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Education-JAWS #3 〜教育現場に、AWSのチカラを〜 レポート
Education-JAWSが満を持して開催したエドテック(Edtech)回。普段は学校教育や社会人学習、大学・大学院など、広い意味の「教育」に関わるテーマで進めている本勉強会ですが、今回は特に「Edtech」を大きなキーワードに掲げての第3回となりました。
イベントタイトルにあるように「教育現場にAWSのチカラを」という狙いのもと、複数の登壇者が様々な視点や実践事例を共有。新しいAIエージェントやクラウドネイティブな教育システム構成、さらには従来の学習プロセスとの比較など、バラエティに富んだ内容になりました。
本稿では、当日の流れや各発表のエッセンス、質疑応答で盛り上がったポイントなどをまとめます。「Edtechの言葉は聞いたことがあるけれど、どんな取り組みが実際に進んでいるかはよく分からない」という方こそ、一読いただければ新しい発見がきっとあるはずです。
1. イベント概要とオープニング
Education-JAWSでは、これまで第0回〜第2回を通して、大学・中高・茨城支部とのコラボなど多様な企画を展開してきました。今回は「Edtech特集」という初の試みを実施。普段よりも技術的な話題と、教育の社会的意義を掛け合わせた発表が多い回になりました。
オープニングでは、運営から「学習の場としてのEducation-JAWS」の理念や、SNS上での盛り上げ方(ハッシュタグ#edujaws #jawsug
)の案内などが手短に共有され、早速登壇者たちのセッションへと移行。オンライン開催にもかかわらず、チャット欄やSNSでのコメントが活発で、運営も「どんどんツイートしてください!」と呼びかけ、軽快なスタートとなりました。
2. 昨年度振り返り:Education-JAWSはどう歩んできたか
オープニングに続き、運営の方から昨年度(2024年11月〜2025年3月頃)の活動報告がありました。学生登壇を積極的に募集し、大学生や高校生の発表機会を設けたことや、「若い世代が楽しく学べる場」を目指すため、独自のルールとマナーを敷いて運営してきたとのこと。その結果、イベント参加者の年齢層も広がり、現場での学びや気付きがコミュニティを通じて共有されているそうです。
さらに、今後の展望として「若い世代にAWSをもっと触れてもらう」「研究領域・大学院レベルの教育における活用」など、新たな方向性を考えているとのこと。駆け出しの支部ながらも少しずつ実績を積み、エデュケーションとAWSの融合を広げていきたいとの意気込みが伺えました。
3. LTセッション:Edtech入門から、JAWS-UGの可能性まで
続いて、3名によるLT枠が展開されました。ここでは、特に印象深かった2つのLTを振り返ります。
3.1 Edtechって何だ?完全ド素人がEdtechについて学んだことを報告する(山本直弥 氏)
発表概要
「Edtech」という言葉自体を知らなかった立場から、調べ始めた結果を共有。
Edtechの定義やメリット、課題点(学習者のやる気や学習プロセス可視化の難しさなど)をまとめた。
AIを使った教材自動生成や、学習効率化の事例に興味を持ったが、現場課題としては「人によるサポートがまだ不可欠」という点を再確認。
ポイント
もともとEdtechとは「教育(Education)」×「テクノロジー(Technology)」の造語。
AWSにもEdtech事例が多数あり、「大量の教材を一気に生成」「授業動画の文字起こし」など具体的な活用例を紹介。
一方で、学習者ごとのモチベーションやフォロー体制がシステムだけでは完結しないことが現場の課題として浮き彫りになっている。
3.2 JAWS-UGこそ最大のEdtechではないか?〜イチ支部運営から見たJAWS-UG〜(奥田雅基 氏)
発表概要
Edtechの定義をざっくり解説しつつ、日本国内でのEdtech施策(ギガスクール構想など)をおさらい。
その上で、「そもそもJAWS-UGはAWSエンジニア同士が学び合い、アウトプットし合う教育コミュニティ的な性質があるのでは」というユニークな視点を提示。
アウトプットのサイクル、ノウハウ共有、一人ひとりに合わせた学習やサポートが、JAWS-UGのコアにも通じているとまとめた。
ポイント
教育をアップデートするためには、ただツールを揃えるだけでなく、受講者への使い方提示や強制力(やる気をどう下支えするか)などの3要素が欠かせない。
