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Qiita Conference 2024 Autumn Day1 レポート
ここでは、2024年11月14日に開催された「Qiita Conference 2024 Autumn」Day1の様子を中心に、印象的だったセッションをピックアップしてご紹介します。オンライン開催のメリットを最大限に活かし、参加者同士が絶えずコメントを交わす光景はまさにエンジニアコミュニティならではの熱量でした。以下では、当日の空気感と学びを、まるで現場を体験するような形で振り返っていきます。
はじめに
オンラインならではの大規模カンファレンス
2024年11月14,15日に開催された「Qiita Conference 2024 Autumn」。日本最大級のエンジニアコミュニティであるQiita主催ということもあり、オンラインとはいえ3,000名を超える参加登録者が画面の向こう側に集結しました。
エンジニアの未来を創る場
本カンファレンスは、最新技術やテックトレンドだけにとどまらず、登壇者のキャリアや社会との関わりを語るステージでもありました。基調講演者の多彩な経歴やストーリーが加わることで、イベントの主眼は「新しい技術を学ぶ」にとどまらず、「自分の将来像を描く」というところまで自然と広がっていた印象です。 オンライン上のチャット欄やSNSでは、セッション開始直後から参加者が気軽に反応を投稿し合い、登壇者や他の参加者との距離が一気に縮まるムードが漂っていました。このようにリアルタイムで意見交換が盛り上がるのは、オンラインカンファレンスならではの強みを感じます。
セッションレポート①:「大企業の人事業務を20年以上支えてきた『超巨大ソースコード』の保守改善を支える技術の数々」
20年以上の歴史が生んだ壮大なコードベース
トップバッターとして登壇したのは、株式会社Works Human Intelligenceの工藤 雅人氏。人事・給与・勤怠など、巨大エンタープライズ向けの機能を20年以上にわたり詰め込み続けたソースコードを、いかに保守・運用しながら成長させているのか――その取り組みが非常にリアルに語られました。 規模は数千万行にもおよぶとのことで、聞くだけでも身構えてしまいそうですが、最新の法改正や拡張要件にもスピーディに対応している姿勢は「レガシーだからこそ得られる学びもある」と感じさせてくれます。
複雑なシステムを進化させる“6つのアプローチ”
工藤氏が取り組んでいるのは、以下6つの方策だといいます。
メトリックス計測 コードやモジュールの依存度を“見える化”し、定量的な分析に基づいて課題を抽出。
分割と削減 統合型システムゆえに機能が増え続けるが、あえて不要部分を切り捨てる決断も行う。
モダナイゼーション OSやミドルウェアのバージョンアップを怠らず、最新技術への追随を継続的に実施。
プロセス改善 開発プロセスを「工場」のようにとらえ、安定的な生産性を目指して手法をアップデート。
開発者育成 スポット研修や横断チームによるサポートで、必要なスキルを短期間で底上げ。
運用状況の可視化 実際に稼働している現場のデータを分析し、さらに削減すべき機能や強化すべき領域を把握。
こうした地道な改善の積み重ねにより、レガシーシステムの体質そのものをアップグレードしている点は、多くの参加者にとっても「自分の会社でもできるアイデアがあるかもしれない」と思えるはず。チャット欄にも「早速取り入れたい」「大規模開発の生の声は貴重」といった声が寄せられていました。
レガシーを逆手に、さらなる飛躍へ
レガシーコードを忌避せず、むしろ“熟成”されたドメイン知識の宝庫として活かす姿勢は、多くのエンジニアに新たな視点を与えたのではないでしょうか。工藤氏のプレゼンを通じて、「レガシーは成長のブレーキではなく、リファクタリングと創造性を発揮できる土台だ」というメッセージが強く伝わりました。
セッションレポート②:「EM、DevRel、技術広報、プリセールスエンジニア:技術×新たな挑戦で広がる働き方」
多様なキャリアに飛び込む“ハイブリッドロール”の魅力
続いて、株式会社セールスフォース・ジャパンの山本 学氏は、録画講演での登壇。エンジニア、マネージャー、技術広報、プリセールス…と、技術をコアにしながら周辺の複数ロールを同時に担うキャリアパスを「ハイブリッドロール」と呼び、その魅力を語りました。 山本氏自身、前職のYahoo!ではスクラムマスターやエンジニアリングマネージャーなど多様な役割を兼任し、そこから得られた自分なりの気づきやノウハウを余すことなく共有してくれました。
新しい役割への挑戦で得られる成長とレバレッジ
「技術広報に興味あるけど踏み切れない」「プリセールスエンジニアって具体的に何をするの?」という人向けに、山本氏はこう提案します。
異なる役割の掛け算で、価値が一気に高まる
慣れない領域に挑むためにも、自分の“得意分野”も組み合わせると継続しやすい
社内外コミュニティとの接点が増え、キャリアの幅が広がる
