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「転職したらMCPサーバーだった件」イベントレポート
2025年5月16日に開催された「転職したらMCPサーバーだった件」というオンライン勉強会のレポートです。今回のテーマは「もし転職した先で、突然MCP(Model Context Protocol)サーバーとして働くことになったら?」という架空の設定を通じて、MCPサーバーの実態や技術的背景を分かりやすく解説するという、少し風変わりな内容でした。しかし、“中の人”として登壇したnwiizo氏の講演は、SF的なストーリー仕立てでありながら、リアルな大規模システム運用・インフラ管理に通じるヒントが満載。肩肘張らずに楽しみつつ、技術的好奇心をくすぐられる勉強会となりました。
イベント概要とコンセプト
「転職したらMCPサーバーだった件」は、もしある日突然、自分がMCPサーバー(Model Context Protocolサーバー)として働くことを命じられたらどうなるのか――という“架空の転職ストーリー”を切り口に、MCPの内部構造と日常業務を学ぶ勉強会です。 MCP(Model Context Protocol)は、LLM(大規模言語モデル)と外部データやツールをつなぐプロトコル。OpenAIやAnthropicなど、さまざまなベンダーが独自実装を進める一方、「ベンダー依存を避けて標準化したい」「ヒューマン・イン・ザ・ループをどう設計するか」という声も高まっています。本イベントでは、そんな技術トピックをコミカルなストーリーに落とし込み、エンジニアが自然とMCPの要点に触れられる工夫がされていました。
当日は視聴申込だけで500名を超え、「MCPサーバーの話をエンタメとして楽しむ」珍しい企画に多くのエンジニアが興味を持っていたようです。
登壇者:nwiizo氏(MCPサーバー“中の人”)
今回の勉強会では、ソフトウェアエンジニアとしてインフラやSRE業務を経験し、現在は株式会社スリーシェイクに在籍しているnwiizo氏が「MCPサーバー役」を熱演。 「入社してみたら、なぜか自分が人間のままAIの一部になってしまう」という設定を軸に、MCPサーバーとしての仕事内容やプロトコルの概要を語りました。実際にMCPのコード実装にも携わっているそうで、「技術とストーリー」の両面で深い内容になっていたのが印象的です。
講演内容ダイジェスト
1. MCPサーバーとは何か
MCP(Model Context Protocol) LLMやAIアプリケーションと外部データソース・ツールをつなぐ標準的なプロトコル。JSON-RPCベースであり、ベンダー独自の拡張を極力排除する形が目指されている。
人間がAIの一部となる発想 ハルシネーション(AIが虚偽情報を生成)を恐れる組織が、逆に「人間がサーバー」としてLLMとの通信を補佐・監視する仕組みを導入するのが今回の架空ストーリーの大枠。
2. 転職初日の衝撃ストーリー
ある日、会社に出勤すると「MCPサーバー担当」へ配属 「君のインフラ知識がAIエコシステムに役立つんだ」と言われるが、具体的な業務内容はほとんど不明。
初期化フェーズとキャパビリティ登録 MCPでは「自分がどんな情報を扱えるのか」「どんなツールを操作できるのか」を事前に登録する。ストーリーでは、人間として持っている知識や経験を“MCPとしてのプロトコル”に入れていく流れがユニーク。
3. 日常業務と内部構造
リソース管理 各種ドキュメントやコード断片、データベース設定などを「リソース」としてMCPサーバーが提供し、クライアント(LLMなど)が必要に応じて参照していく。
プロンプトテンプレート設計 人間が遭遇しがちなインシデント対応や監視のノウハウを「プロンプトテンプレ」に落とし込み、クライアント側と効率的にやりとりする。
ツール呼び出し(tools.call) 実際にAPIやCLIを叩くなど、LLM単独では難しい処理を人間(MCPサーバー)が代行。クラウドインフラのフェイルオーバー手順などを手動で行いつつ、AIからの要求を捌く様子が“なぜかリアル”な展開。
4. サンプリング機能
MCPサーバーから能動的にLLMへリクエスト MCPの仕様には「サンプリング」という概念があり、サーバー(=人間側)から必要情報をLLMに求めるアクションが想定されている。まだ実装していないクライアントも多いが、今後は双方向のやりとりが進化しそうだ、とのこと。
5. 架空の大規模案件とアドバンスMCPチーム
複数のMCPサーバーが連携 ネットワーク専門、DB専門、SRE専門など人間それぞれの得意分野をMCP化して、LLMとやりとりするチームが発足。とても奇妙な設定ながら、「専門知識を部分的にAIと同期する」という未来図が描かれた。
全体を踏まえた感想「“逆転の発想”が生む新しい可能性」
今回の勉強会では、「人間がサーバーとしてAIの一部になる」という一見奇妙な設定を通じて、MCPの基本構造と実務的な課題がとてもわかりやすく示されました。普段はLLMが私たちに回答する――というイメージが強いですが、実際の運用では「人間が判断・介入する」瞬間がまだまだ重要です。
ハルシネーションや不確実な回答が問題になる現場では、逆手にとって「人間の得意な部分を組み込む仕組み」を設計したほうが結局は早いかもしれません。そんな“逆転の発想”がMCPの世界観には詰まっていました。
もちろん、現実にこれをフル実装する企業はまだ限られています。しかしセキュリティや可用性を確保しながら、MCPサーバーとして複雑なクラウド環境を操作する――というのは、今後じわじわと増える可能性も大いにありそうです。AIの進化は止まりませんが、人間の持つ固有の知識・経験は未だ大きな価値があります。データやツールをAIに渡すのではなく、「人間がフィルタやコントロール役になる」という手法は、これからの大規模言語モデル時代を生き抜く上で、大いに参考になるのではないでしょうか。
以上が、「転職したらMCPサーバーだった件」勉強会の全体レポートです。参加者が笑いながら学べるユニークな勉強会でしたが、その裏にはMCPの標準仕様やセキュリティ課題、ヒューマン・イン・ザ・ループ設計など、現在進行形の技術トピックが満載でした。もし興味を持たれた方は、MCPに関連する情報を追いかけてみてはいかがでしょうか。人間とAIが協力し合う時代の一端を覗けるかもしれません。
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