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Education-JAWS #1 〜Hello, High School Innovaters!〜 レポート
2025年1月11日に開催された「Education-JAWS #1」は、中学・高校・高専をテーマにした、まさに“ハローハイスクールイノベーター!”と呼ぶにふさわしい会となりました。会場(オンライン)には、現役の高校生を含む多様な登壇者が集い、それぞれの学びや実践が存分に語られました。ここでは当日の様子を振り返り、特に印象的だった発表内容や質疑応答でのやりとりをご紹介します。
1. オープニング:Education-JAWSとは
まずは運営から、「Education-JAWS」という専門支部の成り立ちとビジョンが説明されました。Education-JAWSは、その名の通り教育 × AWSを扱うコミュニティであり、
教育現場のクラウド利用を増やす
学生に対して外部発表の場を与える
クラウドの教育手法を発展させる
といった目標を掲げているとのことです。
通常のJAWS-UG(AWSユーザーグループ)とは異なり、多くの学生が参加・登壇できるように独自のルールやマナーを整備しているのが大きな特徴だそうです。例えば、イベント全体で未成年者への飲酒提供を禁止したり、学生の学業負担に配慮したスケジュールを組むなど、運営上のきめ細やかな配慮がなされています。
昨年度の活動概要
第0回では大学生を中心に開催
今回(第1回) は、高校生によるAWSの活用を主テーマに設定
これまでにも様々な学年・領域の発表があり、今後も幅広い世代で教育に関わるクラウド利用事例を共有していくとのこと。第2回以降も楽しみに待ちたいところです。
2. 高校生によるAWS活用事例 —— 西大和学園 技術統括局
この日の目玉ともいえるセッションは、奈良県の西大和学園中学校・高等学校の現役生たちによる「文化祭でのAWS利用事例」の発表です。西大和学園の技術統括局は、高校生自身が主体的に学内行事の技術面をサポートする組織。そこに所属する3名の高校生が、実際にどのようにAWSを使って文化祭を盛り上げたのか、その実践例を語ってくれました。
組織とサイト概要
技術統括局
音響、開発、動画編集、撮影、3D CGなどの部署に分かれ、学校行事を支援
「自分たちで自分たちの文化祭を作る」という強い意志のもと、高校生がほぼすべての設計・運用を担当
文化祭公式ホームページ
AWSとは直接関わらない部分も多いが、HTML・PHPを手書きしつつ展示情報の検索機能などを実装
外部一般公開を想定し、文化祭へのワクワクを高める工夫がポイント
ライブ配信&ストリーミング配信サイト
学校独自のIP制限やアカウント制限を組み合わせ、ライブ映像とアーカイブ動画を分けて公開
Amazon IVSやS3、Amazon SESなどを活用。メール認証でアカウント登録を促す仕組みも導入
動画配信サイトの構成
AWSアカウント管理
学校の予算申請と合わせてクラウド利用を計画
数名のメンバーでアカウントを厳格に管理し、責任者が全体を統括
MediaConvert + S3 + CloudFront
MP4形式を自動でHLS形式に変換し、クラウドフロント経由で視聴可能に
ただし自動変換がエラーで動かず、今年は手動のコンバートに切り替え。来年以降の課題と位置づけ
認証・メール送信
Amazon SES
で仮パスワード発行メールを送信aws-sdk-php
を使った実装に戸惑いつつも乗り越えた
反省点と今後の展望
AWSサービスへの勉強不足
申請に時間がかかる、SDKに苦戦するなど、事前準備の甘さを痛感
先輩頼りになりすぎ
大人や先輩の助けは大きいが、もう少し自分たちだけでトライすべきだったと反省
大人数コラボの難しさ
例年とは違い複数のサイトを統合管理したため、情報共有が追いつかない場面も
今後は自動変換の復活や、さらに複雑な機能の追加などを見据え、「AWSをもっと勉強して広げたい!」と力強い意気込みで締めくくりました。
3. AWS環境に挑戦する中高校生たち —— 三好 智之 氏 (AWS)
続いて、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの三好氏からは、全国の中高生がどんなふうにAWS環境に触れているかという取り組み事例の紹介がありました。IoTデバイスやAWS IoT Coreを活用した授業、VRや機械学習の実践など、あちこちの学校が試行錯誤している事例が並ぶ様子は「2〜3年前より確実に広がっている」という実感を持つ、とのこと。
さらに三好氏は、Edtechというと企業サイドの視点が多く語られるが、実際にはモチベーションを持った生徒たちが行事や課題解決のためにクラウドを試してみるといった「草の根」事例も見逃せないと強調。西大和学園のような文化祭活用はその好例だと称賛していました。
4. AWSの支援プログラムを活用しよう —— 澤 扶美 氏 (AWS)
最後の登壇は、同じくAWSの澤氏。企業やNPO向けの各種プログラムを統括する背景をもとに、学生がクラウド利用を“本格化”する際、どんな支援制度を使うべきかを整理してくれました。
AWS Educate : 16歳以上なら無償で学習教材を利用可
AWS Academy : 学校単位で契約し、授業カリキュラムとしてクラウドを導入可
(参考)AWSエデュケーション エクイティ イニシアチブ : 教育の機会格差を是正する取り組みを支援するプログラム。日本ではまだ導入前段階
また、支援を受けたいなら既存プログラムの枠内で検討をとアドバイス。どうしても枠外の支援を要望する場合は、学校など組織単位で取り組み、AWSやコミュニティに向け「こんなプロジェクトで、これくらい長期的に意義があります」という説明が必要だと強調していました。
5. 全体を踏まえた感想:飛躍のきっかけを“今”掴むために
「教育×クラウド」というテーマは、近年ますます注目されつつも、まだ十分に情報が共有されていない領域といえます。今回の勉強会では、現役高校生のまばゆい実践力と、AWSが提供する各種プログラムの双方が一挙に語られ、学びと刺激が多い時間でした。
西大和学園の事例からは、「たった数人の高校生でも学校行事のシステムをAWS上で本格稼働できる」という大きな可能性が見えました。計画・実装・運用・改善を自分たちで回していく様子は、学校行事を超えたプロジェクト運営そのもの。これこそまさに「自分たちの文化祭を自分たちで創る」醍醐味でしょう。
一方で、AWSの三好氏や澤氏が指摘するように、やはり予算やアカウント管理、長期的な継承など大人のサポートが必要な部分も多いのが現状です。「単に良いことだからやればいい」という抽象論ではなく、AWSを含む企業・コミュニティと連携し、具体的な仕組みや合意形成を作ることが今後の鍵になりそうです。
それでも、高校生が機能豊富なクラウドを巧みに使いこなしながらイベントを盛り上げる姿は、周囲の大人たちにとっても大きなインスピレーションでした。新しいアイデアを形にできるチャンスは、クラウドの時代においてさらに増えていくでしょう。少しでも興味を持ったなら、一歩踏み出す価値は十分にあります。
次なる一歩を踏み出そう
高校時代は長い人生から見れば短い期間ですが、その数年で得られる経験は想像以上に大きな糧となります。クラウドに挑戦する高校生たちの発表は、その証明と言っても過言ではありません。大人側のDevRelコミュニティも、彼らの情熱やアイデアに学び、後押しできる場を増やしていくべき時期を迎えています。
Education-JAWSでは、今後も中学・高校・高専など幅広いステージを扱いながら、「クラウドで教育をもっと面白くする」取り組みを共有していくとのこと。次回以降のイベントにも期待して、“今”やってみたいこと、実現したいことをぜひ発信してみましょう。あなたの挑戦が、新たなイノベーションの種になるかもしれません。
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