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ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #4 財務分析の基本〜おかわり〜 レポート
はじめに
2025年5月8日、「ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #4 財務分析の基本〜おかわり〜」がオンラインにて開催されました。本勉強会は、ファイナンスや会計に馴染みのないエンジニアが「どのように企業価値や投資判断を理解すればよいのか?」を学ぶシリーズです。すでに3回にわたって、ファイナンスの全体像や財務諸表(B/S、P/L、C/F)、代表的な分析指標について解説がなされてきました。
4回目となる今回は、「前回の財務分析で紹介しきれなかった指標をさらに深掘りする」というテーマで進行しました。ROAやROEはもちろんのこと、ROICやEBITDAといった新しい概念も登場し、ますますファイナンスの世界が広がります。ここでは、イベント当日の内容を分かりやすくまとめ、Q&Aのやりとりもふまえてご紹介します。
過去の経緯:ファイナンス全体像から「収益性」「生産性」へ
1〜3回目の勉強会で学んだポイントを、簡単に振り返ります。
1. まずはファイナンスの全体像
「企業は負債(デット)と株主資本(エクイティ)で資金を集め、それを事業へ投下(運用)してリターンを得る」という基本構造を学習しました。ITプロジェクトも、この投下資本の一部として見れば、投資回収のリターンが重要であることが分かるという考え方です。
2. 財務諸表の基礎
次に、会計の世界で必ず登場するB/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)、C/F(キャッシュフロー計算書)の三表をざっくり理解。帳簿上の利益とキャッシュの流れが必ずしも一致しない例として、黒字倒産や減価償却の概念が取り上げられました。
3. 財務分析の基本(前回)
前回は、ROAやROEといった「企業の稼ぐ力」を示す代表的な指標に触れました。ROAは収益性と生産性を掛け合わせた総合力を示し、ROEは株主資本(エクイティ)に焦点を当てた指標です。ここに「財務レバレッジ」が加わることで、企業が借入をうまく活用しているかを測ることができる、という話が印象的でした。
今回の焦点:財務分析の基本をさらに掘り下げる
第4回となる本イベントでは、前回に続いて財務分析指標を深掘りする形で、以下のトピックが解説されました。
1. ROEのおさらいと「レバレッジ」の概念
ROE(Return on Equity)とは
株主からの投資(エクイティ)に対して、どれだけ利益を上げているかを示す指標
計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本」
投資家視点で見た企業の収益性を把握するために重要とされる
財務レバレッジ
ROEを分解してみると、収益性(利益率)× 生産性(総資産回転率)× 財務レバレッジ という3要素に分かれる
この「財務レバレッジ」が高いほど、自己資本に比して多額の借入を使っているという意味で、ROEを一気に押し上げる可能性がある
ただし、安全性が下がるなどのデメリットも考慮が必要。レバレッジを上げればROEを簡単に高められるが、借入の返済リスクも上昇する
2. ROIC(Return on Invested Capital)の登場
経営者視点での投下資本効率
ROEは株主資本に注目するのに対し、ROICは「投下資本=エクイティ + 有利子負債」の両方に注目
投下資本を「どれだけ本業に集中させているか」「余計な資産(たとえば、遊休資産)が含まれていないか」を重要視する指標
経営者は、このROICを高めるために、付加価値率や在庫・運転資本の最適化を細かくチェックし、ビジネスを改善するケースが多い
WACC(Weighted Average Cost of Capital)との関係
ROICを高めるだけでなく、WACC(資本コスト)が何%かを把握することも重要
一般的に、ROICがWACCを上回れば企業価値が向上する、下回ると企業価値が棄損する、と説明される
WACCは次回以降に深掘り予定
3. EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)
減価償却や税金の影響を除く「実力値」
企業ごと、国ごとに異なる税制や償却方法を排除し、キャッシュ創出力を評価するために用いられる
グローバル企業の比較やM&Aの際に特に重視される指標
営業利益に減価償却費などを足し戻し、キャッシュフローに近い数字を見るやり方だが、あくまで「近似値」であり、実際のフリーキャッシュフローとの違いには留意が必要
4. ROI(Return on Investment)の整理
ROIは、プロジェクトや特定の施策に対する投資回収率としてよく使われる
ROA・ROEなどは「企業全体の数値」、一方でROIは「個別投資」単位で用いられるため、必ずしも財務諸表からの直接計算とは限らない
IT部門で「この新ツール導入のROIは?」と話題になるように、組織内の投資判断にも有効
全体を踏まえた感想:財務指標を“現場の意思決定”につなげる
回を重ねるごとに、ファイナンスが単なる「会社のお金の流れ」ではなく、企業活動の意思決定そのものを左右する体系であることが鮮明になってきました。収益性・生産性・安全性・成長性という4つの視点から、数多くの指標が生まれているのも、その複雑なビジネス要件を映すためです。
ITエンジニアの立場であっても、ROAやROE、ROICの仕組みを知っていれば「どうしてこの投資額の目標リターンが求められるのか」「財務レバレッジによって経営がどの程度リスクを取っているのか」といった背景を読み解きやすくなります。とくに、ROICとWACCの関係は経営判断に直結しやすく、今後の勉強会で予定されている「現在価値の考え方」と並んで重要なポイントと言えるでしょう。
もちろん、企業によって財務方針や業界特性が違うため、指標の数字に一喜一憂しても仕方がありません。肝心なのは「どの指標を、何の目的で見ているのか」を意識し、指標を“意思決定の会話”に活かすことだと感じられた回でした。
今後は、WACCなどさらに高度なテーマを踏まえ、最終的に「企業価値算定」へと進む予定です。ファイナンスの世界がますます奥深く、かつ実務的に役立つ内容になっていく予感がします。気になる方は次回もぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
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