体が壁になる”と判断したため」
クロージングで共有された“明日できること”
一人で悩まずチャンネルをつくる – 情報が集まる場所が活動の起点
社内勉強会はライトに始める – 15分LTでも“知らない”を減らせる
方針を言語化し公開する – 社外の視線が自然と推進力になる
窓口を用意し声を受け取る – 対話からしか本当のニーズは掘れない
ふりかえり — “全社横断”はゴールではなく手段
三社三様のアプローチに共通していたのは、「内部で合意を取り、外部の声を聞き、再び内部を動かす」という循環でした。 アクセシビリティはガイドラインの暗記競争でも、特定チームだけの業務でもありません。 SDKを直す人、チェックリストをメンテする人、当事者の声を届ける人——それぞれが自分にできる一歩を持ち寄ることで、組織全体の“当たり前”が更新されていく。
義務化2年目のいまこそ、今回共有されたプロセスを自分の現場に重ね、 「合理的配慮は特別な施策ではなく日常の作法」 へと育てていきたいと思います。
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