🌏
個人開発の海外での収益化 Lunch LT イベントレポート
雨雲が去った 2025/6/23 の昼休み、オンライン会議室には世界を視野に入れた個人開発者が続々と集まりました。タイトルは「個人開発の海外での収益化 Lunch LT」。ほんの55分あまりで 4 名がリレー形式のライトニングトークを披露し、チャット欄とSNSはリアルタイムの拍手と質問で埋め尽くされました。聞き逃した方にも、この熱気と学びを余すことなく届けるべく、当日の内容をレポートします。
個人開発こそ世界へ。最初から海外を意識した開発戦略 — 長澤光希さん(@pixyzehn)
“最初から英語で作る”という決断
長澤さんは Todoist を手掛ける米 Doist 社のiOSエンジニア。個人開発アプリ Expenses の月間売上の 8 割以上を海外ユーザーが占めます。肝は「最初にターゲットを日本に絞らない」こと。
主要言語は英語、日本語はセカンダリ。
App Store Optimization(ASO) を地道に改善し、広告に頼らずオーガニック流入を獲得。
機能は「シンプル+必要に応じて拡張」し、自分自身を最初のヘビーユーザーに据える。
Q&A ハイライト
海外ASOの具体策は? — 「関連しそうなキーワードを洗い出し、
AppTweak
等の計測ツールで順位とコンバージョンを毎週確認します」Product Hunt は使った? — 「2022 年に投稿。大バズはしなかったものの固定ユーザーが付きました」
開発時間の捻出は? — 「週4〜5時間。子育てとフルタイム勤務の合間なので“やれない日もある”と割り切っています」
エンジニアの“あるある”を率直に語りながらも、数字とプロセスで裏付ける語り口に説得力がありました。
60言語に対応したアプリの開発 — 山田敬汰さん(@keita_developer)
翻訳コストは “ゼロ発想” で削る
単語帳サービス AnkiMaker を9年運営する山田さん。「ユーザーが自作問題を作る」という構造を逆手に取り、コンテンツ翻訳が不要な領域だけを LLM で自動翻訳。
Flutter がデフォルト対応する 61 言語を全展開。
翻訳ファイル差分だけを LLM に渡す コマンドを用意し、1クリックで全プラットフォームに反映。
翻訳品質は「最低限クリア」でまず公開し、反応が良い言語に投資を集中。
Q&A ハイライト
広告媒体は? — 「Apple Search Ads。一括キーワード提案で ASO のヒントにもなります」
予算配分は? — 「広告費の7割を日本、残り3割を“伸びそうな国”に機動的投入。最近はイタリア×法学系キーワードが当たりです」
誤訳対策は? — 「短文中心なので致命傷になりにくい。ユーザーからの指摘で優先度を見極め、必要なところから直します」
“やってみて当たったら広げる”という軽快なサイクルが、個人開発の武器であると再認識させてくれるセッションでした。
AIによるIncident Management Ops — Brown さん(@brownjpn)
https://speakerdeck.com/3150/20250623-findy-lunch-lt-brown
Day 1 から世界市場を見据える理由
SaaS 企業で SRE を歴任した Brown さんは、インシデント対応を支援する AI エージェント “(仮)Copilot” を開発中。
EU の GDPR 72 時間ルール を踏まえ、グローバル企業の切実な課題を狙い撃ち。
Go‑to‑Market は Sales‑Led Growth。「まず日本拠点を持つ外資企業に営業し、ユニットエコノミクスを検証する」。
2 名開発体制+エンタープライズ営業の小さなチームで、来年シンガポール拠点を計画。
Q&A ハイライト
最初の海外顧客は? — 「日本に支社がある北米企業。言語・時差リスクを抑えながら米本社への紹介を狙います」
リードはどう集める? — 「詳細は非公開ですが、社内に専任営業がいてリスト化→アウトバウンドを徹底します」
ターゲット地域は? — 「GDPR が厳しい欧州と、SaaS 消費が大きい北米の二軸です」
“プロダクトが日英対応でも、顧客の法規制が強い国を選ぶとニーズが尖る”という視点が印象的でした。
次のターゲットは海外ユーザー!Rails管理画面をAIで多言語対応してみた — シロさん(@snowwshiro)
スノーボード愛とコスト削減が生んだ OSS
二拠点生活エンジニアのシロさんは、スノーボードイベントサービス snowwshiro を運営。インフラコスト削減のため App Runner 移行を決めたところ、Rails 標準の rails console
が使えず困窮。そこで
StompBase という Rails Engine を自作し、WebUI から多言語コンソール操作を実現。
LLM と Copilot を駆使し、プロトタイプを2日で開発。
国際化は「次のターゲットは海外ユーザー」の布石。
Q&A ハイライト
個人開発と仕事の両立は? — 「週2〜3時間。冬は滑走優先で“開発ゼロ”の月もあります」
今後の国際展開は? — 「マッチングは法的・運営面の壁が高いが、OSS で経験値を貯めて攻めたい」
好きなことを軸に課題を見つけ、OSS に還元する姿勢は、コミュニティまで巻き込む好循環を感じさせました。
4つの LT に共通する3つの示唆
“まず英語”は今や前提事項日本語 UI を後付けにする発想が逆転しつつあります。言語ではなく課題の普遍性で勝負するための必須条件でした。
LLM と自動化で“広げて当てる”翻訳・広告・データ分析を LLM/スクリプトに任せ、ヒット言語や国が見えた瞬間に投資を集中する──時間も資金も限られる個人にとって、最適な戦い方です。
収益化フェーズは“人間的な手触り”が鍵サブスク化のタイミング、価格改定、営業の初期リード――いずれもユーザーや顧客と直接対話した手応えがトリガーになっていました。AI 全盛でも“顔が見える距離”を捨てない姿勢が共通していました。
書き手のひとこと — 「熱狂は昼休みに宿る」
オンライン LT は時に“ながら視聴”になりがちですが、今回はチャット欄も SNS も驚くほどの集中度でした。理由は明快で、
実例が等身大であること
数字とツール名を惜しまず公開してくれたこと
質問に対し裏側の失敗や迷いまで話してくれたこと
どれも資料を読み返すだけでは湧き上がらない、人間味ある発声や間合いがあったからです。開発者向け情報発信は “How” だけでなく “Why” を語るときに温度が乗ります。それを証明した55分間でした。次回、あなたの昼休みにもこの熱狂が届くことを願っています。
Yardでは、AI・テック領域に特化したスポットコンサル サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポットコンサルをお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。
Read next
Loading recommendations...