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JAWS-UG東京 ランチタイムLT会 #22 レポート
2025年4月22日に開催された「JAWS-UG東京 ランチタイムLT会 #22」は、AWS関連なら何でもOKというフリーテーマのLT(ライトニングトーク)が4本披露された、1時間のオンライン勉強会です。JAWS-UG東京が目指す「気軽に参加できるランチタイムの情報共有」として、各発表者の実践的な取り組みや工夫がぎゅっと凝縮された、非常に濃密な1時間となりました。
本レポートでは、当日の流れに沿って、登壇者が共有してくれた知見や、Q&Aで話題になったポイントをまとめます。AWSの最新機能を使いこなしたい方から、社内でのCI/CD環境やオーガニゼーションズの活用を検討している方まで、得られるものがきっとあるはずです。
イベント概要と全体の雰囲気
JAWS-UG東京 ランチタイムLT会は、毎月1回、オンラインでサクッと1時間程度行われる勉強会です。今回はその第22回目。事前に募集されたLT登壇者が5〜10分ほどでAWSに関するトピックを自由に紹介し、最後に参加者からのQ&Aをまとめて行う形式です。
運営には、以下のメンバーが携わっています。
みのるんさん(KDDIアジャイル開発センター株式会社)
watanyさん(NTTテクノクロス株式会社)
y-ohgiさん(株式会社Topotal)
ムリギッテさん(様々な業界に向けたシステム提案・導入を担当)
当日はYouTube LiveのチャットやX(旧Twitter)のハッシュタグを通じ、視聴者からもリアルタイムに質問や感想が寄せられました。登壇者の話に「分かる分かる」「これ、うちでも使いたい!」と共感する声が多く、コミュニティならではの温かい盛り上がりが印象的でした。
発表1: 「AWS Infrastructure Composerの良さを伝えたい」
登壇者: 山本 直弥 (Nao) 氏
発表の概要
最初に登壇した山本さんは、AWS Infrastructure Composer(旧名称:AWS Application Composer)の魅力を紹介しました。このツールは、クラウドフォーメーション(以下CFn)のテンプレートをGUIで可視化し、ドラッグ&ドロップ感覚でリソースを配置・設定できる機能を提供します。
特に、
既存のCFnテンプレートを読み込み、構成図として確認できる
サーバーレス系のリソース(Lambda, API Gateway, S3 など)を「拡張コンポーネント」として穴埋め式で設定可能
Step Functions のワークフローをローカル環境でもGUI編集できる
といった点が大きな特徴です。一方で、GUIならではの注意点もあり、
自動生成されるIAMポリシーはやや権限が広めになること
拡張コンポーネント以外のリソース(標準コンポーネント)は結局コード定義が必要
といった問題点も指摘されました。それでも、既存のCFnテンプレートをざっと可視化するだけでも便利と強調し、「初心者やチーム内で構成を共有する際に重宝する」とのことでした。
Q&Aでのやりとり
Q: 権限設定は結局自分で最小限に直さないと危険? A: そうです。自動生成は便利ですが、最終的に広すぎるポリシーを絞り込む必要があります。
Q: 以前の名称であるApplication Composerとの違いは? A: 大きな機能は同じですが、最近のリブランドにより名前が変わりました。UIやサーバーレスリソース対応の考え方は共通しています。
発表2: 「新卒エンジニアがCICDをモダナイズしてみた話」
登壇者: 西 総一朗 氏
発表の概要
KDDI株式会社の西さんは、新卒で配属後、既存のJenkins中心のCI/CD環境をモダナイズした体験談を共有しました。大規模なJenkins環境では「Jenkinsおじさん問題」や「塩漬け問題」が付きもの。GUIベースの設定が属人化を招き、ビルドツールのバージョンやOSが古いまま放置されるケースも多いのです。
そこで、
GitHub Actions + AWS CodeBuild(セルフホストランナーのマネージドサポート)を活用
CIとCDを明確に分離し、商用環境へのデプロイ時のみ「特権ロール」を付与
テラフォームのプラン・アプライを1回の実行で一括管理するワークフロー
などを導入。「開発者が気軽にプランを確認できない」といった制約が解消され、作業申請フローがあってもプランを回すだけなら自由というメリットを得られたそうです。わずか半年ほどでモダナイズを完遂できたのは、趣味の自宅サーバー運用で学んだスキルも活かせたからとのこと。
Q&Aでのやりとり
Q: 新卒1年目でここまで変えられるのはすごいですね? A: 実際、商用作業フローへの理解に苦しみましたが、前任者からの引き継ぎ時間を最大限利用し、チームの協力も得て実現できました。
Q: 自宅サーバーの運用はどう役立った? A: GitHub Actionsを趣味で使っていたので、その知見がCI/CD構築に直結しました。新しいツールを楽しむ姿勢が大事だと思います。
発表3: 「Bedrock × Confluenceで簡単社内RAG」
登壇者: iharu 氏(株式会社Ridge-i)
発表の概要
iharuさんは、Amazon BedrockとConfluenceを連携して「社内向けRAG(Retrieval-Augmented Generation)ソリューション」を構築する事例を紹介。さらに社内でよく使われるSlackとの連携を図るにあたり、
Slack Bolt(スラックアプリ向けフレームワーク)
チャットボット系のノーコードツール
などを比較検討した結果、Boltを使って自前のSlackアプリを作る方法を選んだとのことです。
ポイントとしては、
