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AIエージェントはAzureインフラも構築できるのか?ライブで実際にやってみる回!レポート
はじめに
2025年4月11日に開催された「HCCJP (ハイブリッドクラウド研究会) 第61回勉強会」では、「AIエージェントはAzureインフラも構築できるのか?ライブで実際にやってみる回!」と題し、実際にLLM(大規模言語モデル)を用いてAzureのリソースを構築するデモが行われました。
ハイブリッドクラウド研究会は、毎月第2金曜日14時にオンラインで開催されているコミュニティです。オンプレやクラウド、さらにAIなどのテーマを柔軟に取り上げ、実務に活かすための情報交換を継続的に行っています。今回は、注目度が高まり続けるAIエージェントを活用し、Azureインフラをどこまで自動構築できるのか、リアルタイムで挑戦するという内容でした。
さらに、毎月恒例となっているMicrosoftの高添 修 氏による「Adaptive Cloud」アップデートも実施され、Azure ArcやAzure Stack HCIなどハイブリッド・マルチクラウドの最新情報が共有されました。本レポートでは、当日の内容を時系列で振り返りつつ、そのポイントをまとめます。
オープニング:今回のテーマと進め方
冒頭では、主催者である日本ビジネスシステムズ株式会社の胡田(えびた)氏から、イベントの趣旨と進め方が簡単に紹介されました。
テーマ:「AIエージェントがAzureインフラをどこまで構築できるか?」
形式:実際にLLM(AI)に対して「Azure上にインフラを作って」と依頼する様子をライブで実演
ゴール:成功するかどうかは“出たとこ勝負”だが、AIエージェントの現状の実力を体感する
質問はスライド(匿名質問プラットフォーム)を使って随時受け付ける形式で、視聴者が投稿すればセッション後半でQ&Aの時間を取るとの案内もありました。
セッション1:AIエージェントでAzure環境をライブ構築
1. AIエージェントとは何か
まず、胡田氏から「AIエージェント」の定義は明確に一本化されていないが、LLMを使い自律的に目標達成に向けて行動できるAIが、広く「エージェント」と呼ばれているとの説明がありました。とりわけ、コーディング領域ではGitHub CopilotやCursorなどが進化を遂げており、インフラ領域でも自動化の波が来つつあるという状況が語られました。
Azure環境においては、すでにREST APIやCLI、Bicep/ARM、Terraformなど自動化を支える仕組みが豊富に用意されているため、AIが実際に構築を肩代わりするポテンシャルは高いといえます。
2. Microsoft公式ツールも進化中
Microsoft Copilot for Azure(GA) Azureポータルでやりたいことを入力すると、構築ステップやサンプルテンプレートを提示してくれる。ただし現時点では、「実際にデプロイまで自動でやる」というよりも“ヘルプ機能”に近い。
AI Shell(プレビュー) ローカルでのCLI操作をAIが補佐してくれる形。質問すると最適なAzure CLIコマンド例を出してくれるので、手順やSyntaxを把握しなくても作業が進められる。
一方で、今回のデモでは、GitHub CopilotエージェントやClineなど、より汎用的なLLMエージェントツールを使い、Azureリソースを本格的に構築してみることに挑戦しました。
3. 簡単な構成をAIに指示 → 自動構築
まずはウォーミングアップとして、比較的単純な指示をAIに与え、単一のAzure VMやVNetを作る流れを試しました。ポイントは以下の通りです。
Clineで実験
初期設定が少なく、指示が曖昧だったため、AIがWindows環境をLinuxと誤認したり、PowerShellスクリプトとBashスクリプトが混在したりで混乱。
結果的にクラッシュしてしまい、再挑戦が必要に。
GitHub Copilotエージェントで再挑戦
「Azure Best Practicesを参照する」オプションが効いており、Bicepでのデプロイを自動生成。
ユーザが「Windowsで実行して」と追加指示すると、AIが適宜スクリプトを修正し、Bicepデプロイが成功。
