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JAWS-UG東京 ランチタイムLT会 #23 レポート
JAWS-UG東京が毎月開催しているランチタイムLT会も、ついに第23回を迎えました。今回もAWSにまつわるテーマで多種多様なLT(ライトニングトーク)が披露され、わずか1時間ほどの短い間に、濃密な知見が詰まった魅力的な会になりました。
本レポートでは、当日の流れと登壇内容、そして登壇者と運営メンバーのやりとりやQ&Aのポイントを振り返ります。エンジニアの皆さんにぜひ活かしていただきたいヒントが詰まっているはずです。
1. イベント概要とオープニング
ランチタイムLT会の特徴
時間: お昼休みに1時間程度
形式: オンラインでのLT(ライトニングトーク)
テーマ: AWS関連であれば何でもOK
進行: 各LTスピーカーが約10分ずつ発表し、合間に短いQ&A・コメント紹介
JAWS-UG東京では、毎月このランチタイムLT会を開催しており、気軽にAWSネタをアウトプット・インプットできる場として定着しています。運営メンバーが各発表をサポートしながら進行するスタイルで、今回も多彩なジャンルの話が交わされました。
オープニング
当日は運営メンバーの皆さんが「リモートでもお昼を楽しみながら気軽に聞いてください」と呼びかけながらスタート。恒例の「AWSのお知らせやハッシュタグ共有」などを軽く済ませ、さっそく4名の登壇者へバトンタッチされました。発表順は以下のとおりです。
ふくち 氏(NECソリューションイノベータ)
坂本 安紀典 氏(東京エレクトロンデバイス)
髙野 朱理 氏(APコミュニケーションズ)
SimSta 氏(KDDIアジャイル開発センター)
2. LTセッション一覧と内容ハイライト
2.1 Ambient Agent on AWS!(ふくち 氏)
発表内容概要
「アンビエントエージェント」という考え方 LLM(大規模言語モデル)のチャットボットなどは通常、ユーザからの問い合わせがトリガーになるが、アンビエントエージェントはイベント駆動・スケジュール駆動によって自動実行される。
ユースケース例:教師向け評価文書の自動生成 1人の生徒につき数百文字の評価文を年に複数回作成するなど、大量文章が必要な状況を想定。あらかじめエージェントが裏で生成してくれれば、教師は文章を微修正するだけで済む。
AWS上で実装 イベントブリッジを起点にラムダを呼び出し、裏でBedrockエージェントが動いてダイナモDBに評価データを格納 → ユーザはGUIで確認・編集するフローを紹介。
考慮ポイント
エラーハンドリング(裏で動くため、失敗時が分かりにくい)
1回の呼び出し回数をどう制御するか(スロットル対策)
データ入力フロー(そもそもの入力負荷をどう減らすか)
ポイント
アンビエントエージェントという新しい発想は、すでにインフラ活用や生成AI活用が一般化した今こそ現実味が増していると感じられました。裏で勝手に動いてくれて、結果だけ受け取るスタイルは、特に反復的作業が多い現場で効果を発揮しそうです。
2.2 (なるべく)無料で始めるTerraformのインフラ構築体験(坂本 安紀典 氏)
発表内容概要
Terraform使用の選択肢 Terraform OSS版やGitHub Actionsなどでの構築が多いが、HashiCorpのクラウドサービス「HCP Terraform」を使うと、CI/CDをコード管理せずに済む。
HCP Terraformの利点
ステートファイルの管理不要(クラウド側で完結)
変数や認証情報をGUIで設定可能
無償枠のフリープランがあるので個人検証しやすい
実装フロー
無償プランのHCP TerraformアカウントとGitHubフリープランを準備
GUI上でワークスペースを設定して、ソースリポジトリや環境変数を紐づけ
プッシュをトリガーにビルド・デプロイ実行 → 過去の履歴もすべてGUIで確認
ポイント
Terraformを用いる際の「ステートファイル管理」や「CI/CD設定」の負荷を大きく下げる選択肢として、HCP Terraformのフリープランが有望とのこと。まだ知名度が低いものの、個人の検証などでは導入ハードルがぐっと下がるというのが印象的でした。
2.3 CDK Pipelinesで複数アカウントにCDKリソースを一括デプロイしてみた(髙野 朱理 氏)
発表内容概要
マルチアカウントのデプロイ問題 複数環境・複数アカウントに共通リソースをCDKで管理していると、安全にまとめてデプロイしたいケースが増える。
CDK Pipelinesの概要
ソースコード変更 → ビルド → テスト → 本番リソース展開を一連自動化
