⤴️
SRE/インフラエンジニアの成長を加速させる! ~評価とキャリアのリアルを語る~ レポート
2025年5月22日に開催された「SRE/インフラエンジニアの成長を加速させる! ~評価とキャリアのリアルを語る~」は、SREやインフラエンジニアとして自分の成長やキャリアに不安を感じる人に向け、どのように能力を磨き、高いレベルを目指すのかを深く掘り下げるイベントでした。GMOペパボ株式会社からは複数の登壇者が集まり、事業部CTOや技術責任者、そして現場で活躍するSREエンジニアという多彩な視点から講演やディスカッションが展開されました。特に「客観的な評価がしづらい」と言われるSREやインフラエンジニアの領域において、評価制度をどう活用し、自分のキャリアをどう切り拓くかが具体的に語られたのが印象的です。
オープニング:SREの評価とキャリアの意義
司会を務めたForkwellの高塚さんより、本イベントの趣旨として「SRE/インフラエンジニアは業務の特性上、成果が見えにくい。だからこそ客観的な評価や制度をテコに成長とキャリアを進めることが大切」と紹介されました。また、登壇者の多くはペパボの評価制度を例に、どのように専門性を高め、組織や事業への貢献を評価してもらうのかを語っていきました。
講演1:「SRE/インフラエンジニアの市場価値とキャリアパス」
登壇者: 久米拓馬 氏(GMOペパボ ロリポップ・ムームードメイン事業部/事業部CTO)
1つ目の講演では、久米さんが「SRE/インフラエンジニアに求められる3つのキーワード」を軸に解説しました。
SRE/インフラエンジニアに必要な視点
液(幅広い技術を横断し、触職や専門領域の壁を超える) インフラだけでなくアプリケーションにも踏み込むことで、組織の抱える問題をより広く俯瞰し、根本的な解決策が見えやすくなる。
進化(特定領域で高度な専門性を築く) 例として、リナックスカーネルやネットワークなど特化した分野を極めることで、組織全体の技術水準を引き上げるペースメーカーになる。
創奏(ビジネスや組織のコンテクストを理解し、課題を発見・解決する) ただ技術的に優れているだけでなく、事業ドメインの背景や上司の悩みを知り、的確な課題を拾い解決することで大きなインパクトをもたらす。
ペパボにおける評価・職位制度
ペパボでは、プロフェッショナルとマネジメントの2系統のキャリアパスが存在し、エンジニアが専門性を深める道を選んでも上位等級で高い評価を得られる仕組みがあります。その等級制度は1~6投級のように分かれており、特に4投級(シニアエンジニア)への昇格には自らが“もうそのレベルで働いている”ことを立候補し、周囲を説得するプロセスが必要です。こうした評価制度を活用し、自己評価の訓練を積むことで、市場価値と専門性を高められる点が強調されました。
講演2:「SREの技術力を評価させる技術- 評価制度をテコに実力を飛躍させる」
登壇者: 染矢健人 氏(GMOペパボ 技術部データ基盤チーム シニアエンジニア)
染矢さんは「評価される」視点からSREのキャリアを語りました。評価立候補制度では、自分がすでに上位等級の働きをしていると証明しなければならず、そこに至る過程で膨大なテキストを書いて自己を振り返り、言語化する経験が、結果としてスキルアップや自信につながるといいます。
評価制度を「テコ」に使う
情報の内面化 会社や事業が求める価値観を自らに取り込み、それを当たり前として行動すれば、良いチャンスが来たときに積極的に挑戦できる。
評価ドキュメントのオープン化 ペパボではシニア以上の評価資料が全エンジニアに公開され、成功例・失敗例を誰もが参照できることでロールモデルが見つけやすい。
社内外で必要とされる課題に飛び込む OSSのバグに対して果敢にコントリビュートする、アラート対応やパフォーマンス改善に積極的に参加するなど、“自分が手を動かせる範囲”を増やして価値を証明する。