Bedrockの「リトリーブ&ジェネレート」機能を活用し、Confluence上のドキュメントをナレッジベースに
Slack Boltで受け取ったメッセージをLambda経由でBedrockに問い合わせ、回答を生成
引用元URLや該当ページタイトルをSlackメッセージで表示する
などの仕組みによって、社内情報検索と生成AIの融合を実現。やや実装ハードルはあるものの、GUIだけで完結するサービスに比べて柔軟な拡張が可能といいます。
Q&Aでのやりとり
Q: Slack Boltは初めて聞きました。設定は難しくない? A: ラムダ用のレシーバー初期化やアクションリスナーの書き方など、多少コードの学習が必要ですが、慣れるとブロックキットでUIを凝った作りにできる強みがあります。
Q: 社内RAGの用途は? A: 社内WikiやドキュメントをChatベースで引き出す形にしたかった。Confluenceを更新するだけで生成AIの回答精度が上がり、社内問い合わせが減って快適です。
発表4: 「Terraform Cloudで始めるおひとりさまOrganizationsのすゝめ」
登壇者: ハンディ 氏(株式会社BeeX)
発表の概要
ハンディさんは、AWS Organizationsを個人で使う「おひとりさまOrganizations」の利点を熱弁。通常、オーガニゼーションは企業が複数アカウントを管理する手段として利用しますが、個人検証でもマルチアカウントを気兼ねなく使い捨てられる恩恵があるといいます。
「汚れたアカウント」を掃除するより、新しくアカウントを払い出して試験終了後に閉鎖したい
資材を使った高度な検証を社外(個人環境)で試す場合、アカウント申請フローなしで自由にできる
さらに、これらのオーガニゼーション管理やアカウント作成を「Terraform Cloud(現在はHCP Terraform)」で行うことで、
ステートファイル管理が一元化
新規AWSアカウントの払い出し→スイッチロール設定→追加のTerraformワークスペース作成
すべてをコード化し、フリープラン内で500リソースまで無料利用可能
と、運用負担が大きく下がるそうです。使い終わったらアカウント自体を閉鎖すれば料金も最小限にできるため、 「使い捨て感覚」で自由にハンズオンを回せるのが魅力とのこと。
Q&Aでのやりとり
Q: おひとりさまでオーガニゼーションを組むと無料利用枠はどうなる? A: 無料枠はマネジメントアカウントだけに適用されるケースが多い。料金には注意が必要です。
Q: Terraform Cloudとの連携はどのくらい簡単? A: アカウント連携や環境変数管理がGUIで一元化されるので、思った以上にスムーズです。複数アカウントのステートを探す苦労がなく、非常に便利でした。
全体を通した感想: さらなる実践へ向けて
今回の「JAWS-UG東京 ランチタイムLT会 #22」では、AWSの新機能やサービスを実際に業務や趣味で取り入れてみたリアルな事例が満載でした。特に以下のポイントが印象的です。
GUIツールの恩恵と落とし穴 Infrastructure Composerやチャットボット系サービスのように、GUIで素早く構成やアプリを生成できる反面、不要な権限が付与される危険やカスタマイズ範囲が限定される問題もある。便利さを活用しつつ、最後の仕上げは自力で行うバランス感覚が必要。
Jenkinsからの脱却と、CI/CDモダナイズ 長く使われたJenkinsの環境は「Jenkinsおじさん問題」がつきまとう。GitHub ActionsやCodeBuildなどのマネージドサービス+Terraformなどを駆使すると、ソースコードと実行環境を分離して属人化を防げる。
社内向け生成AI活用 BedrockやConfluenceを組み合わせ、RAGを実装する事例が現実味を帯びている。Slack Botに会話型UIを導入し、自動で引用URLまで提示してくれる取り組みは、ドキュメント管理の新しい形を示唆。
個人検証に最適なオーガニゼーションズ+Terraform Cloud マルチアカウントでの試行を気楽にでき、不要になったらアカウント自体を閉じる——本来、企業向けに設計されたサービスを個人利用するメリットがうかがえる。
それぞれの登壇が短時間ながらも濃厚で、「うちでも取り入れたい!」という声が絶えないイベントでした。ランチタイムの1時間で、これだけ豊富な知見を吸収できるのはJAWS-UG東京ならではの強みといえます。
さらなる実践へ向けて
今回の知見は、あくまで各社や個人で試行錯誤した一事例にすぎません。 しかし、具体的なコード例や運用フロー、苦労した点などを共有し合うことで、他の参加者が同様の問題を解決する糸口が得られるのは、コミュニティ勉強会の醍醐味です。 もし、読者の皆さんが 「うちのJenkinsもどうにかしたい…」「Bedrockで社内ドキュメント検索を試してみたい!」 と思ったなら、ぜひ今回の発表を参考に、AWSの各種サービスを組み合わせた自分なりの解決策に挑戦してみてください。
JAWS-UG東京は毎月、同様のランチタイムLT会を開催しています。次回も多様なテーマが登場するはずですので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。勉強会後のアンケートやSNSで感想を共有することが、登壇者のモチベーションにも直結します。コミュニティへの参加とフィードバックが、新たなイノベーションを生むきっかけになるかもしれません。
以上、JAWS-UG東京 ランチタイムLT会 #22 のレポートでした。次のランチタイムを楽しみに、皆さんのAWS活用がますます加速することを願っています。
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