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エンジニアのための MCP勉強会 #2 レポート
序章 ── つながる時代の“配線”を学ぶ1時間
Model Context Protocol(MCP)は、生成 AI と外部サービスを結ぶ“配線”の標準仕様です。 クラスメソッドが主宰する生成 AI コミュニティ「Classmethod AI Talks(CATs)」は、DevelopersIO の MCP 記事が 100 本到達目前となった節目に、勉強会第2弾をオンライン開催しました。申込者は 157 名。司会の「ぶり」さんが参加者数を紹介すると StreamYard のコメント欄が拍手であふれ、恒例の“社猫スライド”で会場は一気に和みムードへ。
オープニングに続き、登壇者二名が最新動向と実践ユースケースを連投。終盤の Q&A では、実装時の疑問がテンポよく解消され、初学者も踏み出せる内容に仕上がりました。本稿では当日の熱量と発見を余すところなくお届けします。
1.MCP のおさらいとアップデート情報(shuntaka さん)
1‑1 MCP を取り巻く一年の加速
2024 年後半:自律型エージェントや AI コーディング環境が次々登場
2024 年11月:Anthropic 主導で MCP ドラフト公開
2025 年前半:SDK・公式サーバーが充実し、エコシステムが爆発的に成長
shuntaka さんはこの流れを図解し、「API が氾濫した世界を“再配線”するのが MCP」と位置づけました。従来はクライアントごとに個別実装が必要だった接続部を、標準入出力(ローカル) と **SSE/Streaming HTTP(リモート)**で統一することで、開発者の重複工数が激減すると強調します。
1‑2 サポート状況の現在地
エージェント SDK:OpenAI 公式 Python / TypeScript が公開済み
Claude:5 月に Max プラン、6 月に Pro プランへリモート MCP 連携を展開
ChatGPT:カスタムコネクターで試験的にリモート MCP 呼び出しを許可
Windows 2025:OS ネイティブで MCP レジストリを提供予定(Build 2025 発表)
「半年ごとに地図を書き替える必要がある」という言葉通り、スライドには日付入りで更新履歴が並び、参加者のメモが追いつかないほどでした。
1‑3 デモ:Google Calendar × Slack 連携
CLI で動く MCP クライアントを使い、
Google Calendar から空き時間を取得
Slack チャンネルIDを検索
取得データを Slack へ自動投稿 という一連のフローを ワンプロンプトで実行。動画はリアルタイムの等倍再生で、許可ボタンを押すたびにツールチェーンが駆動する様子が映し出されました。AI が Slack API の仕様を自律的に解釈し、最小限の指示で完結した点にコメント欄が沸き上がります。
2.LLMs can connect your world(shuntaka さん)
2‑1 リモート MCP と認証・課金の鍵
リモート MCP はインターネット経由で LLM クライアントと対話するため、OAuth 2.1 ベースの認可フローが必須となります。
Cloudflare Workers 製 SDK「workers‑oauth‑provider」
Stripe Agent Toolkit による サブスクリプション課金付き MCP
Stripe のデモでは、有料ツールを呼び出す際に自動で「サブスク加入を促す URL」が提示され、決済完了後にツールが解放される流れを披露。「AI への API 課金がマネタイズの王道になる」という示唆にうなずく参加者が目立ちました。
2‑2 業務適用事例:社内ダッシュボード・チャットボット
講演後半では、実務で取り組んだMCP+社内データ分析ボットの構成図を公開。
Grafana MCP でダッシュボード一覧を取得
Amazon Bedrock + プロンプトキャッシュでコスト 90 % 削減
SPA から MCP ツール呼び出しをストリーミング表示し、ハルシネーションを可視化
「まずローカル MCP で価値検証し、認可設計が固まった段階でリモート化する」という段階的アプローチが紹介され、実務者からの好感度が高いセッションとなりました。
3.MCP で自然言語 3D プリント(濱田孝治 さん)
3‑1 FreeCAD MCP の衝撃
FreeCAD はオープンソース 3D CAD。そこへ FreeCAD MCP サーバーを組み合わせると、モデル生成を丸ごと LLM に依頼できます。濱田さんはライブで次のようなプロンプトを入力しました。
「おもちゃの車の 3D モデルを作成してください」
すると MCP ツールが
車体キャビンの押し出し
車輪パーツの配置
寸法の自動計算 を順次実行し、FreeCAD 画面上に三次元モデルが構築されていきます。プロンプトを修正すれば即座に再計算され、参加者からは「CAD 初心者のハードルが一気に下がる」と驚きの声が上がりました。
3‑2 “ざわ…ざわ…”サイコロも生成
続いてチャレンジしたのは、漫画『カイジ』でお馴染みの一日外出録サイコロ。六面のうち4〜6しか描かれていないという特殊仕様を、AI へパラメータヒアリングさせながら設計。 一部タイムアウトも発生しましたが、「日本語名がモデル名に入るとエラーになる」などリアルな罠と回避策を共有。完成モデルは DMM.make にアップロードし、そのまま3D プリント注文できる状態まで実演しました。
4.質疑応答で深掘りされたポイント
質問 | 回答ハイライト |
---|---|
API と MCP の違いは? | 汎用 API が「サービス × プログラム」間の通信規格なのに対し、MCP は「LLM × 外部資源」に最適化したプロトコル。既存技術(SSE, JSON‑RPC 2.0)を組み合わせ、AI が扱いやすいメッセージ構造を提供する。 |
Alexa スキルと比較した複雑度は? | スキル同様に“ツール”を登録する構造だが、MCP は LLM が自律的に API 呼び分けを学習するため、ツール側の実装がシンプル。ローカルでは GUI アプリ操作も、リモートではフル Web サービス連携も可能。 |
将来どこまで高度化するか? | グラフ生成やロボット制御など「更新系ツール」が増えれば、MCP は API と同等かそれ以上の汎用性を持つ。OS レベル統合やリモート MCP レジストリが普及すれば、“AI に依頼→即実行”が当たり前になる。 |
結語 ── 標準化の波に、情熱と遊び心をのせて
今回の勉強会は、MCP の基礎・最新動向・実践デモを 60 分で走り切る濃密な内容でした。印象的だったのは、どのセッションも「まず試せる環境を示し、失敗も含めて共有する」スタンスを貫いていたことです。
shuntaka さんは OAuth 認可の落とし穴を警告しつつ、Stripe 課金まで踏み込む未来図を描きました。
濱田さんは 3D CAD という高い壁をユーモアで乗り越え、AI × モノづくりの間口を広げました。
標準化は枠組みを整える一方で、使い手の創意工夫を求めます。MCP もまた然り。仕様書だけでは生まれない価値を、コミュニティで笑いながら実験する──それが今日の学びでした。
次回の CATs イベントは「AI 行動開発どうなの?」ウェビナー(7 月 18 日予定)。 本稿があなたの“次の実装”へのスイッチになれば幸いです。
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