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良いコードの道しるべ 変化に強いソフトウェアを作る原則と実践 レポート
はじめに ― “良いコード”という永遠の問いに向き合う夜
2025年6月4日、Forkwell Library #97 「良いコードの道しるべ 変化に強いソフトウェアを作る原則と実践」 が配信されました。 登壇者は、LINEヤフーでAndroidアプリを開発する森篤史さん。発売されたばかりの同名書籍を軸に、 「変更容易性こそが良いコード」 という明確な定義のもと、保守性を高める具体策とその裏側にある哲学を語ってくださいました。
オープニングで司会の川又さんが「ハッシュタグで気づきを共有しよう」と呼びかけると、Xのタイムラインには“#ForkwellLibrary”を付けたメモやイラスト付きツイートが続々。ラストまで参加者数がほとんど減らない熱量の高い90分となりました。
セッションダイジェスト
1. 書籍全体像 ― 名付けからアーキテクチャまで“ゆるやかな階段”
森さんはまず本書の構成を紹介。
| 章 | 主題 | キーワード | | -- | | - | | 1〜3章 | 名前・コメント・関数 | DRY / SRP / 早期リターン | | 4〜6章 | 依存関係とモジュール | DI / DIP / パッケージ設計 | | 7〜8章 | 変更時に注意すべき落とし穴 | コードの“闇鍋化”回避 | | 9〜11章 | アーキテクチャ・テスト・チーム開発 | レイヤード vs. 機能分割 / 自動テスト戦略 / コードレビュー |
「小さな粒度から順に登る“ゆるやかな階段”を意識しました。いきなりアーキテクチャ図を描く前に、まず名前が読みやすいか?そこから始めましょう。」 — 森さん
2. コアメッセージ①「ハンマーの弱点を知ろう」
早期リターンやDIP(依存性逆転の原則)は万能ツールではない。
適用範囲・前提・副作用を理解し、複数の原則を“使い分け”てこそ威力を発揮する。
例として、商品一覧 UI を段階的に改修するコードを提示し、
共通化し過ぎて可読性が落ちる
インターフェースを置く場所で依存方向が変わるという罠をライブリファクタリングで示しました。
3. コアメッセージ②「コードにもプロダクトにも向き合おう」
良い設計はプロダクトの未来像を含めて初めて評価できる。
レイヤー分割だけでなく、機能単位のスライスも検討することで“変更の波”を局所化。
ドメイン知識をモデルに反映しないと、生成AIであろうと意図を汲み取れない。
Q&Aハイライト
質問 | 森さんの回答ポイント |
---|---|
「AIのコード生成で“変更容易性”は前提不要になる?」 | 生成AIはまだ大量文脈の把握とドメイン解像度が十分でなく、人間のレビューと再設計が必須。保守性の原則はむしろ“指示精度”を上げる武器になる。 |
「新人がまず身につけるべき基礎は?」 | 名付け・コメント・小さな関数分割という“読める状態の確保”が最優先。分厚い理論より、読んだ瞬間に理解できるコードを書く経験を積むと良い。 |
「品質とスピードのバランスは?」 | フェーズで重みづけを変える。短期で方向転換が多い時期は“捨てられる設計”を選び、長期保守フェーズに入る前に教育や自動化へ投資する。 |
「未知ドメインで設計に参加するときの注意点」 | まずは機能を丸ごと担当してみて、“よくわからない箇所を言語化”して共有する。質問を恐れない姿勢がドメイン理解の最短経路。 |
参加者メモから見えた“持ち帰りリスト”
「インターフェースは利用者のフォルダに置く」 → パッケージ構成を見直したい
「クリーンアーキテクチャ図に機能レイヤーを重ね、縦×横のマトリクスで考える」 → 次の大規模リファクタで試す
「AIに丸投げする前に用語集とユースケースを先に渡す」 → プロンプトテンプレをチームで共有
森さん流・学びを定着させる三段ロケット
本で“名前”から“アーキテクチャ”まで一気読み
自プロダクトの課題を1ページに書き出す
章末のチェックリストで“次の一歩”を決める
「書籍は“リファレンス”より“伴走コーチ”のつもりで書きました。 読み終えたら、ぜひチームメンバーと“どこを採用し、どこを捨てるか”を話し合ってみてください。」 — 森さん
全体を踏まえた感想 ― 「変化に強い」から「変化を楽しめる」へ
保守性という言葉は、ともすれば“石橋を叩いて渡る慎重さ”の象徴に聞こえます。 けれど森さんの語り口は終始ポジティブでした。
原則はハンマー。叩く対象を見極めれば武器になる
プロダクトの未来像を想像し、設計を“育てるゲーム”に変える
生成AIも仲間にして、人間は意思決定と対話に集中する
“変化に強い”を越えて“変化を楽しめる”エンジニアリングへ。 その第一歩として、今日メモしたチェックリストをさっそくチームで開いてみようと思います。
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