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「ITエンジニアの転職学 ー 年収1000万円、マネジメントで超えるか、スペシャリストで超えるか」イベントレポート
公開
2025-04-13
更新
2025-04-13
文章量
約3379字
はじめに
2024年12月16日に開催された「ITエンジニアの転職学 ー 年収1000万円、マネジメントで超えるか、スペシャリストで超えるか」は、ITエンジニアがキャリアの先にある年収1000万円の壁をどう突破するかに焦点を当てたオンラインイベントでした。 登壇者は、ITエンジニア向け転職支援プラットフォームを長年運営するForkwellのメンバーとして、数多くのエンジニアのキャリア支援を行ってきた赤川 朗氏。 赤川氏は事前に、年収1000万円を超えるエンジニアたちへのアンケートやヒアリングを実施。その知見と、Forkwellに集まる2万人以上の年収データを踏まえながら、「年収1000万円を超えるエンジニアの特徴」や「マネジメントとスペシャリスト、それぞれの越え方」について語りました。
本レポートでは、講演の要点とQ&Aセッションで深まった話題をまとめています。キャリアの選択肢を検討中のエンジニアにとって、具体的なストーリーや行動指針が満載の勉強会となりました。
https://forkwell.connpass.com/event/337082/
1. 講演の背景と狙い
本イベントは、Forkwellがシリーズで展開している「ITエンジニアのための転職学」の第6弾です。前回までは年収800万円付近までのキャリアの伸ばし方を深掘りしましたが、今回はさらにハードルの高い「年収1000万円ライン」にフォーカスしました。 登壇者の赤川氏は、事業責任者やDevRelチーム立ち上げを経験し、特に年収800万〜1300万円層のエンジニアを中心に転職支援を続けています。イベントでは、自身がこれまで支援してきた事例や、約2万人の年収データ、さらに新たに行ったアンケート調査を元に「年収1000万円を超える実例」を具体的に分析。それぞれのエンジニアが、どのようにキャリアを形成し高い年収に至ったのか、その背景にあるマインドや行動特性を紹介しました。
2. 複数の事例から見る「年収1000万円到達」ストーリー
赤川氏はまず、年収1000万円を超えたエンジニア26名のインタビュー・アンケート結果を紹介しました。大半が自社開発のWebサービス企業や大手事業会社に所属し、バックエンドやインフラ、SREなど技術寄りの専門性で成果を出している人もいれば、テックリードとしてチームを牽引する役割で評価されている人、マネジメントにコミットしている人など、キャリアは多岐にわたります。
事例1:テックリード・スペシャリストとして到達
バックエンドエンジニアからテックリードに昇格。
システム全体のアーキテクチャ設計をリードし、困難な課題の解消で社内外にインパクトを与える。
技術負債を積極的に解消し、組織横断で活躍する姿勢が評価につながった。
事例2:マネジメントで到達
エンジニアリングマネージャーとしてチーム規模の拡大や採用、育成を担う。
チーム全体の成果を最大化する行動が高く評価され、1000万円を突破。
プレイヤーから離れることに当初抵抗はあったが、組織にレバレッジをかける面白さを感じている。
これらの例からも、担当領域や会社規模、在籍期間などでパターンはさまざま。共通するのは「自分の役割を明確にし、周囲や事業へ大きなインパクトを与えている」点でした。
3. 年収1000万円に到達したエンジニアに共通すること・しないこと
多数のインタビューを元に、赤川氏は年収1000万円エンジニアに「ある程度」共通していた特徴を4つの観点から整理しました。
マインドセット
短期的・個人的な視点ではなく、長期的・全体最適を意識する。
役割に強く固執せず、必要とあらば臨機応変に立ち回る柔軟さ。
オーナーシップ・ラストマンシップを持ち、最後まで責任を引き受ける。
行動特性
組織やビジネスを斜めから眺め、「仕事を作る」意識。
技術を武器にしながらも、多様な業務(採用・広報・ビジネス要件整理など)に自ら飛び込む。
学びを日常化し、新たな知識やスキルを吸収し続ける。
