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「春のBedrockアプデおさらい & Bedrock Engineer開発秘話スペシャル」イベントレポート
春の穏やかな陽気に包まれた 2025/4/24、AWS を活用するコミュニティ主催で「春のBedrockアプデおさらい & Bedrock Engineer開発秘話スペシャル」というオンラインイベントが開催されました。 最近のAmazon Bedrock のアップデートをまとめるだけでなく、開発者向け AI エージェント「Bedrock Engineer」の裏側を開発者自身がたっぷり語るという、非常に中身の濃い勉強会でした。 本レポートでは、当日の各セッション内容からQ&Aまでを振り返り、「Bedrockを使ってどんな世界が広がるのか」をまとめます。
オープニング・全体像
イベント冒頭、司会進行を務める運営メンバーから「最近のBedrockは地味にアップデートが多いが、見逃している人も多いのでは。今日はまとめておさらいしつつ、開発者向けAIエージェントの事例を聞けるお得な会にしたい」という趣旨が紹介されました。
続いて案内されたタイムテーブルは次のとおりです。
オープニング(12:00-12:05)
春のBedrockアプデおさらい(12:05-12:15)
みのるん(KDDIアジャイル開発センター株式会社)
なんだか流行ってるらしいMCPをBedrockで使ってみよ〜(12:15-12:25)
moritalous(コミュニティメンバー)
開発AIエージェント「Bedrock Engineer」開発秘話(12:25-12:50)
淡路 大輔(アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
クロージング(12:50-13:00)
それぞれのセッションを振り返り、最後にQ&Aの内容をかいつまんで紹介します。
1. 春のBedrockアプデおさらい
登壇者:みのるん さん(KDDIアジャイル開発センター株式会社)
Bedrockアプデは地味に多い
初っ端から「最近のBedrockはリンベント後から約50件ものアップデートがあった」という衝撃的な数字が示されました。 大きく分けると、モデルまわり・ラグまわり・エージェント・ガードレール・評価系・その他のオーケストレーション機能…と多岐にわたるとのこと。 特に注目されたアップデートは以下が挙げられました。
DeepシークのR1モデルがGA コストを抑えながら生成も高品質に行えるとされるモデル。
オーロラを使ったラグのハイブリッド検索サポート 「ベクトル検索+従来型の全文検索」の組み合わせが、オープンサーチ以外でも利用可能に。
マルチエージェントコラボレーションがサポート Bedrockエージェントで、エージェント同士の連携がGUIから設定可能に。
プロンプトキャッシュ 短期間に同一プロンプトを投げた場合に高速&低コスト化を実現。約90%節約の事例も。
「これらは一部であり、まだまだ細かなリリースが多数。AWS公式ブログやAWSアンバサダーの情報発信をチェックしよう」と締めくくられました。
2. なんだか流行ってるらしいMCPをBedrockで使ってみよ〜
登壇者:moritalous さん
MCPとは?
最近のAIエージェント界隈で急速に話題になっている“MCP(Media Control Protocol もしくは Model/Agent Communication Protocol の説あり)”について解説がありました。
アンソロピック社が提唱する、AIエージェント同士やツールを統一的に呼び出すためのプロトコル仕様
各種AIエディタやOSSがこのMCPに対応し始め、「AIエージェント同士のやり取りをスムーズにする」効果が期待されている
AWSでの事例
AWSもMCP連携のサンプルをいくつか公開しているとのこと。具体的には、複数のリポジトリで「AWS MCPServers」という形でMCPサーバー実装が公開されている。以下のようなものが例示された。
AWS Diagram MCPサーバー AWS構成図をMCP経由で動的に生成。
AWS Documentation MCPサーバー AWS公式ドキュメントの検索をエージェントに委ねる形で実現。
CDK MCPサーバー AWS CDK関連のベストプラクティスや雛形を自動取得する仕組み
ほかにも多数 Terrafromとの連携やコスト分析のMCPサーバーなど盛りだくさん
Bedrockとの組み合わせ
MCPサーバーとBedrockエージェントを組み合わせれば、多数のAWS系機能を簡潔に呼び出せるエージェントを作れる。しかし現時点では、MCPの仕様とBedrockエージェントの一部制限(引数上限や文字数上限など)により、完全な統合はまだ課題があるという話がありました。 「とはいえ、OSSが加速度的に増えているので、これからの連携が楽しみ」とのこと。最後には自作のMCPサーバー事例として「ストリームリットで軽快にチャットを行う」などの話も披露され、今後の盛り上がりを感じさせる内容でした。
3. 開発AIエージェント「Bedrock Engineer」開発秘話
登壇者:淡路 大輔 さん(アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
