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エンジニア成長を加速させる目標管理とは? 〜Sansan/ラクス/freeeのリアルを語る〜 レポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約3120字
はじめに
2025年2月17日に開催された「エンジニア成長を加速させる目標管理とは? 〜Sansan/ラクス/freeeのリアルを語る〜」では、BtoB SaaS業界を代表する3社のエンジニアリングマネージャーが集結し、それぞれの組織で実践されている目標管理や評価制度、エンジニア育成のポイントを共有しました。 登壇されたSansan・ラクス・freeeはいずれも急成長中であり、エンジニアのキャリアサポートや成果の出し方にも独自の取り組みが多くなされています。本レポートでは、各社の発表(LT)とパネルディスカッション、そしてQ&Aから浮かび上がった知見をまとめます。
Sansan株式会社:エンジニア育成する爆速フィードバック文化
登壇者: 松原 悠斗 氏
Sansanが提供する「Bill One」のエンジニアリングマネージャーとして、松原氏は360度評価や頻繁なワンオンワンなどの施策を通じて、エンジニアの成長を後押ししていると紹介しました。
会社全体のミッショングレード制度 全社員が共通のグレードで評価される仕組みを持ち、エンジニアも同じ土俵で議論可能。
Bill One独自の職能定義 いわゆる技術力やレビュー力に加え、チーム貢献や文化の体現度も評価要素に含める。
市販期ごとの360度評価 成果・チャレンジ・今後の期待といった視点を複数の同僚からフィードバックし、立体的な評価を実施。
頻繁なフィードバックの文化 360度評価とは別に、マネージャーや同僚間で日常的にフィードバックする場を設けることで、問題や成長ポイントを早期に共有。
松原氏はこうした取り組みの効果として、「評価の納得感が高まり、組織離職率が低くなっている」と述べました。一方で、頻繁なフィードバックによるマネージャー側のコスト増などの課題もあるため、今後も改善を続けていくとのことです。
株式会社ラクス:短期的成果よりも中長期的成長を重視した評価
登壇者: 松浦 孝治 氏
ラクスは「楽楽明細」「楽楽精算」などBtoB SaaS製品の開発で急成長しており、エンジニア組織の拡大に合わせて評価制度や目標管理を整備してきました。
コンピテンシー評価とパフォーマンス評価 同社では「コンピテンシー(行動特性)」と「パフォーマンス(短期的な成果)」の2軸で評価する。特にコンピテンシー評価を重視し、中長期の成長を促すような設計。
評価プロセス 半期ごとに目標を設定し、月次面談で進捗をすり合わせ。期末には自己評価・一次評価を実施し、最終的にキャリブレーションで納得感を得る。
現場での課題と対策 目標管理は「面倒」と捉えがちで、当初はエンジニア・マネージャー双方の負担が大きかった。現在はゴール設定をトップダウンで明確にしたうえで、月次面談や目標のテンプレ化などによってコスト削減と納得感アップを両立。
松浦氏は「本来、目標管理は“評価のため”ではなく、エンジニアを成長させる仕組み。成果を最大化するため、面倒さをどう減らしつつゴールを共有するかが鍵」と強調していました。
freee株式会社:成長を軸にした柔軟な評価運用
登壇者: 辻 裕士 (sentokun) 氏
freeeは「誰もが自由に経営できる世界を実現する」ために、統合型クラウドERPを多数展開しています。エンジニアリング組織は急拡大中で、以下のような制度や工夫があるとのこと。
インパクトマイルストーン(IM)を13段階で定義 「個人の専門性発揮」から「全社にインパクトを与えるレベル」まで抽象度の高い基準を設定し、半年ごとに能力や成果を評価。
役割定義: PDL / EM / TL / IC エンジニアリングマネージャーだけでなく、プロダクトの価値を追う役割やテックリード専門など、多様なキャリアパスを支援。
グロースビジョン エンジニア個人が「1年後・数年後、どう成長したいか」を言語化し、目標管理やアサインに反映することでモチベーションを高める。
マネージャー間での情報共有 人によって目標設定のやり方が異なるため、マネージャー同士のコミュニティでキャリブレーションやノウハウ共有を行う。
辻氏は「評価の頻度をずらす、新たなやり方を試すなど、組織の状況に応じて柔軟に調整している」と述べ、数あるプロダクトに対応しつつエンジニアを成長させる文化の大切さを語りました。
Q&A・パネルディスカッションの主なトピック
質問1: 頻繁なフィードバックにコストをかけすぎでは?
各社とも「日常的なワンオンワンや360度評価にそれなりの時間を要する」ことを認めつつ、以下のメリットを強調していました。
ミスやモヤモヤの早期発見でリカバリが効く
エンジニアが納得感を持ち、離職率を下げられる
マネージャー同士のキャリブレーションで評価の質が高まる
目標設定や評価で数パーセント〜数割の工数を使っても、長期的な成果・チーム安定に繋がっている。
質問2: フィードバックが形骸化しないための工夫は?
「ネタが尽きてしまい、同じ指摘や曖昧なコメントを繰り返す」という懸念に対し、話者は以下の事例を挙げました。
「1年後どうなっていたいか」など長期目標を設定し、そこに向けた進捗や障害を確認する
コンピテンシー基準やテンプレートを活用し、期待値を定量化したうえで毎回のフィードバックを行う
人によっては雑談や局所的なディスカッションが効果的なケースもあり、一律にしない
質問3: 理想のマネージャー人数比はどれくらい?
エンジニア5〜10名に対してEM1名という声が多かったが、組織規模やチーム特性で変動するとの回答。 20名を1人で見るケースもあるが「時間がほぼ評価関連に取られてしまう」との苦労も語られた。マネージャーとサブリーダーが分業するなど柔軟な組織編成が鍵。
全体を踏まえた感想
今回のイベントでは、BtoB SaaS業界で大きく成長する3社が、それぞれの環境に合わせた独自の目標管理と評価制度を公開してくれました。 共通するのは「エンジニアに納得感を与え、結果的に高いアウトプットと成長を引き出したい」という思いです。
Sansanは職能定義を文化の体現度まで含めて明示し、360度評価と日常的なフィードバックを徹底。
ラクスはコンピテンシー評価とパフォーマンス評価を組み合わせ、当たり前のことを当たり前にやる仕組みを徹底しつつ、コストを削減する工夫を盛り込む。
freeeはインパクトマイルストーン(IM) を基軸とし、個人の「成長ビジョン」と事業のめざす方向を接続する試みを進める。
いずれのアプローチも、「成果を出すための目標管理」というだけでなく、エンジニア自身がキャリアを描き、周囲のフィードバックを受けながら成長していく舞台づくりに重きを置いていました。 評価や目標管理の仕組みは一見すると面倒に思われがちですが、そこに「エンジニアが納得できる明確な価値」があれば、組織全体が新たなステージへ進む推進力になります。
当日はQ&Aでも多くの質問が寄せられ、互いの制度を参考にしながら活発に意見が交わされました。目的や文化に合わせて柔軟に制度を調整し、“エンジニアが本来の開発に注力しながらも最高の成長機会を得られる” 状態をどう作るか、これが今後も注目されるテーマとなりそうです。
以上、「エンジニア成長を加速させる目標管理とは? 〜Sansan/ラクス/freeeのリアルを語る〜」のレポートでした。エンジニア組織をリードする3社の本音が詰まったセッションは、多くのヒントと実践のきっかけを与えてくれたのではないでしょうか。
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