組織ビジネス理解
経営者や投資家とのコミュニケーション、数字の把握を通じて事業全体を捉える。
社内政治や人の感情面への配慮も欠かさない。
自社のマーケット・顧客に対する理解を深め、技術の貢献を最大化。
市場価値の手綱を握る
自身の得意スキルを掛け合わせて希少性を高める。
外部との情報発信や英語の習得で視野を広げる。
必要があれば転職も選択肢とし、年収・やりたいこと双方を満たせる環境を狙う。
一方で、ライフスタイルやお金へのスタンスなどは人によってバラバラ。「1000万円を得るキャリアはこう」というテンプレートは存在せず、各々の得意分野や価値観を生かしてキャリアを築いているのが実情だといいます。
4. マネジメントで超えるか、スペシャリストで超えるか
イベントのタイトルにもなった問いへ、赤川氏は「どちらに進んでも到達できるし、実はどちらかを明確に選ぶというより、周囲に選ばれて役割が決まっているパターンが多い」と指摘します。
“マネジメントへの打診”を受けて挑戦し、適性を発揮するケース
当初はプレイヤー志向でも、やってみた結果マネージャーとしてのレバレッジが楽しくなり継続している。
逆に合わないと判断すればスペシャリストに戻る例もあり、振り子のように役割を行き来する人もいる。
スペシャリストとして自己研鑽を続ける人も、組織貢献意識が必須
技術課題で圧倒的に成果を出しつつ、チームや後輩への情報共有、ドキュメンテーションなどをおろそかにしない。
ある程度高額な年収テーブルを持つ企業か、巨大なテック企業・外資を狙うことでスペシャリストでも大台に到達。
また、マネージャー・スペシャリスト以外にも、プロダクト責任者や新規事業の立ち上げに傾倒して年収1000万円を超える人も。組織やフェーズによって役割はいくらでも変化し得るという柔軟さが印象的でした。
5. Q&Aセッションでの注目ポイント
後半の質疑応答では多数の質問が寄せられました。特に議論が深まったのは以下のテーマです。
転職以外でキャリアアップする際に有効なアプローチは?
自分で仕事を作り、やりがいと成果を両立していく。時間をかけて技術的・マネジメント的な実績を社内で積み重ねる。
フロントエンドとバックエンド、どちらが高年収に繋がりやすい?
近年は双方ともに可能性あり。むしろ複数の専門性や組織貢献がカギに。
早くに年収1000万円を達成した人のその後の伸びしろは?
若手で高年収を実現しても、その先さらに伸ばすには転職先や外資系など選択肢が限られがち。周囲をレバレッジする役割へ発展させるか、より技術特化するかで道が変わる。
6. 全体を踏まえた感想
「年収1000万円」の先に広がる新たなチャレンジ
年収1000万円は必ずしも「ゴール」ではなく、大企業や外資であればさらに上を狙えるかもしれません。とはいえ、多くのエンジニアにとっては大きな壁。今回のイベントでは、その壁を突破した人たちがどのようなマインドと行動で成果を築いてきたのか、具体的な声を聞けたのが最大の収穫でした。
「仕事を作る」「自分より上位のテーマを意識する」
事例に共通していたキーワードは、この2つに尽きると言っても過言ではありません。降りてくるタスクを淡々とこなすだけではなく、自ら課題を設定し、その責任を引き受ける姿勢こそが、高い評価と希少価値に繋がるのだと感じます。 また、「自分を後回しにできるほどのテーマ」に熱狂できれば、技術リーダーでもマネージャーでも、さらには事業サイドでも、新たな可能性が開かれるように思われました。
転職が全てではない
最後に強調されたのが、社内で活躍を積み重ねる道もまた大いにアリ、ということ。現職の環境で大きなテーマを任され、その経験がさらに希少価値を高める、というパターンも少なくありません。転職を急がず、まずは「自分が使えるリソースを活かして課題を解決できるか」を考えてみても良さそうです。
今後もForkwellでは、「ITエンジニアのための転職学」シリーズとしてエンジニアキャリアに役立つ知見を発信予定とのこと。より多様な人生や価値観を踏まえつつ、自分自身の居場所と年収のバランスを見極めるヒントを得られる機会が増えていきそうです。
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