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Clineの実力と使いどころ イベントレポート
2025年6月24日、昼休みのオンライン会議室にて「Clineの実力と使いどころ ‑ 現場から見る!スピード開発実践事例‑」が開催されました。 Cline は“自律心の強い AI エージェント”として知られ、便利さとリスクが表裏一体です。本イベントでは MonotaRO と DMM.com のエンジニアリングリーダーが、200 人規模での大量導入から大規模組織全体への展開まで、実践知を披露しました。チャット欄は質問と拍手で終始にぎわい、社内で導入を検討している参加者に多くのヒントを残しました。以下、当日の熱量をそのままお届けします。
セッション1
「Clineを200人で試してみた 〜モノタロウのAI駆動開発より〜」
登壇者:市原功太郎(株式会社MonotaRO CTO Office)
背景と狙い
MonotaRO では基幹システムを内製し、エンジニアが数百名規模。
AI 技術は「インターネット登場に匹敵する変革」と捉え、まず大量導入し後から最適化する方針を採用。
導入ステップ
2025年1月 — 市原氏が独自に Cline を社内検証。
API キーを“1人1本”配布し、2週間で 100 名、5月には 250 名へ拡大。
VS Code ベースで既存ワークフローに即統合。
成果と課題
月6000 ドル(1人あたり約30 ドル)のコストで、プルリク数は 3倍。
“上位2〜3割”のヘビーユーザーが成果を牽引。
中間層の底上げへ向け 「AI道場」 を開設し、プロンプト作法やメモリマネジメントを共有。
Q&A 抜粋
質問 | 回答(要旨) |
---|---|
GitHub Copilot との違いは? | Copilot はタブ補完が優秀だが、Cline は協調型エージェントとして新パラダイムを試しやすい。 |
セキュリティは? | API 発行を集中管理し、キー単位で利用量を監査。学習除外設定も徹底。 |
コスト暴走への対策は? | 使い過ぎを可視化し、必要なら定額プラン(Claude Code など)への切替を検討。 |
セッション2
「大規模組織のCline導入効果〜開発フェーズだけじゃない活用事例〜」
登壇者:石垣雅人(合同会社DMM.com プラットフォーム開発本部 副本部長)
DMM のスケール感
従業員5000 名超、クリエイター組織だけで約1300 名。
37部門・100チームが自律的にAIツールの選定と導入を実施。
取り組みのログ
2025年2月末 — Cline、Devin を同時トライアル開始。
3月上旬 — 1週間で投資対効果共有会を実施。
5月 — コストとノウハウ集中のため Cursor + Claude Code を推奨ツールにシフト。
全社プロセス再設計
全200 名分の業務プロセスを洗い出し、要件定義〜運用まで数百項目をマッピング。
《AIで完全置換》《人+AI協業》《人主体》の3カテゴリに色分け。
今期目標:人だけで行うタスクを50%削減し、リードタイムを150%向上。
可視化ダッシュボード
部門×プロセスのヒートマップで AI 利用率を表示。
要件定義・設計・実装・テストは 70〜90% が AI と協業。
障害対応やマネジメント領域は 10%以下 が多く、次期重点分野に設定。
Q&A 抜粋
質問 | 回答(要旨) |
---|---|
推奨ツールが変わった理由は? | ライセンス管理と学習コストを一本化するため。Cursor は定額+Claude Code統合で扱いやすい。 |
非エンジニアにも開放する予定は? | ユースケースが明確になり次第、CLIよりGUIベースの環境を整備する。 |
効果測定は? | 予測工数と実績差分に加え、障害修正率など品質KPIも複合的に追跡。 |
組織横断で見えたポイント
観点 | MonotaRO | DMM.com |
---|---|---|
導入方針 | “まず配る”大量導入型 | スモールスタート→早期可視化 |
主要ツール | Cline(VS Code 拡張) | Cursor+Claude Code(定額) |
教育施策 | AI道場/エバンジェリスト制度 | ワークフローマップ+横串コミュニティ |
効果測定 | APIキー単位の利用量とアンケート | 業務プロセス別AI利用率ヒートマップ |
今後の課題 | 中間層の浸透、レビュー負荷 | 非エンジニア領域の自動化、品質KPI連動 |
両社とも 「ツール選定より、組織内の習熟と基盤整備がボトルネック」 という認識で一致していました。
速さと品質を両立させるために
APIキー管理と学習除外設定で情報漏洩リスクを最小化。
レビュー支援エージェント(CodeRabbit 等)を併用し、生成コードの検証コストを抑制。
プロセス全体をAI前提に再設計し、従来の手順をそのまま自動化しない。
定量+定性の多元評価で投資効果を説明。プルリク数だけでなく障害発生率や顧客価値指標も合わせて追う。
おわりに ― 「自律型AIと共に走る組織の条件」
二つのセッションを通じて痛感したのは、Cline 自体が魔法の杖ではないという事実でした。 大量導入でスピードを稼いだ MonotaRO、プロセス再設計で全社を巻き込む DMM.com。アプローチは異なりますが、両社ともに
ガバナンス(セキュリティ・コスト・可視化)
習熟支援(道場・横串コミュニティ)
効果測定(複合KPI)
を三位一体で整え、「AI と働く力」を組織の当たり前に変えつつあります。
Cline を含む自律型 AI は日進月歩で姿を変えます。来年には別のエージェントが主役になっているかもしれません。それでも、ツールが変わっても学び続ける仕組みがあれば、開発組織は変化を追い風にできるはずです。
今回のイベントが、その仕組みづくりの第一歩となれば幸いです。
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