これらはコミュニティ運営にも通じ、「ツールの活用事例を共有する」「LTというアウトプット機会を強制的につくる」ことで自然に学習が回る。
つまり「JAWS-UG=ある種のEdtechコミュニティ」という面白い示唆。
(chizuru 氏のLT「教育現場を支えるクラウド技術」も同じ流れで行われましたが、文字起こしが今回得られず未収録。教育組織でAWSを活用する際のリアルなトピックが語られたとのこと。)
4. 豪華招待セッション:Edtech最前線のリアル
LT後は、2名のスペシャルゲストによるセッション。すでにエドテック界の最前線でシステムを作り上げている実例や、日本の教育を変えようという高い視座での情報が盛りだくさんでした。
4.1 日本の教育の未来を考える -テクノロジーは教育をどのように変えるのか-(前田和樹 氏)
発表概要
「頭プラス」という学習システムを提供する会社のVPoEとして、教育×AIの最前線を紹介。
150年変わらない日本の学校教育構造(明治期の学生制度起点)に、ギガスクール構想やソサエティ5.0などで変化の兆し。
生成系AIの爆発的な進化によって、従来とは段違いの効率で教材生成や自動添削を可能にする時代が到来。
同社が提供するアダプティブラーニングシステムやAIステップ解説の取り組みから、「1人1人に最適な学習体験」を実践し始めている。
ポイント
大学入試に「学習ログ」自体を活用させるモデルなど、学びと評価のあり方を変える試みが進行中。
LLMを使い、学習者の質問や理解度を細かく判定しつつ解説生成する仕組みは、既にサービスとして提供開始している。
社会や産業構造が「AI時代」に突入する今、教育分野もまさに変革期にあるという熱いメッセージ。
4.2 とあるEdtechベンチャーのシステム構成こだわりN選(k.goto 氏)
発表概要
Edtechスタートアップの株式会社メイツにおける具体的なAWS活用事例を、7つのトピックに分けて紹介。
1つ目はElastiCache RedisでPub/Subを実現し、複数ECSタスク間のリアルタイム通信を行う仕組み。
コグニトのラムダトリガーを活用した認証フローのカスタマイズや、独自の採点API、CDKによる開発を支えるテクニックなど、かなり細かい技術ノウハウが詰め込まれた。
ポイント
教育システムには複雑な要件(数学の因数分解答え判定や自由作文の添削など)が多く、独自API構築が必須。
SESとSQSなどを組み合わせたメール送信のサーバーレス化や、CDKの共有モジュール化などによる効率化が印象的。
話題のCDK Toolkit新機能にも早期から挑戦し、プレビュー版を業務で活用するなど大胆な取り組み姿勢が光る。
5. 全体を踏まえた感想:EdtechとAWSが描く未来
教育は「なかなか変わらない」と言われがちですが、今回のイベントを通じて感じられたのは、既に現場には変化が進んでいるという事実です。アダプティブラーニングや自動添削、リアルタイム学習モニタリングなど、数年前までは「もしできれば便利だよね」といったレベルの構想が、今や本番で運用され、さらに生成系AIの登場で一気に進化しようとしています。
一方で、「学習者のやる気」「先生による適切なコーチング」「技術を使いこなす素養」という、人間ならではのサポートがますます重要になるという意見が多数見られました。Edtechは、単にAIやAWSを導入すればOKではなく、どう人が学ぶ本質を捉えて、そこに最適な仕組みをテクノロジーで提供するかが鍵なのです。
Education-JAWSが描くのは、まさしく「若い世代もエンジニアや教育者も、AWSを軸に共に学ぶ環境」。LTやセッションで共有された先端事例は、どれもAWSの豊富なサービスをベースに生徒・教師・保護者の現場課題を真正面から解こうとしていました。参加者からも「このような仕組みがあるなら、自分の学習や教育現場でも取り入れたい」という声が多く寄せられたのが印象的です。
イベントの締めくくりでは、運営陣より「今年度もEdtechや研究系など、教育とAWSにまつわる新企画を用意していきたい」との方針が示されました。まだまだ道半ばのEducation-JAWSですが、確実に次のステップへと進もうとしています。「クラウドで教育をアップデートする」挑戦を見守りつつ、これからの世代に広がる学習体験や、そこで育まれるEdtechコミュニティがどんな成果を生むのか、非常に楽しみです。
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