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「伝わるコードレビュー 開発チームの生産性を高める『上手な伝え方』の教科書 - FL#93」イベントレポート
開発現場でのコードレビューは欠かせないプロセスですが、「どう伝えるか」「どう受け取るか」によってチームの雰囲気も生産性も驚くほど変わります。2025年5月15日に開催された「Forkwell Library #93」では、新刊『伝わるコードレビュー 開発チームの生産性を高める「上手な伝え方」の教科書』の著者3名、そして監修者1名を招き、レビュー文化をより良くするコミュニケーション術を語っていただきました。本レポートでは、講演の内容を振り返りながら、エンジニアにとっての“伝わるコードレビュー”のポイントをまとめます。
1. イベント概要と登壇者紹介
イベント概要
タイトル伝わるコードレビュー 開発チームの生産性を高める「上手な伝え方」の教科書 - FL#93
開催日時2025年5月15日 19:30〜21:00
内容新刊『伝わるコードレビュー』の著者である鳥井雪氏、久保優子氏、諸永彩夏氏の3名が、コードレビューの基本方針から具体的なテクニックまでを紹介。後半は監修を務めた島田浩二氏も加わり、視聴者からの質問に答えるQ&Aパネルディスカッションを行いました。
登壇者
鳥井 雪 氏株式会社万葉 フェロー / NPO法人Waffle カリキュラム・マネージャー 著書・翻訳多数。Railsコミュニティや教育分野で活躍中。
久保 優子 氏株式会社万葉 副社長COO Java・Rubyエンジニアを経て現職。経営や営業に携わりながら、コミュニケーションを重視した開発文化を実践。
諸永 彩夏 氏株式会社万葉 エンジニア 入社前はカスタマーサポートや経理・人事などを経験。万葉での研修を経て「テキストコミュニケーション」を体得。
島田 浩二 氏(モデレータ / 監修)株式会社えにしテック 代表取締役社長 一般社団法人日本Rubyの会 理事。技術翻訳や書籍監修も数多く手がける。
2. 「伝わるコードレビュー」とは?
本書『伝わるコードレビュー』は、チームがコードレビューを通じて生産性を高めるためのコミュニケーション技法を、実例を交えながら解説した書籍です。万葉は「テキストコミュニケーションの極意」を社内文化として蓄積してきた会社であり、そのノウハウが詰まっています。
ポイントは“対話”著者たちは口をそろえて「レビューは指摘ではなく対話」と強調します。書き手(レビュイ)も読み手(レビュア)も対等な関係で、「より良いコードをチームで仕上げる」意識を持つことが重要です。
実践的な3部構成書籍は「心構え編」「実践編」「ティップス編」の3章構成。外枠となるマインドセットから、現場で使える具体的な文例・テクニックまでカバーしています。
コミュニケーション全般にも応用可実はレビューだけでなく、テキストを介するコミュニケーション全般の話でもあるため、デイリースタンドアップやチャットでの相談など多方面に役立ちます。
3. レビューア視点・レビュイ視点の実践トピックス
レビュアが意識すること
コメントのレベル感を明示「絶対修正してほしい」「参考意見」など、どれだけ強く直してほしいかをラベルや書き出しで明確にする。相手が混乱しないように配慮する。
余分に解説しすぎない親切心から多大な付随情報を与えると、相手が受け止めきれず混乱することもある。レビュー相手の状況に合わせるのが大切。
余裕あるときは“褒める”視点を気になった部分だけでなく「ここは分かりやすくて良い」など、良い点にも注目してフィードバック。チームの雰囲気が大きく変わる。
レビュイが意識すること
「ディスクリプション」は思いやりの場レビューアが読みやすいよう、変更内容・理由・やっていないこと・確認手順などをしっかりまとめる。レビュー効率が格段に上がる。
前提知識をそろえる大きな修正ほど、「なぜその方針なのか」の背景を共有する。相手に余計な推測をさせないことがスムーズな対話につながる。
分からないまま受け止めない質問の意図や指摘の根拠が分からなければ、素直に尋ねる。対話なく「なんとなく直す」のは手戻りや誤解を生みがち。
5. 全体を踏まえた感想「チームで学ぶ・チームで変わる」
今回の勉強会を通じて強く印象に残ったのは、コードレビューは“指摘の場”ではなく、“チームが話し合いながらコードを仕上げる場”であるということです。お互いに不安や戸惑いはあって当然。そこを責め合うのではなく、むしろ対話を通じてカバーし合うのが健全な姿なのでしょう。
さらに、コードレビューにまつわるやり取りはテキストコミュニケーションの技術が大きく試される場でもあります。著者たちも言うように、レビューで発生する“すれ違い”の多くはコメントの書き方・読み方が原因で、そこを工夫するだけでも生産性は高まるはずです。
最終的には“問題と私たちが向き合う”視点を忘れないことが肝心です。個人のプライドや相手への遠慮に囚われすぎず、チーム全員が見据えるゴールを共有する。そうした意識が高まれば、コードレビューは辛い指摘の応酬ではなく、開発文化を育むポジティブな場へと変わるでしょう。
書籍『伝わるコードレビュー』を片手に、チームで読み合わせをするのも有効だと思います。現場の課題を、誰か個人ではなく「チームで一緒に改善していく」土台になれば、この本は大いに活用できるはずです。ぜひ、あなたのチームのレビュー文化をアップデートしてみてください。
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