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ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #2 最低限の会計基礎 レポート
はじめに
2025年2月27日、「ITエンジニアのためのコーポレートファイナンス入門シリーズ! #2 最低限の会計基礎」がオンライン開催されました。前回の「全体像理解」に続き、今回は財務分析を行ううえで押さえておきたい「会計知識」をざっくりと学ぶ内容です。ビジネス/ITコンサルタントの江﨑 崇浩さんの解説をもとに、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)の基本を一緒に振り返ってみましょう。
前回のおさらい:ファイナンスと会計の位置づけ
第1回では、まず「コーポレートファイナンス全体の流れ」をざっくり捉えました。
企業は資金を調達(主に「有利子負債」と「株主資本」の2つ)
調達したお金を使い、事業(運用)を進める
成果やリターンが出たら、再び 調達や株主・債権者への分配に回す
企業は一度資金を集めれば終わりというわけではなく、上場後も増資や社債発行、M&Aなど何らかの手段を継続的に使って「資金の流れ」を作っています。ファイナンスを考えるうえで、これらの事例を思い浮かべると「なぜ資金を集めるのか」「どんなリターンが期待されているのか」がイメージしやすくなります。
そして、ファイナンス上の判断には「企業活動の実態」を数字で把握する会計知識が欠かせません。
税務会計(税金計算が目的)
財務会計(株主や債権者のための財務諸表作成)
管理会計(経営者向けの社内管理や予算策定など)
この3種類の会計のうち、企業が必ず外部に開示するのが財務諸表(財務会計のアウトプット)。いわゆる「財務三表」はここから生まれます。
財務三表のポイント
今回のメインテーマは、財務分析で基盤となる3つの表(B/S・P/L・C/F)です。実際の有価証券報告書を例にとりながら、その概要をおさらいしました。
1. 貸借対照表(B/S)
ある時点(多くは期末)の企業の「財政状態」を表す
大きく分けると「資産=負債+純資産」という構造
資産には「流動資産(1年以内に形が変わるもの)」と「固定資産(建物やソフトウェアなど、1年以上使うもの)」がある
負債にも「流動負債(1年以内に返済)」「固定負債(1年以上の借入など)」がある
負債を返し終えたあとの残りが「純資産」で、株主の持分と考えられる
B/Sは「どんなモノや設備にお金を使っているか」「どの程度の負債を抱え、どれだけ株主資本があるのか」がひと目で分かる構造が特徴です。
2. 損益計算書(P/L)
ある期間(通常1年)の企業の「経営成績」を表す
収益から費用を差し引き、最終的な「純利益(または純損失)」を示す
本業の儲けを表す「営業利益」、そこに本業以外の収益や費用を加味した「経常利益」、さらに特別損益や税金を調整した「純利益」など、段階的に計算される
P/Lは「売上」「原価」「販売管理費(人件費や広告費など)」の関係をざっくり把握できる重要な資料です。ただし、ここに記載される費用(たとえば減価償却費など)は、必ずしもリアルタイムの現金流出を意味しない点に注意が必要です。
3. キャッシュフロー計算書(C/F)
一定期間における「現金(キャッシュ)の出入り」を表す
「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの区分でプラスやマイナスを可視化
利益が出ていてもキャッシュが不足する、いわゆる「黒字倒産」を防ぐにはC/Fが重要
「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉が象徴するように、ファイナンスでは将来のキャッシュ創出能力が重視される
キャッシュの流れを分割して見ると、企業がどのようにお金を稼ぎ、どのように設備投資や借入返済をしているのか、さらに現在の成長ステージがどのあたりか推測しやすくなります。
Q&Aピックアップ
今回も参加者から多くの質問が寄せられました。その中でも代表的なものをいくつかご紹介します。
従業員給与はP/Lのどこに計上される?通常は販売管理費に含まれるが、業種によっては原価(本業部分の費用)として扱われるケースもある(例:コンサルタントの人件費など)。
営業利益・経常利益など、どれを重視すべき?人によって見方が異なる。一例として「本業の強さ」を見るなら営業利益に注目するが、減価償却や税制の違いを加味するため、EBITDAのような指標を好む投資家もいる。状況や目的によって重要視する利益段階が変わる。
赤字経営はただの自転車操業なのか?企業が赤字でも、投資家や金融機関が「将来の回収が見込める」と判断すれば継続的に資金提供を受けられ、存続が可能になることがある。必ずしも赤字=倒産ではないが、キャッシュ不足が続けば倒産リスクが高まるため、リスクヘッジが重要。
全体を踏まえた感想 ~会計の数字に隠されたストーリーを読む~
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書。どれも耳慣れた名前ですが、実際に有価証券報告書などを見てみると、想像以上に項目が多く圧倒されます。とはいえ、数字の羅列をただ眺めるのではなく、
「資産はどんな形で使われているか?」
「本業とそれ以外でどんな収益・費用が生まれているか?」
「現金はどこから来て、どこで出ていくのか?」
といった点を押さえながら読むだけでも、企業のストーリーが少し見えてきます。ITエンジニアとしてシステム開発に携わる際、こうした会計上の視点を持っていれば、「なぜこの投資が必要なのか」「どうしてスケジュールが厳しいのか」「リターンが期待される時期はいつか」など、事業や経営の意図をより深く理解できるのではないでしょうか。
次回以降は、これら三表を使った「財務分析の手法」やもう少し細かな演習も扱う予定とのこと。単なる簿記の延長ではなく、「ファイナンス視点を養う」ために会計をどう捉えるかを再確認できる回になるはずです。数字に隠された企業のリアルを読み解き、ビジネス視点を強化していきたい方は、ぜひ継続して参加を検討してみてはいかがでしょうか。
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