複数アカウントやリージョンに対して、順序を踏んでデプロイ実行可能
インフラのコード定義に加えて、パイプライン自体もCDKでコード管理できる
実装手順イメージ
GitHubリポジトリやコードコネクションで接続設定
パイプラインを作成するアカウントと、クロスアカウント先のブートストラップ設定
CDKにパラメータ(アカウント情報など)を渡し、各ステージで順にデプロイ
ポイント
同じマルチアカウント管理でも、CDK Pipelinesによりパイプラインごとコード化できるメリットが大きい。手順をシンプル化しながら安全に段階的デプロイを行える点は、今後の運用負荷軽減に寄与しそうです。
2.4 AWSアップデートまとめ「#しむそく」をFun Done Learnで振り返る(SimSta 氏)
発表内容概要
毎日のAWSアップデートまとめ「#しむそく」 1年8ヶ月間、ほぼ休まずアップデート情報を個人ブログやTwitterにまとめ続けた。その振り返りとして、スクラムのレトロスペクティブ手法「Fun Done Learn(ファンダンラーン)」を活用。
振り返りの結果
楽しかった面(Fun):普段触れないサービスを知り深い知識を得られた。認定試験にも役立った。
大変だった面(Done, Learn):毎週10時間以上かけるのは厳しく、配信の視聴者数を伸ばすのも難しい。
今後の展望 accumulated知識やコンテンツをどう再利用し、より少ない労力で効果的にアウトプットできるか模索中。デモ交えた配信など新スタイルを検討している。
ポイント
AWSアップデートを追いかけること自体はスキル向上に大きく寄与するが、継続が非常に大変な側面もあることを再認識できました。また、効果的なレトロスペクティブを行うことで、楽しさ・次のアクションを組み合わせながらモチベーションを持続させる工夫が重要だと感じられました。
3. 主なQ&Aと議論のポイント
今回のランチタイムLT会では、質疑応答も短時間ながらいくつか交わされました。主な話題は次のとおりです。
HCP Terraformがあまり使われていない理由?
坂本氏の話題に関連し、「なぜまだHCP Terraformの導入事例が少ないのか?」という疑問が挙がった。
坂本氏いわく「これまで契約がやや複雑だったが、4月以降クレジットカード決済で直契約ができるようになった。無償でも十分試せるので、知名度の問題では」という回答。
CDK Pipelinesによるマルチアカウント展開
髙野氏の発表後、マルチアカウント構成でのデプロイと評価の手順について簡単な質問があり、パイプラインをどのように承認フローへ組み込むかなどの議論がなされた。
基本的にCDK Pipelinesはコードによる承認設定も可能であり、実際に開発フローに組み込むことで運用を効率化できるとされた。
AWSアップデート配信の運用継続
SimSta氏のような頻度でアップデートをまとめるコツは?との質問が軽く触れられ、SimSta氏は「やはりモチベーションを維持するため、自分に合う振り返りや楽しめる仕組みが大事」と回答。
大変な期間も多いが、自分が成長する貴重な機会だと実感しているとのこと。
4. イベントを終えて(全体の感想)
AWSを巡る多彩なアプローチが、一気に学べる1時間 今回は4名の発表いずれも、AWS利用の実践知や新しい考え方・サービスに焦点が当たり、視聴者にとって耳寄りな情報が目白押しでした。
自動生成を裏で支えるエージェント 人間が待たずに済む仕組みや考慮点を具体的に学べたので、日々の業務フロー効率化の種が見つかりそうです。
AWSリソース展開・管理手法の最適解探し HCP TerraformやCDK Pipelines、どれを選ぶかは自社・個人の状況次第。でも、それぞれの特徴を把握しておくと、複雑なマルチアカウントでも苦労が軽減されるはず。
コミュニティでアップデートを追う意義 SimSta氏が示したように、継続的なAWSアップデートまとめは学びも多いが負担も大きい。「どこまで深く追うか」「どう再利用するか」を見直しながら上手に取り組めば、スキルやアウトプットの質を高めることにつながりそうです。
毎月開催のランチタイムLT会は、限られた時間でも中身がぎっしり詰まるのが特徴。今回も例外なくバラエティに富んだ内容でした。次回(6月)は2周年を迎えるとのこと。これまで以上にAWSファンの輪が広がることが期待されます。
もし興味を持たれた方は、ぜひLT登壇や視聴で参加し、AWSに関する知見や自身の経験をシェアしてみてはいかがでしょうか。みんなで気軽に盛り上がるランチタイムの1時間が、思わぬ学びとアイデアのきっかけになるかもしれません。
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