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freee Tech Night「セキュリティ✕Cline、爆速でエンジニア全員に配るには?」 イベントレポート
2025 年 6 月 24 日、freee 本社 19F で開催された freee Tech Night「セキュリティ✕Cline、爆速でエンジニア全員に配るには?」。 生成 AI エージェントをわずか 3 か月で全社導入した舞台裏を、AI 駆動開発チームの中山祐平氏(以下ゴンさん)と PSIRT の hikae 氏が余すところなく語りました。本レポートでは、導入前の空気感から Q&A までを臨場感たっぷりにお届けします。
Cline とは何者か
VS Code 拡張として動く AI コーディングエージェント
チャット指示でコード修正・テスト追加・コマンド実行まで自律的にこなす
早期に登場したツールでありながら、並列タスク処理の軽快さが抜群
ゴンさんいわく「自分が一人増えた感覚」。freee では Cline を軸に複数エージェントを評価する“ハブ”の役割も担わせています。
導入前夜──AI はすでに社内にいた
GitHub Copilot をはじめとする補完系ツールは稼働済み
社内チャットボットやドキュメント検索ボットも LL M 基盤経由で運用
とはいえ エージェント型でコードベースに深く触れるツールは未導入
「基盤はある。次は開発フローそのものを AI で再構築しよう」――そんな機運が CTO レベルで高まり、Cline の全社展開が号砲を鳴らしました。
立ちはだかった三つの壁
カテゴリ | 具体的な懸念 | キーワード |
---|---|---|
セキュリティ | 機密コードの外部送信 / 危険コマンド実行 | ガードレール、MCP フィルタ |
コスト | 重量課金モデルゆえ利用量が読めない | トークン監視、ダッシュボード |
リテラシー | 使い方のばらつきによる効果差 | オンボーディング、勉強会 |
hikae 氏は「車にシートベルトを付ける作業に近い」と表現。未知のリスクに先回りする体制づくりが急務でした。
解決へのアプローチ
1. セキュリティ
AWS Bedrock を経由して 入出力が学習されない 経路を確立
自社プロキシでリクエストを集中管理。
危険コマンド(
sudo
,rm
,curl
など)は即時ブロックMCP ツールはホワイトリスト方式で限定
PII フィルタを組み込み、外部 API へ送る前に個人情報を自動マスク
2. コスト
プロキシ層で ユーザー別・チーム別トークン消費量 をロギング
PR 件数との比率で「投下コストに見合うアウトプットか」を定点観測
異常増加を検知したら声掛け&使い方ヒアリングを実施
3. リテラシー
全社員向けオンボーディング会を開催し、“Cline を入れればまず動く”状態を保証
エンジニア向け Slack チャンネルで チップス共有が日次ペース
チームごとに
.clineignore
テンプレートを整備し、不要ファイルを一括除外
Q&A ダイジェスト
質問 | 回答ハイライト |
---|---|
「環境は整えたのに使わない人は?」 | 利用ログを可視化し、低利用者には使い方ガイドやペア設定会を案内。強制ではなく“楽しさ”を伝える声掛けを重視。 |
「AWS サービスクォータは大丈夫?」 | プロキシで複数 AWS アカウントへロードバランスし、レートリミットを回避。ユーザー側は意識不要。 |
「Cline 以外の導入予定は?」 | Claude Code, Devin, Gemini 2.5 Pro などを AI Dock(社内検証制度)でテスト中。安全基準を満たせば順次開放予定。 |
「爆速浸透の決め手は?」 | オンボーディング+社内勉強会の双発。特に“みんなでセットアップする会”は参加率が高く、質問もその場で解決できた。 |
さらなる展望
自律エージェントの実戦投入
アラート対応やリント修正など、24 時間走り続ける“夜間当番ボット”を開発中。
ドメイン知識のコンテキスト化
税制改正ドキュメントを食わせてコードを自動生成する――そんな夢物語を実装レベルへ落とし込む計画が進行。
ベストプラクティスの標準化
「freee 流エージェント開発フロー」を整備し、全プロダクトで横串を通す。
クロージング・ノート
“AI が書いたコードを直すだけ”は本当に退屈か
セッションを通じて感じたのは、参加者全員が 「開発速度が上がる未来」 を確信しつつも、 自分の仕事が単純化する不安を隠し切れないということでした。
しかしゴンさんの言葉を借りれば、AI が肩代わりした分だけ 設計やビジョンに頭を使える余白が増える のも事実。 ハンドルを握る時間が減ったなら、地図を描く余裕が生まれる――そう捉えれば、 コードを“修正する”行為すらプロダクト品質を高める創造的行為へ昇華します。
freee の挑戦はまだ道半ばですが、 「高速」「安全」「みんなが楽しい」の三拍子を同時に満たすアプローチは、 これから AI エージェント導入を検討するすべての組織にヒントを与えてくれるはずです。
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