特に「エンジニアとしての知見×社外への情報発信」や「マネージャーとしての調整力×プリセールス」というように、複数のスキルを持つからこそ生まれる強みが大きいのだとか。これらの話は、キャリアに悩む人にとって大いに参考になるはずです。
“ワイルドな方”への一歩で得るもの
社内異動や転職など、“安定”か“新天地”かで悩む場面は少なくありません。山本氏は「不安はあって当然」としながらも、「迷ったときこそワイルドな選択を選ぶことで成長を得やすい」とエールを送りました。実際、プリセールスエンジニアやDevRelに飛び込んだことで、ビジネス視点やコミュニティマネジメントなどが身につき、エンジニアとしての強みを一段と活かせるようになったそうです。
プリセールスエンジニアという新たな舞台
現在山本氏が担うMuleSoftのスペシャリストSE(ソリューションエンジニア)は、技術に対する深い理解を武器に、顧客の課題解決を支援するロール。その魅力は「ただの営業では終わらない」点にあるといいます。API設計やクラウド活用など、エンジニアリングの視点を駆使しながらビジネスを動かす手応えは、まさに“技術×新たな挑戦”の醍醐味と言えるでしょう。
セッションレポート③(基調講演):「東京都知事選出馬!安野さんと考える『キャリアの転機と意思決定の思考法』」
異色の経歴を横断する安野氏
基調講演の注目株は、合同会社機械経営 代表の安野 貴博氏。AIエンジニア、起業家、SF作家、そして2024年の都知事選にまで出馬したという、多方面で活躍するキャリアが多くの参加者の関心を集めました。 大学で自然言語処理を学びつつ、コンサルティング会社へ新卒入社し、その後はスタートアップを起業。さらに、SF作家としてデビューするや否や政治の場へ――彼が持つ貪欲なまでの行動力とリスクテイクの精神には、チャット欄でも「なんという幅の広さ!」「自分も勇気をもらった」といった声が多数寄せられていました。
キャリアを“コールオプション”のように積み上げる
安野氏は、自分の挑戦スタイルを“コールオプションを買うのに似ている”と例えます。成功するときは爆発的なリターンを得られ、外れるときは思ったほど損失にはならない――そんなふうに、小さなプロトタイプや副業を試しながら、当たったものに大きく投資していく手法を続けてきたそうです。 この姿勢が、SF作家や政治活動といった一見かけ離れたジャンルへも抵抗なく飛び込む原動力になっているという話は、まさに“自分が本当にやりたいことをどのように形にするか”のヒントを与えてくれます。
都知事選という“フォーマット”の可能性
なぜ都知事選に出馬したのか――安野氏によれば、財政規模が大きい東京都だからこそ、AIなどのテクノロジーを公共財として育てる土壌があるのではないか、という考えがあったのだとか。短期間で大きな意思決定を行い、社会実装に一気に踏み切る首長のポジションだからこそ、デジタル行政の実験場として東京をモデルケースにしたかったという意欲が語られました。
こまめな振り返りがもたらす決断力
安野氏は毎月1回、数時間かけて自分の人生の方向性を見直す時間を取っているそうです。これによって「このまま同じ場所に留まるリスク」に気づき、新たなオプションを自然に探せるようになるとのこと。都知事選への出馬も、そんな定期的な自己点検が後押しした一例と言えます。ここには、エンジニアがキャリアを考えるうえで欠かせない“自己レビュー文化”とも通じる思想が感じられました。
まとめ:「挑戦を楽しむ」エンジニアが未来を形づくる
多彩な視点と勇気ある一歩
ここまでご紹介してきたように、Day1では巨大レガシーシステムの保守改善、複数のロールを掛け合わせるキャリア、政治×AIという異分野チャレンジなど、エンジニアをとりまく多様なトピックが取り上げられました。共通して言えるのは、どのセッションも“挑戦するエンジニア”に対して力強いヒントや背中を押すメッセージを発していたことです。
コミュニティとともに加速する学び
オンラインならではの即時フィードバックと双方向コミュニケーションが、参加者同士のつながりを深め、情報交換を活性化させていました。チャット欄やSNSを見れば、ひとつのセッション内容がトリガーとなり、その応用や発展アイデアが次々と生まれる様子がうかがえ、まさに大規模コミュニティのエネルギーを体感できる一日でした。
明日の自分を変えるために
技術が猛スピードで進化する今、エンジニアに求められるのは専門領域を深めるだけでなく、キャリアや社会とのつながりも柔軟に再設計する力かもしれません。今回のカンファレンスで語られた数々の実践知や挑戦ストーリーは、まさに“明日からの行動”につなげやすいものばかり。未来は待っていても変わりませんが、「挑戦を楽しむ」エンジニアが一人でも増えれば、エンジニアコミュニティと社会そのものが面白い方向へ形づくられていく――そんな予感を抱かせるイベントだったように感じます。
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