こうした姿勢が、自身の技術力と市場価値の向上をもたらし、報酬の面でも早い段階でシニアエンジニアへ登用される結果へとつながったとのことです。
視聴者Q&Aピックアップ
登壇者3名に加え、GMOペパボ技術責任者の高橋健一(通称 けんちゃん)さんを交えたQ&Aセッションから、印象的だったものを抜粋します。
Q1. 「3つのキーワード(液・進化・創奏)のうち、特に壁を超えづらい分野はどこですか?」
A1 (久米さん) 「私の場合、ビジネスドメインに飛び込む“創奏”が最初は難しかったです。マーケティング会議に出たり、事業部の施策を理解するには根回しや時間も要りますが、そこを乗り越えるとエンジニアとして大きなインパクトが出せるようになります。」
Q2. 「キャリアアップのため、評価制度の立候補プロセスが大変そうですが、やるメリットはありますか?」
A2 (染矢さん) 「非常に大変ですが、過去の自分の働きをどのように客観的に価値づけるか、理路整然と説明する訓練になります。それが外部発表にも生きますし、“自分はここまでできる”という自信が得られるのが大きなメリットです。」
Q3. 「SREが企業を選ぶ際、どんなポイントで成長環境を見極めればいいですか?」
A3 (高橋さん) 「大きいのは『裁量権』や『情報へのアクセス』の有無です。SREは横断的にシステムを見て判断するので、会社がどれだけ透明に情報を共有してくれるかで仕事の幅や深さが変わってきます。また、クレームを恐れて何もさせてもらえない環境よりは、チャレンジしやすい環境のほうが良いですね。」
Q4. 「AI登場でSREの仕事はどう変わりますか?」
A4 (染矢さん) 「生成系AIやエージェントが増えれば、オペレーションが爆発的に並列化されるかもしれません。SREが担保するべき信頼性レベルを、どうAIに制御させるか。ガードレールの設計やモニタリングが、一段と複雑かつ重要になりそうです。」
GMOペパボからのメッセージ
GMOペパボでは、SRE含め幅広いエンジニアを積極的に採用中とのこと。ゲストの高橋さん曰く、「AIやクラウドがさらに進化する時代に、ユーザーの“もっとおもしろくできる”を支える事業のプラットフォームを一緒に創ってほしい」とのこと。興味のある方はぜひカジュアルに話を聞きに行ってみてはいかがでしょうか。
全体を踏まえた感想 ―「評価が未来を引き寄せる」
SREやインフラエンジニアの世界では、「裏方ゆえにスポットライトが当たりにくい」という声が昔から根強くあります。しかし本イベントを通じて、評価制度をあえて利用し、自己を言語化し、外部発表やロールモデルを巻き込むことで、自ら高いレベルへ歩んでいける土台が見えてきました。たしかに、評価は時として「書類づくりがつらい」「自分を売り込むなんて苦手」と思いがちです。それでも、これをテコにしてキャリアのハードルを越えていく事例は多く、登壇者の話からも熱量が伝わってきました。
また、ペパボのように“評価過程のオープン化”や“ロールモデルの共有”を徹底すればこそ、SREやインフラエンジニアが自分の成長と組織の発展を同時に叶えやすいのだと感じます。さらに、AIやクラウド技術が進む中でSREが求められる領域はむしろ広がりつつあり、いわゆる「裏方の仕事」も大きな価値へ直結する時代になりそうです。
「自分がすでに上位の働きをしているのなら、堂々と評価を求めよう」「分野に師匠がいなければ、外から見つけて持ち込み、社内に広めよう」という一歩踏み出す姿勢こそ、SRE/インフラエンジニアに限らず、多くのエンジニアが今後のキャリアを形作っていく合言葉になるかもしれません。
Yardでは、AI・テック領域に特化したスポットコンサル サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポットコンサルをお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。
Read next
Loading recommendations...