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『求められるQAエンジニア』とは イベントレポート
はじめに
2025年4月9日、「『求められるQAエンジニア』とは ‐ いとうよしきさん、tsuemuraさんに聞くキャリアの歩み方」というオンラインイベントが開催されました。 近年はアプリケーションやサービスが次々に誕生し、開発現場はよりスピーディかつ品質の高いものを求められています。その背景として、QAエンジニアの組織構築やテスト自動化の推進など、品質保証の重要性がますます高まっているのです。 本イベントでは、長年現場でキャリアを築いてきたお二人、株式会社カカクコムの伊藤 由貴さん(@yoshikiito)とAutify, inc.の末村 拓也さん(@tsueeemura)をお招きし、「QAエンジニアとして組織から必要とされる存在になるにはどうすればいいのか?」という問いをテーマにじっくり語っていただきました。 この記事では、当日のセッションとQ&Aを軸に、学びとなったポイントをまとめます。ご自身のキャリアを見直すきっかけにしてみてください。
第1章 イベントの概要
イベント概要
日時: 2025年4月9日 19:00~20:15
テーマ: 「『求められるQAエンジニア』とは ‐ いとうよしきさん、tsuemuraさんに聞くキャリアの歩み方」
狙い:
QAエンジニアとしての専門性を高めるモチベーションを再確認
登壇者お二人のキャリア変遷を参考に、自分事として落とし込む
キャリアにおける具体的なアクションやマイルストーンを見つける
参加者への書籍プレゼント企画として、伊藤さん・末村さんの著書から抽選で6名にプレゼントが用意されました。QAエンジニアのキャリア形成をさらに後押しする豪華な特典に、参加者の期待も高まります。
タイムテーブル
19:00〜19:02 オープニング・ご挨拶
19:02〜19:17 「やりたいことはない。しかし不安と迷いはある。」というQAエンジニアのための考え方
株式会社カカクコム 伊藤 由貴(@yoshikiito)
19:17〜19:32 「自分の軸足を見つけろ」
Autify, inc. 末村 拓也(@tsueeemura)
19:32〜19:55 パネルディスカッション
テーマ① キャリア観点やキャリア軸の変遷
テーマ② 転職・社外活動へのモチベーション
テーマ③ お互いのキャリアで聞いてみたいこと
19:55〜20:05 Q&A
〜20:15 クロージング
第2章 「やりたいことはない。しかし不安と迷いはある。」というQAエンジニアのための考え方(伊藤さん)
2-1. 不安や迷いはなくならない
登壇の冒頭、伊藤さんは「新卒で第三者検証会社に入り、最初はテスト実行者からスタートしたものの、途中からテスト自動化を担当することになった」と振り返りました。周囲と同じようにテスト設計を積み重ねるキャリアを描くはずが、そのレールから外れる形になり、不安や迷いが一気に押し寄せたそうです。
ところが伊藤さんいわく、「不安や迷いを完全になくすことはできないし、なくさなくてもいい」。人と比べてしまう自分を責めるよりも、 “希少性を発揮できる場所にポジショニングする” という考え方が大事だと語りました。
2-2. 希少性とポジショニング
「自分だけが持つ強み」が組織内でどこまで必要とされるかを客観的に見極め、そこに身を置くことで不安を抑えながら、組織から求められる存在になる――伊藤さんはこれを「希少性」と呼びます。
たとえば周りがテスト設計に集中しているなら、自分は自動化や新しいツールの導入を率先して担う、といった形で差異化を生む。自分一人だけがその領域をできるのであれば、いつしか「必要とされる人」として組織に欠かせない存在になるわけです。
2-3. ポジションが消える前に、自分が壊す
伊藤さんは 「ポジションは必ずなくなる」 とも強調しました。1度は“希少性”を発揮できたとしても、いずれ技術進歩や周囲のスキルアップによって、同じレベルまで追いつかれてしまいます。そこで伊藤さんが選んだ戦略は「自分からポジションを壊しにいく」というもの。周囲に教え込み、コモディティ化してしまうのです。
自分だけの特権を長く守り続けるのではなく、あえてノウハウを共有し、新たにやりたいことを探しに行く。その姿勢こそが「求められ続ける」QAエンジニアとしての道だと締めくくられました。
第3章 「自分の軸足を見つけろ」(末村さん)
3-1. 軸足をアップデートしていく
続いて登壇した末村さんは、まったく異なる角度から「軸足」というキーワードを提示しました。軸足とは、「自分が大切にしたい要素、説明したい核」とのこと。
大学時代は文学部哲学科を卒業し、最初は倉庫勤務から始まったものの、最終的にはQAエンジニアや開発、そしてエヴァンジェリストへと幅広く転身してきました。そのときどきで、軸足を「物流が好き」→「仕組み作り」→「レバレッジ」と変えていくことで、周囲からのニーズに合わせて自分を更新してきたのです。