なぜ開発エージェントを作ったのか
淡路さんはAWSのソリューションアーキテクトとして、日常的にAI技術を触る立場。開発者向けのエージェントがあれば「コード生成」や「設計図作成」などが加速しそうだと考え、自らOSS「Bedrock Engineer」を開発した。 発端は「LLMに全部まかせるのではなく、ファイルの読み書きツールを与えるだけで自律的に開発できないか?」という興味から始まり、数か月で大幅に機能が拡張されたとのこと。
Bedrock Engineerの特徴
ネイティブアプリ(Electron製) Macであればインストール済みバイナリをダウンロードするだけで使える。Windows/Linuxユーザーもビルド可能。
ファイル操作ツールで「コード生成」「編集」「フォルダ作成」など 対話しながらソースファイルを作り、VSCode的に閲覧もできるUIを実装。
ラグやMCPとの連携も可能 「MCPサーバーを登録すればツールが増え、開発者エージェントが強化される」仕組み。
ガードレール適用や、プロンプトキャッシュなど、Bedrockの最新機能を活用 誤って秘匿情報をコミットしないようにするなど、セキュリティ配慮が実装されている。
ベストプラクティスのヒント
1回の対話での操作数を増やしすぎない LLMが文脈を抱えきれなくなるため。
汎用的にしすぎない AIに何でもさせるより、特化したツールを用意し「目的と範囲を狭める」方が扱いやすい
プロンプト設計とツール設計を分割 システムプロンプト内で「どのツールをいつ使うかのガイドライン」を明記すると、意図しないファイル操作を防ぎやすい
これからの展望
複数のエージェントを束ねる「マルチエージェント」化
会社内で運用する際のIAM管理やガードレール強化
AIエージェント同士がコードレビューし合うような未来像も 淡路さんは「OSSとして開発を継続中。Pull Requestも大歓迎」と呼びかけ、「次はエージェント自身が別のエージェントを生み出すような開発にも挑戦してみたい」と、夢を広げていた。
Q&Aまとめ
最後には、登壇者全員が参加するQ&Aパネルディスカッションが行われ、視聴者からの質問に答える形で議論が盛り上がりました。その中から印象的なやり取りを抜粋します。
Q1. 「BedrockのAIエージェント、MCPとの連携がまだ制限されがちという話でしたが、うまい対処法は?」
moritalousさん:
「今のところ、ベータやOSSの実装が中心。ベッドロックエージェントの制限で引数数や文字数に制限があるため、やりたいことが大きい場合は工夫が必要。たとえば複数回に分けてツール呼び出しを区切ったり、プロンプトを分割して別エージェントと連携させたりするケースがある。」
Q2. 「AIエージェントにWeb検索やファイル操作など強力なツールを与えるのが不安だけど?」
淡路さん:
「まさにガードレールやIAMがカギ。エージェントが実行できる操作範囲を小さくする、秘密情報が混ざりそうなら出力をガードレールでマスクするなど、複数の防御策がある。AWSサービスのセキュリティ要素を活用するのがベストプラクティスでは。」
Q3. 「プロンプトキャッシュは試された?本当にコスト削減できる?」
みのるんさん:
「使い方によりますが、ベッドロックで試したら大量のリクエストが同一プロンプトなら結構効果が出ました。ただ5分でTTL切れるのと、日時やセッションIDなどが変化しているとキャッシュヒットしないので要注意です。」
Q4. 「開発エージェントがファイル構造を勝手に変えすぎたり、無駄にトークンを消費することは?」
森田さん:
「システムプロンプトやツール仕様で操作範囲を制限すると比較的コントロール可能。『このディレクトリ配下だけ触っていい』とか『ファイル削除は禁止』などを明示し、余計な発想を抑えることが大事。」
まとめ:エージェントが拓く未来
今回のイベントを通じて、生成AIサービス「Amazon Bedrock」がこの春だけでも大量のアップデートを積み重ねており、より柔軟なAIエージェント構築が容易になっていることが明らかになりました。 さらに、その上で動く「Bedrock Engineer」のような開発エージェント事例では、ファイル操作やラグ検索、MCP連携など多彩なツールを組み合わせることで、AIが自律的にコーディングやドキュメント整理、設計図生成などをこなせるというビジョンが現実味を増しています。 一方で、強力なAIエージェントを運用するにはガードレール設定やシステムプロンプトでのコントロールが不可欠。セキュリティを確保しつつ、開発者が「これならAIに任せてもいい」と安心して任せられる領域を見極めることが成功の鍵となりそうです。 今後、AIエージェントがさらに発展し、複数エージェント同士でコラボレーションできるようになれば、複雑なプロジェクトの自動化やチームの開発フロー自体の変革も起こり得るでしょう。「Bedrockで何が実現できるか」の探索を続けることは、エンジニアにとって大きな価値を生む挑戦と言えます。
今回の勉強会は、こうした技術の先端事例やOSS公開を通じて、コミュニティがさらに活性化していく熱気を感じられる場でした。2025年は、AIエージェント元年とも呼べるかもしれません。自社のユースケースに合わせて、少しずつ試みを進めてみてはいかがでしょうか。
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