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エンジニア育成現場の「失敗」集めてみた。 - Forkwell Library #99 イベントレポート
2025 年 6 月 24 日、Forkwell Library 第 99 回は書籍 『エンジニア育成現場の「失敗」集めてみた。42 の失敗事例で学ぶマネジメントのうまい進めかた』を著した出石聡史氏を迎え、「俺の失敗を乗り越えろ! 〜ほんわかチームマネジメント編〜」をテーマに開催されました。 企業の大小を問わず 「育てたいのに育たない」「任せたいのに任せられない」 という声は後を絶ちません。本レポートでは、出石氏が披露した“生々しい失敗”と、それを糧に紡ぎ出したチームづくりのヒントをまとめます。
書籍とイベントの位置づけ
前作 『ソフトウェア開発現場の「失敗」集めてみた。』
今作 『エンジニア育成現場の「失敗」集めてみた。』
前作が「プロジェクトを壊す落とし穴」を扱ったのに対し、今回は「人が育たず組織が痩せる落とし穴」が主役。 登壇者自身がソフトウェアリーダーとして味わった痛みを 42 事例に凝縮し、「二度と同じ過ちをさせない」ための処方箋を語りました。
良いチームを形づくる 6 つの鍵
出石氏は、目標/役割/オープン/学び/安心/特別感 の 6 要素がそろうとチームは自然に回り出すと提唱します。
要素 | 失敗が起きる景色 | 打ち手のヒント |
---|---|---|
目標 | 指示だけ飛び、作る意味が共有されない | 1 枚の「なぜシート」で顧客価値を可視化 |
役割 | “とりあえず配属” で希望とスキルが迷子 | キャッチフレーズで将来像を宣言させる |
オープン | ダメ報告が遅れる“しなびたホウレンソウ” | 先にリーダーが弱みを晒し、雑談を仕掛ける |
学び | 失敗させずに守りすぎる“メッキ職人” | 若手に時間と権限を渡し、リカバリで支援 |
安心 | 会議が糾弾の場になり“つるし上げ”連鎖 | 責任はリーダーが受け止め、課題は皆で割る |
特別感 | 人員を細切れにする“社内フリーター” | チーム名・儀式・オフサイトで所属意識を醸成 |
失敗事例ピックアップ
1. キャリアも希望も無視した「とりあえず配属」
症状: 意欲が落ち、数年後には“何も任せられない人”が出来上がる。
対策: 3・5 年後の役割を描いた上でアサイン。本人には“二つ名”を考えさせ、理想像を自覚させる。
2. ダメになるまで報告しない「しなびたホウレンソウ」
症状: リスクが地中で発酵し、日の目を見た頃には爆発。
対策: 会議の 5 分前にエンタメ雑談を挟み、発言のハードルを 0 にする。おやつは最強の潤滑油。
3. 失敗を味わえない「一流技術者のメッキ」
症状: 若手を“派遣コントロール要員”にすると、手を動かす経験値が空洞化。
対策: 教育コストを計画に織り込む。小さな実装タスク→レビュー→デプロイまで本人に一貫させる。
4. 悪いのはいつも部下「つるし上げの連鎖」
症状: 上から“どうするんだ”の圧が降り、部下へそのまま転写。心理的安全性は地に落ちる。
対策: 問題を“自分ごと”として受信し、まずリーダー同士で矢面に立つ。犯人探しより再発防止。
5. コロコロチームが変わる「社内フリーター」
症状: 0.3 人月の切り売りが続き、帰属意識と専門性が同時に痩せる。
対策: コアメンバーは護る。どうしても援軍が要るなら、期限・期待成果・学びをセットで約束。
Q&A ハイライト
相談 | 出石氏の回答エッセンス |
---|---|
リーダーも追い詰められて孤独です | 孤独は毒。管理職同士の雑談会や「おやつ回」でまず自分たちの心をほぐす。 |
転職者のオンボーディングで失敗したくない | 新人の“知らないこと”は想像以上。顔を合わせる機会を増やし、暗黙知を言語化して手渡す。 |
閉鎖的・消極的な雰囲気を変えたい | モデルはリーダー自身。明るくなるまで自分が明るく振る舞い続け、発言量を底上げする。 |
アイデアが出るまで待つべき? | 待つより“量を出す場”を設定。100 個出して初めて 1 個光ると心得る。 |
参加者の声から見えたインサイト
「遠隔勤務+転職直後の孤独に刺さった」
リモート時代、雑談の設計は育成施策と同義。
「上司だけが努力する話ではない」
メンバーも互いの人生に関心を持ち、小さな歩み寄りを重ねる必要がある。
「おやつ研究すら学びのベース」
雑談はムダではなく、筋金入りの心理的安全性ブースター。
編集後記:失敗を抱きしめる組織へ
出石氏の語り口は終始“ほんわか”でした。しかし裏には、 「失敗を隠さず、人を嫌わず、場に手間をかける」という骨太の哲学が通底しています。
特別なフレームワークやツールよりも、まずはリーダーが肩書きを外し、 「今日、君は元気?」 と問いかける勇気を持てるか。
42 の失敗談は、その答えを私たちに突き付けます。 ――失敗は恐れるものではなく、次の挑戦に耐える筋肉 をくれる贈り物。
明日の朝、チームメンバーの顔色を 1 秒だけ長く眺めてみませんか。 そこから始まる会話こそ、組織の未来を育てる最初の一歩です。
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