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「AI時代の企業が求める開発速度って? VPoEばんくし氏に聞く今エンジニアに必要なAI活用の基準とは」イベントレポート
2025年5月13日、オンラインにて「AI時代の企業が求める開発速度って? VPoEばんくし氏に聞く今エンジニアに必要なAI活用の基準とは」というイベントが開催されました。M3株式会社 VPoEとしてエンジニア組織のマネジメントを担うばんくし王(河合 俊典)氏が登壇し、組織としてのAI活用のあり方や、AIコーディングが当たり前になりつつある今、エンジニアがどう成長し、どう価値を発揮していくのかを語ってくださいました。本レポートでは、その内容を余すことなくお伝えします。
1. オープニングとイベント趣旨
本イベントでは、急速に進化するAIエージェントやコーディング支援ツールがエンジニア組織にもたらす影響をテーマに取り上げました。個人レベルでAIコーディングツールを使うだけでなく、組織全体でどう導入し、どう評価・管理すればよいのか。モデレーターの大西氏が、ばんくし王氏に対し具体的な疑問を投げかけることで、今後の企業・チームが備えるべき姿を議論する場となりました。
2. LT:LLMが引き起こした新たな潮流
ばんくし氏はまず、LLM(大規模言語モデル)の研究が「アカデミック中心」から「インダストリー主導」へと大きく転換した事実を紹介しました。 2022年末〜2023年にかけて、一気にLLM分野の論文数が増加し、企業投資も活発化したことで、プロダクションレベルのサービスやツールが次々に登場しているとのことです。
エンジニア向けAIコーディングツールの現状
GitHub Copilot 開発時の小さなコード補完に強みがあり、30%前後の生産性向上が見込める。M3でも利用者が多い。
Cursor / Clineなど まとめてコードを書き換える「バルク処理」に強いが、レビューやQAへの負荷が増す懸念もある。
JetBrains AI / Devin 等 IDE連携でバイブコーディングを試せるツール。M3内でも新規プロジェクトで導入を進める事例が出てきている。
総じて「個人エンジニアが使いこなし始めれば、30%前後の作業短縮は見込める」とばんくし氏は述べました。一方で、コード作成は容易化しても設計・運用・ドメイン知識を要する部分は依然人間が担うため、従来の評価基準やチームの進め方に完全置き換えが起きるわけではないとしています。
3. Q&A・ディスカッション
LT後は、モデレーターの大西氏が進行し、視聴者からの質問や現場の具体的な悩みを交えながら、以下の論点が深掘りされました。
3.1 AI活用をどこまで強制すべきか、どこまで自由度を与えるか?
M3でのスタンス ばんくし氏によれば、「チームや個人に対し“このAIツールを使いなさい”と明示的に強制はしていない」。むしろ、カルチャーとして新技術を楽しむ風土があるため、各自が自然に導入しているというのが実態だそうです。
守るべきルール 一方で個人情報を含むデータがAIに誤って送信されるリスクなどは存在するため、最低限「顧客データを扱う場合はリーダー確認を挟む」といったガイドラインを設けているとのことです。
3.2 チームへの導入は何から始めるべきか?
個人ベースで体感するツール Copilotは学生や個人で無料枠があり、まず導入ハードルが低い。カーソルやClineは大きいコード改変に強みがある。チーム単位では「ワークフロー自動化系のリファイなど」を活用して、業務全体をAIに任せる感覚を掴むのもよい。
泥臭いサポートが必要 新技術に消極的な人には「まずは少しでもAIの利点を実感してもらう」サポートが大事だと語りました。試行フェーズを設けてフォローしないと、導入は進みにくいそうです。
3.3 EMやマネージャーは評価制度を見直すべきか?
結論:アウトプット重視は変わらない 「AIを使うかどうか」を評価基準にするのではなく、短期間でどれほどのインパクトを出せたかで見るべきという見解です。
新卒・採用面への影響 今後、コーディングテストをAIで解いてくる応募者が増えるため、テスト方法や面接質問の変更が必須になるとの指摘がありました。AIフレンドリーな形式を整えつつ、最終的には「成果と判断力」を見るアプローチが重要だということです。
3.4 プロジェクト管理やプロダクトマネジメントはどう変わるのか?
ベロシティ向上への適応 AIのおかげで機能実装の速度が数倍になるケースがあるため、プロダクトマネージャー側も高速な試行が求められます。
本質的には質と速度の両立 「短いスプリントで大量の成果を出し、その中から優れた機能だけを選ぶ」という形になりがちですが、行き過ぎるとエンジニアのモチベーションを損なう恐れがあるとのこと。結局は従来のアジャイル手法を生かしつつ、スピードと品質のバランスをどう取るかがカギとまとめられました。
4. 全体を踏まえた感想「加速するAI開発時代を楽しむ」
イベントを通じて明確になったのは、「コードを書く」行為がAIによって大幅に高速化している今、エンジニア・マネージャー双方が改めて役割を再定義する必要があるということです。 ばんくし氏の言葉から、組織としては下記のようなポイントが浮かび上がりました。
強制より自発的カルチャー AIツールの利用を義務化するのではなく、新しい技術を楽しむ文化があれば自ずと普及していく。
泥臭いサポート 全員が最初からノリノリなわけではない。導入初期はフォロー体制やガイドラインが重要。
評価基準は変えすぎない AIを使う・使わない自体を評価するのではなく、成果のインパクトで見る。AIによる爆速コーディングが可能だからこそ、最終的な設計やドメイン理解にエンジニアの価値が残る。
プロジェクト管理は右上(速度と品質)の狙い方を再考 動くものを高速に出して評価する流れは強まるが、ただ量を増やすだけでは逆効果。質と速度の最適解を見つける取り組みがより重要。
「AI開発が当たり前」という時代はすでに始まりつつあり、個人も企業もその変化を拒まず享受した方が得策です。とはいえ、ただツールを導入すればよいわけではなく、マネジメントや評価手法もアップデートしながら、スピードと本質的価値の両方を追求していく――。 今回の議論からは、そんな未来像が鮮明に見えてきました。変化を恐れるより楽しむ姿勢こそ、AIと共生するエンジニア組織にとっての最大のカギかもしれません。
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