リソースグループ→VNet→VMの順で作成され、エラー時は原因を推定して修正、再実行まで行う様子が確認できた。
こうして、単純なVMとネットワーク構成程度であれば、AIは不具合を自ら検出して再試行し、結果的に問題なくリソースを作り上げる力を持つことが実証されました。
4. より複雑な構成をリクエスト:巨大テンプレート生成
続いて「リアルタイム処理が必要な動画ストリーミングを世界各地で動かす大規模なアーキテクチャを全自動で構築・運用して」という、かなり無茶な指示を出したところ、AIは大まかな要件を理解し、
モジュール分割されたBicepファイル
AKSやFront Doorを組み合わせたマルチリージョン構成
「CICDパイプライン」「自動運用スクリプト」の雛形
など、膨大なファイル群を一挙に生成しました。実際にそれらをデプロイして検証するには時間も手間もかかるため、今回は構築完了まで走らせなかったものの、「無茶な要求に対しても一応“大規模テンプレート”を形だけ作ってしまう」のがAIエージェントのすごいところだとわかります。
ただし、
生成されたコードが本当に正しく動くか
セキュリティや拡張性などを十分満たしているか
途中の問題をどうやって総合的にテストするか
といった評価プロセスは、依然として人間のエンジニアが担う必要があります。“作る”こと自体は爆速になったが、ベリファイが課題という指摘が印象的でした。
Microsoft “Adaptive Cloud” Updates
毎月恒例のコーナーでは、日本マイクロソフトの高添 修 氏から、Azure ArcやAzure Stack HCIなどハイブリッドクラウド関連の最新アップデートが紹介されました。
Azure Arcジャンプスタート:ビデオ解説公開 既存のジャンプスタートスクリプトを使った構築手順を動画で丁寧に解説した教材が登場。オンプレやエッジへのArc導入がより取り組みやすく。
Azure Stack HCI 2503版リリース OSバージョン「22H2」から最新の「23**系」への移行が進行中。2503という新バージョンでインストール手順やアップグレードのやり方が刷新され、ドキュメントも整備されている。
Azure LocalでAIやVideo Indexerの発展 On-PremにVideo Indexerを持ち込んだり、Azure Arc上でAIを動かしたりなど、“クラウド機能をローカルで”実現する取り組みがますます充実。
高添氏いわく、**「AIやArcなど新要素が怒涛の勢いで投入される中、基礎概念をしっかりと理解しつつ、最新機能をキャッチアップしていくのが大切」**とのこと。Azure Stack HCIやArcを検証するなら今がチャンス、というメッセージが伝わりました。
全体を踏まえた感想 〜自動構築がもたらすインフラエンジニアの変化
今回のHCCJPでは、AIエージェントを使ったAzure構築のライブデモが特に印象的でした。単純なリソースを作る程度であれば、コマンドの入力補完を超えた“自動的な試行錯誤”でエラーを直しながら最終的に正しくデプロイする姿は、「エンジニアの手間を本格的に肩代わりできる」ポテンシャルを感じさせます。
ただし、一方でAIが作り上げた構成の正しさを検証し、調整する役割は不可欠である点も明確になりました。「大規模なマルチリージョン構成」「AKSのオートスケールとセキュリティ」「CICDの自動運用」など複数のコンポーネントをつなげると、AIはファイルを膨大に生成して一見すごいものを作りますが、ベリファイや運用上の合否を人間が判断しなければなりません。
高添氏のAdaptive Cloudアップデートでも指摘されたように、学ぶべき基礎(ネットワーク、セキュリティ、OSなど)と、AIを積極活用して短期に成果を出すスキルの両輪が今後さらに重要になりそうです。クラウド技術とAIの進化が重なり合う今、エンジニアとしては「変化の早さ」に飲まれず、体系だった知識を保ちながらAIと協業する姿勢が不可欠といえます。
新年度を迎えたばかりのこの時期、ぜひ自社のインフラ運用や学習計画に“AIエージェント”を試し、課題やメリットを肌で感じるところから始めてみてはいかがでしょうか。
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