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freee Tech Night『Re:ゼロから始める新卒研修サービス〜まさかの社内で本番運用!?〜』 レポート
はじめに
2025年5月9日、「freee Tech Night『Re:ゼロから始める新卒研修サービス〜まさかの社内で本番運用!?〜』」がフリー株式会社にて開催されました。本イベントは、24年度の新卒エンジニアたちが研修で開発した社内向けアプリが、実際に本番環境へ運用されるまでに至った経緯と、その裏側の技術・チームワークについて掘り下げる内容でした。
ショート動画プラットフォームを1か月足らずで作りきり、さらにそのまま社内で運用が継続されている──聞くだけで興味をそそられるプロジェクトですが、そこには研修ながらも「3年運用が可能な品質」を求める独自の要件があり、新卒エンジニアならではの学びや苦労が詰まっていました。
以下では、イベント全体の流れや主要なトピック、そして質疑応答(Q&A)の要点をまとめてご紹介します。フリーの新卒研修がどのように設計され、実際にどんな成果物を生み出したのか。エンジニア・デザイナーが一緒に走るハイテンションな研修の一端を、ぜひお楽しみください。
新卒研修の概要
研修の全体像
フリーの新卒エンジニア研修は、大きく前半と後半に分かれています。前半では座学やWebフレームワーク開発などの基本を学び、後半ではエンジニアとデザイナーがチームを組み、社内課題を解決するアプリを1か月で開発するという非常にチャレンジングな課題に取り組む流れです。
後半の課題テーマは複数あり、「社内向けアプリ」を自由に選んで開発し、3年運用が可能なレベルを目指す、という共通要件が設定されています。その中には、座席予約管理システムやイベント支援アプリなど、多彩な題材がありましたが、今回スポットライトが当たったのは「社内向けショート動画プラットフォーム」を作ったチームです。
なぜショート動画プラットフォーム?
フリー社内では大量の情報共有が必要である一方、テキストコミュニケーションだけでは伝わりにくい雰囲気や温度感をカバーするのが課題でした。そこでTiktokのようなショート動画形式を採用し、 「のんびり動画を見ていたら、知らないうちに社内情報に詳しくなる」 というコンセプトでプラットフォームを実装。短い研修期間ながらも、タグ機能やリッチなUIなど、本番運用に耐えるクオリティを備えたアプリが出来上がったのです。
実装のポイント
コンセプト設計とデザイン方針
チームのデザイナー・エンジニアが協力し、「のんびりサーフィン」というコンセプトを最初に固めました。情報を波乗りするように楽しんでほしい、という発想から、南国風のUIやサーフィンのイラストをあちこちにあしらい、 「業務感をあまり出さない」 という雰囲気づくりを徹底。 一方で、タグ機能や動画の一覧性、セキュリティなどはしっかり考慮し、あくまで業務内で機密度の高い情報も扱えるレベルまで品質を追求しています。
フレームワーク選定とクリーンアーキテクチャ
バックエンドにはGolang、フロントエンドにはReactを採用。加えて、新卒研修ながらクリーンアーキテクチャを導入し、3年運用に耐える保守性を意識しました。短期間でさまざまな機能を盛り込むにあたり、「徹底的に軽量化したフレームワークか、あるいは実績ある車内標準を使うか」という検討が行われ、最終的には 「フルスクラッチに近い形で作りながらも、標準基盤の利点を部分的に取り入れる」 方針に。
インフラ面ではAWSをフル活用し、動画のストレージはS3に置いて署名付きURLで配信する方式を選択。研修メンバー全員が、インフラからアプリ実装まで横断して学べたことが大きな収穫だったとのことです。
認証・認可とセキュリティ対策
本番運用を目指すにあたって、車内標準の認証(ワンログイン via SAML)やログ取得基盤との統合が必須になりました。 最初はGoogle OAuthで軽く済ませる予定でしたが、社内で長期的に運用するにはワンログインとの連携が不可欠。しかもGolangでワンログインのSAML連携事例がなかったため、何もかも自力で学びながらの実装となったそうです。また、脆弱性診断についても各自で攻撃シナリオを考え、SQLインジェクションやXSS、認可漏れをチェック。結果として「チーム内で大きな学び」を得たのはもちろん、「認可まわりのバグ」が事前に見つかり大いに助かったとのエピソードも印象的でした。
Q&Aで紐解く開発の裏側
イベントではいくつもの質問が寄せられ、今回登壇の新卒エンジニア・デザイナーが応えました。ここでは一部を抜粋してご紹介します。
Q. なぜGolangなの? Ruby on Railsじゃダメだった?
チームのメンバーの経験や好みが影響。全員がRails経験よりGoを触りたい意欲が高かった
レールズのほうが短納期には強いかもしれないが、今回はチーム全員での「Go使いたい!」というモチベーションが優先
Q. 3年間運用ならドメイン駆動設計(DDD)も使いました?
DDDではなく、クリーンアーキテクチャのみを採用
ドメインの境界を細かく定義するほどの要件・時間はなかった
シンプルなレイヤー分割だけでも運用で大きなメリットを実感
Q. セルフ脆弱性診断では、実際にどんな穴が見つかったの?
存在しない動画IDに「いいね」ができてしまうなど小さな不具合
認可抜けのURLがあり、権限がないはずの動画を直接URLでアクセスできてしまう問題が発覚
「外部へ依頼せず、自作アプリに攻撃してみる」経験は学びが多かった
Q. 要件が増えるなどのトラブルをどう乗り越えた?
1か月という短期研修でスクラムを試したが、要件追加・優先度変動が激しく、終盤はタスクが雪だるま式に増加
結果的に、本当に必要な機能を見極める力が身についたのは大きな成果
イベント全体を踏まえた感想 〜「試行錯誤と本番運用の先にある学び」〜
今回のfreee Tech Nightで印象的だったのは、研修と呼ぶにはレベルが高すぎるような「実運用のための開発プロセス」 を、新卒エンジニアとデザイナーだけで完結させていた点です。 短期決戦にもかかわらずクリーンアーキテクチャを採用したり、AWSや認証基盤まで一気通貫で扱ったり、脆弱性診断を自力で実施したりと、まさに「自分たちで作りきり、守りきる」ためのリアルなチャレンジを積み重ねました。
その結果として、「社内に基盤があると本当に助かる」「安易なフルスクラッチはリスクが大きい」「可愛いUIデザインでもコード面は泥臭くなる」など、生々しい学びが語られたのが印象的です。 さらに、実際に新卒メンバーが車内のショート動画プラットフォームを本番稼働させるに至ったことで、技術的にも組織的にも「価値ある成果」を得たのは確か。何より、「ユーザーが楽しんで使ってくれる姿はモチベーションになる」と語った彼らの表情がとても生き生きしていました。
研修とはいえ、本番運用をゴールにした環境は、短い期間に圧倒的な実践力を身につけるための究極のステージなのかもしれません。フリーならではの裁量とスピード感が際立った勉強会でした。新卒エンジニアが一歩目からここまでの開発経験を積める環境、その魅力や可能性を改めて実感できるイベントだったのではないでしょうか。
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