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社会を軸としてエンジニアリングをする中で得られた成長と信念 - CTO名鑑 vol.5 イベントレポート
1. イベント概要
2024年12月13日に開催された「社会を軸としてエンジニアリングをする中で得られた成長と信念 - CTO名鑑 vol.5」は、エンジニアのキャリアを考えるうえで欠かせない視点を深掘りするイベントとして実施されました。本シリーズ「CTO名鑑」では、さまざまな道を経てCTOというゴールに到達した方々をお招きし、そのキャリアの変遷や学びを伺うことで、「エンジニアとしてのロールモデル」を見つける きっかけを提供しています。
第5回目では、2024年に行われた「CTO of the Year」でAudience Awardを受賞された、アセンド株式会社 取締役CTO 丹羽 健(にわ たける)氏をゲストに迎えました。丹羽氏は新卒で大手SIerに入社し、そこから30歳でスタートアップの世界に飛び込み、アセンドの創業メンバー兼CTOとして活躍。さらにコミュニティ活動にも積極的で、TSKaigiの理事やProduct Engineer Nightの主催など多岐にわたる試みを実践しています。
本稿では、丹羽氏が掲げる「社会を軸としたエンジニアリング」観点で、どのようにキャリアを積み、何を学び、どんな道のりを歩んだのかを中心にお伝えします。
2. 基調講演:社会を軸としてエンジニアリングをする中で得られた成長と信念
2.1 自己紹介と経歴のあらまし
はじめに丹羽氏の自己紹介からスタートしました。丹羽氏は1990年生まれで、新卒で大手SIer(日鉄ソリューションズ)に入社したのち、30歳でスタートアップへ転身。現在はアセンド株式会社の創業メンバー兼CTOを務める人物です。 さらにTSKaigiの理事や、エンジニアコミュニティであるProduct Engineer Nightの主催といったコミュニティ活動にも力を入れており、「社会を豊かにする」という個人的なミッションを軸に、多彩なチャレンジを続けています。
2.1.1 幼少期から大学院まで
幼少期に父親を亡くした経験から、「人生の意義とは何か」を考えるようになった
大学時代、飲食店アルバイトや一人旅で「人の役に立つ働き方」を好む自分を再認識
研究室で3年ほど徹底的にプログラミングに没頭し、「ハードワークで論理的に突き詰める姿勢」 を学ぶ
2.1.2 SIerでの新規事業経験
新卒でSIerに入社し、大規模案件の炎上を経験して「何のために開発しているのか」を問い直す
社内の新規事業創出チームで、プロダクト開発の面白さや価値を実感。「ユーザーに使われてこそエンジニアリングの意味がある」思考に変わる
2.1.3 アセンドへの参画
「社会課題を解決する」という自身のミッションと、物流業界が抱える課題への強い思いを持つ仲間たちが一致
CTOとして創業メンバーとなり、物流向けSaaS「ロジックス」の開発を推進。社員数が少ない中でもプロダクトをリプレースし、高い成長を実現中
2.2 個人ミッション「社会を豊かにする」とは
丹羽氏が強調するのは、「個人としてのミッションを持つこと」 の大切さです。幼少期に父親を失った経験や、社会に対してどう役立つのかを模索する中で、「自分がこの世に残せるものを作りたい」という考えが深まり、「社会を豊かにする」という言葉に行き着きました。
社会観のスコープは人それぞれ
学生にとっては学校が社会かもしれないし、イーロン・マスクにとっては宇宙が社会かもしれない
大きくても小さくても、まずは自分のやりたい形を定義すればよい
自分のミッションを行動指針にする
経営で困難な意思決定を迫られた際、「社会を豊かにする」という軸で判断
半年〜1年単位で内省しながら、自分がいま取るべき行動を考える
言葉を持つことでブレなくなる
「社会を豊かにする」のように、しっくりくる言葉を自分で設定し直すと、日々の行動が明確になる
2.3 コミュニティ活動:TSKaigiやProduct Engineer Night
技術者コミュニティ運営への情熱も、「社会を豊かにする」 というミッションに根ざしているといいます。丹羽氏は、 TypeScriptの大規模カンファレンス「TSKaigi」の理事や、エンジニア間の学びを生む「Product Engineer Night」の主催など、積極的にコミュニティに貢献しています。
TSKaigi: TypeScript分野の大規模イベント。コミュニティや登壇者を育成しながら、次回は2日開催を予定
Product Engineer Night: フルスタックやプロダクト志向のエンジニアが知見をシェアする場
仕事だけでなく、こうしたコミュニティ運営や産業全体の活性化が「社会を軸とするエンジニアリング」における重要テーマ
3. Q&Aセクション
基調講演に続き、参加者から寄せられた質問を丹羽氏が回答。以下、要点をまとめます。
3.1 コミュニティと時間の使い方
「CTOとして業務も多いのに、どうやってTSKaigiやProduct Engineer Nightを運営しているのか」という質問には、
基本は夜の時間やプライベートタイムを活用し、週に数時間ずつコミュニティ活動に割り当てる
運営仲間との信頼関係を築き、役割を分担する
会社にも理解を得て、採用や技術広報にプラスになる方向で協力を仰ぐ
以上の工夫でバランスを取っているとのことです。
3.2 フルリプレースの説得
リリース前なのに一から作り直す「フルリプレース」を実行した際の説得方法については、
経営者と共通言語を持つこと(何がボトルネックか、どのくらいの期間で進めるかを具体的に示す)
現状のソースコードや機能設計の課題を分かりやすく可視化し、「このままでは事業としてスケールできない」点を丁寧に説明
短期的なデメリットと長期的なリターンを示し、納得感ある計画を提示
が重要と語られました。
3.3 個人ミッションとライフワークバランス
ライフワークバランスを取りつつもハードワークできるのは「個人ミッションが自分の軸になっているから」とのこと。家族や周囲の理解を得つつ、働き方を柔軟にアレンジし、あとは 「人に頼る」 能力も鍛えることで無理なくやれているそうです。また、ミッションの大きさは人それぞれで構わないと強調されました。
4. 全体を踏まえた感想 〜「自分の軸」を見つめ直すエンジニアリング
今回の「CTO名鑑」では、個人の価値観やミッションがどのようにキャリアを形作り、エンジニアとしての行動原理になっているかをまざまざと見せつけられました。新卒で大手SIerに入りながら新規事業でプロダクト志向を学び、そこからアセンドを創業メンバーとして盛り上げ、さらにはコミュニティ活動で社会全体を巻き込む——丹羽氏のストーリーは、一見すると大きな流れに乗っているように見えますが、じつは 「幼少期の経験」「自分が残したいもの」「困難に直面した内省」 というプロセスの積み重ねが土台にあることがわかりました。
エンジニアにとって、目の前のコードや技術に没頭するのは楽しい一方、しばしば「なんのため?」を見失いがち。しかし、丹羽氏が説く「社会を豊かにする」という個人ミッションを持つだけで、キャリアの岐路で後悔しない判断がしやすくなり、組織やコミュニティへの巻き込み方も変わります。さらに、生成AIなど新しい技術が急加速する今こそ、目先のツールだけでなく、どんな価値を届けたいかに照らして行動することがエンジニアの武器になるはずです。
もし自分の軸がわからないと感じたなら、年末年始のまとまった時間を使って——あるいは何かの転機に——まずは「何が好きで、誰の役に立ちたいのか」を書き出してみましょう。そこに見つかったキーワードから派生して、じっくり「自分のミッション」を言語化してみるのです。それがプロダクトを作るモチベーションとなり、結果として社会や組織を良い方向へ導く鍵になるかもしれません。
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