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開発者が知っておきたい ”コスト削減&効率化 両立の一手” レポート
はじめに
クラウドの請求書が届くたびに胸がざわつく――そんな経験は多くの開発者が共有する現実です。本イベントでは、キャディ・ユニークビジョン・メルカリの 3 社が 「Cloudflare をどう使ってコストも手間も減らしたか」 を赤裸々に語りました。LT 形式の 20 分×3 本に加え、チャット欄が止まらない Q&A でリアルな悩みと工夫が交差。ここでは当日の熱量そのままに、各社の取り組みと学びをまとめます。
1. キャディ ― 標準化がもたらす“静かな効率化”
1‑1 なぜ Cloudflare か
2019 年 CDN 導入からスタート。ゼロコストで試せるハードルの低さが入口。
現在は Access/Rules/Workers を駆使し、開発者体験の向上を主眼に拡張。
1‑2 具体策と効果
施策 | 概要 | 効果 |
---|---|---|
Cloudflare Access | VPN を廃止しゼロトラストへ | 構築・運用コスト削減、権限制御を IaC 化 |
Rules ベースのメンテナンス切替 | 管理画面からワンクリックで ON/OFF | 認知負荷を軽減、Slack 通知で透明性確保 |
Workers で IP 制限レイヤを共通化 | すべてのリクエストを入口で判定 | 各プロダクトが実装を意識せず安全性を担保 |
1‑3 Q&A 抜粋
Q: IP 制限リストはどこに保存? A: Workers の Secrets に格納。ただし上限に備え今後のスケール方法を検討中。
Q: Access のログイン UI は社外ユーザーが迷うのでは? A: ロゴとカラースキームを自社仕様に変更し、問い合わせ激減。
「派手さはないが“標準化こそ最大のコスト削減”」という言葉が印象的でした。
2. ユニークビジョン ― R2 でエグレス 70 % 削減への挑戦
2‑1 背景
SNS キャンペーンサイトを多数ホスティングする同社。短命なサイトが動画を大量配信し、月額請求の 85 % が転送量という非常事態に。
2‑2 導入プロセス
理想:メディアをすべて R2 に集約しエグレスをゼロに。
現実:当時は「カスタムドメイン設定 API が未実装」。
折衷案:S3 と R2 に二重アップロード。生成スクリプトが R2 への HEAD リクエスト で疎通確認し、成功時のみ R2 パスを埋め込む。
2‑3 成果と学び
同規模案件で エグレス料金を約 70 % 削減。
AWS SDK のまま移行でき、開発工数は最小。
API 不足による手作業は残ったが、「部分導入でも数字は劇的に動く」という実証に。
2‑4 Q&A 抜粋
Q: 運用を変えずにどうメディア先を判定? A: サイト生成時に自動ヘルスチェックを入れ、人手のオペレーションを排除。
3. メルカリ ― “CDN as a Service” が加速させた開発フロー
3‑1 移行前の課題
Fastly 時代はネットワークチームが PR をレビューし、最長 5 日の待機列が発生。マイクロサービス増加に追いつけなくなっていました。
3‑2 Cloudflare + テラフォームモジュール「CDN Kit」
ドメイン・ログ集約・モニタリング設定を 数行の HCL で自動生成。
Workers(アカウントスコープ)の命名規則や管理方法をモジュール内で統一。
3‑3 権限自動付与「cf‑permissions‑sync」
GitHub Actions が PR を検知し、ゾーン単位の ReadOnly 権限を Okta 経由で付与。退職者処理も SSO 連携で自動失効。
3‑4 数字で見る効果
指標 | 移行前 | 移行後 |
---|---|---|
ネットワークチーム関与率 | ほぼ 100 % | 30 % 未満 |
PR マージまでの中央値 | 2〜3 営業日 | 1 日以内 |
問い合わせ内容 | 設定依頼中心 | 設計相談中心へシフト |
3‑5 Q&A 抜粋
Q: 開発者に渡すデフォルト権限は? A: ReadOnly のみ。追加権限はコードに宣言して申請レスで反映。
4. パネル&チャットで深掘りされた論点
「API が先か、運用が先か」 未対応 API の存在は悩ましいが、「理想を描きつつ現実と握る」柔軟さが重要。
料金とレイテンシのトレードオフ R2 や Workers でレイテンシがわずかに悪化するケースも。「利用者の体験と請求額、どちらを重く見るか」は組織ごとの判断。
ゼロトラスト移行の社内教育 Access 導入時は「VPN なしで本当に安全か?」という声が上がったが、監査ログの可視化が安心材料になったとのこと。
5. イベントを通じて見えた共通項
スタートは“小さく” いずれの社も無料枠や部分導入で効果を確認し、社内の理解を得てから拡大している。
仕組み化が最強の節約 標準化・自動化に投資することで、可変費用だけでなく “人の時間” を確実に削る。
運用負荷の推移を数値で語る コスト削減額だけでなく、PR リードタイムや問い合わせ件数など エンジニアリング KPI を併記すると社内説得力が増す。
締めくくり ― “削るだけ”で終わらないエンジニアリング
コスト削減と効率化を両立させる鍵は、「制約を創造性に変える視点」 だと感じました。Cloudflare は豊富な機能で確かにランニングコストを下げられます。しかし三社が示したのは、それ以上に 組織の仕組みや文化をアップデートし、エンジニアが自立して動ける時間を創出すること でした。
言い換えれば、請求額の行に並ぶ数字より “開発者の顔つき” を変えるほうが、長期的には大きなリターンを生むのかもしれません。今回はそのヒントを、現場の実践と失敗談を交えて共有できた貴重な場でした。次に請求書を開くとき、数字の裏側に「仕組み」の有無を思い出していただければ幸いです。
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