3-2. スキルをハコに詰めるのではなく、“なぜ”を語る
転職に苦労した頃の失敗例として、「自分が持っているスキルをただ並べるだけで、どんな想いで仕事をしているかを伝えられなかった」と振り返ります。世の中はスキルセットだけでは動かせない。何が好きで、どのように課題を感じ、どう解決してきたかを語ることで、相手に “この人と仕事がしたい” と思ってもらえるわけです。
末村さんは「やりたいこと=ハードスキル」にこだわりすぎるのではなく、「自分がどんな視点を持ち、どんな価値を組織に与えられるのか」を軸足に据えるべきだと強調しました。
3-3. 自分でニーズに“向きを合わせる”
ときには「大好きな登壇やマーケ的な活動に専念したい」という気持ちが出てくる。しかし、そのとき市場や組織が求めるのは別の領域かもしれない。末村さんは「どんな仕事をしていても、あるいはQAに戻っても、最終目的は周囲のレバレッジを生むこと。そこがズレなければどんな役割でも楽しめるし、求められやすい」と語りました。
第4章 パネルディスカッションとQ&A
パネルディスカッションでは、以下の3つのテーマを中心に話が展開しました。
4-1. テーマ①:キャリア観点やキャリア軸の変遷
伊藤さんは「自分自身が不安を消したいわけではなく、うまく付き合う道を探している」、末村さんは「好きかどうかより、世の中が自分に何を求めているかに軸足を合わせる」とそれぞれの視点を披露。お二人とも、“自分がどうしたいか”と“社会のニーズ”の間を行き来しながらキャリアを切り拓いている印象が強く残りました。
4-2. テーマ②:転職・社外活動へのモチベーション
伊藤さんは、社内だけでは得られない情報や刺激を求めてコミュニティに足を運び始め、書籍や翻訳などへも繋がったといいます。
末村さんも、会社やプロダクトを“外”とつないでいく仕事にやりがいを感じ、サポートエンジニアや講演活動など幅広く挑戦。いまはマーケティングチームに身を置きながら「品質の投資価値」を世の中に広げる役割を担っています。
4-3. テーマ③:お互いのキャリアで聞いてみたいこと
「3年後、どんな働き方をしていると思う?」という話題には、「正直わからない」「技術の進歩や組織の状況でコロコロ変わる」など、リアルな声が飛び出しました。むしろ「どの道に行こうが、自分の軸足は何かをレバレッジすること」や「仲間とハッピーに開発を進めること」に行き着く、といった内容で盛り上がりました。
第5章 イベント後半:Q&Aから見えた参加者の悩み
5-1. QAコミュニケーションのコツ
Q&Aでは「開発者からバグ報告を嫌がられたらどうする?」といった質問も寄せられました。伊藤さんは「再現手順などを具体的に示し、タイミングや言い方も配慮する」と答え、末村さんは「結局ソフトウェア開発は行ったり来たり可能なものだから、まずやってみて、結果を共有して、早く問題を見つけよう」と提案。ソフトスキルと実行力の両方が重要との見解で一致していました。
5-2. キャリアチェンジの初手は「やってみる」
「テストエンジニアからQAエンジニアに移るには?」という問いには、お二人とも「やってしまうのが早い」と共通の答えを示しました。もちろん組織内の承認は必要な場合もありますが、まず小さく動いてみることが大切。許可を取りに行くと却下されがちなので、怒られたらやめる方が楽なくらいの気持ちでチャレンジする姿勢が、結果的に道をひらくとのことです。
第6章 全体を踏まえた感想:「不安も迷いも原動力になる」
伊藤さんの「やりたいことはない。でも不安と迷いはある」、末村さんの「軸足は更新するもの」という言葉が象徴的でした。 キャリアを考える上で、やりたいことが見えないのは当たり前かもしれません。それよりも、手元にある強みや経験をどこに“ポジショニング”して、どう軸足を据えて“向きを合わせる”か。それこそが、QAエンジニアとして組織から必要とされるかどうかの分岐点になるように思いました。 「不安や迷いがあるからこそ、人と比べて落ち込むのではなく、そこから希少性を探る」「自分のスキルをただ詰め込むのではなく、どんな価値観で働きたいかを語る」。このような姿勢が、人間的な魅力として周囲に伝わるのかもしれません。
QAエンジニアは今後さらに業務範囲が広がる可能性があります。要件定義や品質戦略、開発者との協業など、どの場面でも“自分が何をしたいか”と“世の中のニーズ”を行ったり来たりする作業が必要になるでしょう。そのとき、不安や迷いはむしろ前に進むための大切な原動力になる――本イベントが教えてくれたのは、そうしたポジティブな視点でした。 自分の軸を常に見直しながら、まずは一歩踏み出して試してみる。そんなQAエンジニアこそ、まさに「求められる存在」だと感じます。これからのキャリアに迷う方は、ぜひお二人の言葉をヒントに、やってみたかった一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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