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実例から学ぶ!データアナリストのためのデータ基盤構築・運用ガイド レポート
2025年3月11日に開催された第7回『データマネジメントの勘所』は、「効率と価値を両立するデータ分析基盤運用」を掲げ、泥臭い現場知と最新アプローチの両輪を共有する熱量高いイベントとなりました。本レポートでは、各セッションの要旨と質疑応答で交わされたリアルな声を交えながら、会場に漂った学びと高揚感を凝縮してお伝えします。
オープニング ― いま、なぜ“効率と価値の両立”か
シリーズを牽引するプライムナンバーの鳩戸さんは、データマネジメントを「ツール導入だけでは完結しない、組織横断の長期戦」と位置付けました。
背景: 社内にデータエンジニアが不足し、アナリストが基盤構築まで担うケースが増加
ゴール: 限られたリソースで“ビジネスに効く”基盤を素早く回し続けること
その言葉どおり、本編は〝現実解〟を提示する実例の連続でした。
セッション1
ビジネス価値を引き出すデータモデリング 〜データ民主化のための設計戦略〜
登壇:株式会社アイスタイル 山本泰介氏 / 土佐智樹氏
課題
メディア・EC・店舗が急速に連携するなか、データ定義の食い違いが分析を阻害
「同じ言葉なのに意味が部署で異なる」現象が頻発
解決策
ビジネスイベントの棚卸し
7つのW(Who/When/Where/Why/What/Which/How)を軸に、事業部と共同で“イベントマトリクス”を作成
ディメンショナルモデリングを採用
ファクトとディメンションを星型に可視化することで、非エンジニアでも構造を理解
dbt × trocco で実装を自動化
スモールスタートでも破綻しない運用コストを実現
成果
中間テーブル乱立が激減し、同一部門での集計工数が10〜20%削減
「データが怖くなくなった」という声がビジネス側から上がり、組織全体で分析サイクルが加速
セッション2
BIダッシュボードの負債を管理するガバナンス戦略
登壇:株式会社バンダイナムコネクサス 長野啓介氏
現状認識
ダッシュボードが増えすぎ「誰がオーナーか分からない」「似た資料が乱立」という典型的問題
ガバナンスチーム(AEチーム)の発足
横串チームを作り、
レポートの一覧化(BigQuery情報スキーマ+Googleアナリティクス埋め込みで自動収集)
利用頻度に応じた棚卸し
共通ルール/マニュアル整備
trocco × Terraform によりパイプラインをコード管理し、変更の抜け漏れを防止
効果
“野良ダッシュボード”の半数を整理、クエリ実行コストを月間15%削減
依頼窓口が一本化され、質問対応の平均リードタイムが1/3に短縮
セッション3(主催社LT)
troccoを利用したデータ可視化の実現方法
登壇:プライムナンバー 鳩戸氏
troccoの転送・変換・ワークフロー機能を用い、複数広告媒体の実績をSnowflakeへ統合しLooker Studioで可視化するデモを披露。「まず目的三点セット(コンテキスト/アウトプット/アウトカム)を整理してから触ると失敗しない」というメッセージが印象的でした。
セッション4
膨大なデータを効率的に活用するドコモ・バイクシェアの最前線
登壇:株式会社ドコモ・バイクシェア 野口翔氏
組織的制約
従業員100名規模、データ担当者1名からのスタート
アプローチ
trocco で日次100テーブルをSnowflakeへ自動連携
Googleフォーム→スプレッドシート→Snowflake の作業実績連携もノーコード化
成果
自転車配置の最適化ダッシュボードを即時共有し、自治体・事業者との交渉材料に
非エンジニアの派遣社員がSQLを書き始めるほどの民主化が進行
Q&Aハイライト
Q: GPSデータを公開マップで遊びに使えないか?
A: 個人情報保護の観点で即時公開は難しいが、匿名化+集約単位を工夫すれば将来的に検討余地あり。
Q: 担当者が長期休職した場合のリスクは?
A: troccoのGUIとワークフローが“黙々と動く”ため、属人化せずに引き継げる。実際、野口氏が育児休暇取得予定でも不安は小さいとのこと。
クロスセッションで浮かび上がった共通課題
課題 | アプローチ | 得られた示唆 |
---|---|---|
社内リソース不足 | スモールスタート+自動化ツール | 最低限の人員でも“回る”仕組みを先に作る |
データ定義の不一致 | ビジネス部門との共創設計 | 「競争(Co‑Creation)」がギャップを埋める |
ダッシュボードスパrawl | 可視化資産のメタデータ管理 | 利用頻度を数値で示すと削除判断が容易 |
属人化 | GUIとIaCの併用 | “誰でも読める”と“コードで残す”を両立 |
Q&Aセッションの熱量
参加者から最も質問が集中したのは「組織をまたいだ共通言語の作り方」と「ダッシュボード削除の基準」。
アイスタイル土佐氏は「イベントマトリクスを壁打ちできる場を週1で設ける」と回答。
バンダイナムコネクサス長野氏は「最終閲覧から90日以上経過し、担当不明のものは候補」と具体的な数値を提示。
数字と運用ルールをセットで語る姿勢が、質疑を通じて参加者を唸らせました。
これからのデータ基盤運用―五つの示唆
“設計資料”より“イベントマトリクス”
ユーザーストーリー起点で考えると実装も運用も迷わない。
ガバナンスは在庫管理に似ている
使われないダッシュボードは“データの死蔵品”。定期棚卸しが必須。
自動化ツールは“黙々と働く同僚”
人が核心業務に集中できる環境を先に整える。
権限設計=安全装置
アクセス範囲と実行権限を分け、事故を未然に防ぐ。
数値→行動→成果のループを短く
“価値を出す速度”こそがリソース不足を跳ね返す最大の武器。
総括 ― データに翼を、組織に推進力を
今回のイベントは、ツールの宣伝ではなく「現場が明日から動ける知恵」の交換会でした。共通していたのは、限られた人数でも本質的な価値創出に集中するための工夫です。 誰かの属人的努力で回すのではなく、自動化と共創で“みんなが使える”基盤を育て上げる。そこにこそ、これからのデータマネジメントの核心があると強く感じました。
余韻と展望 – 価値を届け続けるデータ文化へ
三社三様の取り組みを通じ、「リソースが足りないからこそ、設計思想とガバナンスが重要」というメッセージが胸に刺さりました。 私自身も、日々の開発やコミュニティ活動で “仕組みで人を幸せにする” 姿勢を忘れずにいたい――そんな決意を新たにした一日でした。
本レポートが、読者の皆さまの次の一歩を後押しする燃料となれば幸いです。
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