💻
個人開発の収益化の極意 Lunch LT レポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約3536字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
2025年3月31日、個人開発の収益化に特化したオンラインイベント「個人開発の収益化の極意 Lunch LT」が開催されました。運営はフリーランス・副業エンジニア向けの案件紹介サービスを展開するFindy。個人開発で実績を上げている4名の登壇者が、それぞれのサービス事例や工夫したポイント、そして収益モデルをどう育ててきたかを具体的に語りました。
本レポートでは、4名のLT(ライトニングトーク)を軸に、イベントの流れやエッセンスをまとめています。「マネタイズに至るまでの道のり」「サブスクや広告、買い切りモデルをどう使い分けるのか」「海外市場に挑戦するときに意識すること」など、登壇者ならではの極意が惜しみなく紹介された、学びの多いセッションでした。
イベント概要
エンジニアとして個人開発を始める際、サービスアイデアの選定や、収益化戦略、バズらせるための具体的手段など、悩みは尽きないものです。本イベントは、個人開発による収益化に成功した4名を招き、「どうやってアプリが伸びたのか」「広告以外のマネタイズ手法」「モチベーション維持のポイント」などを中心に話を聴く場として企画されました。
会自体は約1時間で進行し、毎回10分程度のLT+質疑応答という構成です。ライブ配信には700名以上が参加し、YouTubeやチャット欄で質問や感想が活発に交わされました。
LT1「個人開発で生活するようになるまで」
登壇者: 山田敬汰(株式会社QuizMarket 代表)
概要
高校時代から個人開発を続け、大学卒業後はサイバーエージェントを経て独立。問題作成アプリ「アンキメーカー」を軸に、自らの生活費を支えるほどの収益を得ている体験談をシェアしてくれました。
アンキメーカー 自作問題を共有・勉強できるサービス。累計150万ダウンロード、月間アクティブユーザー数10万人ほど。個人事業主から法人化に至るまで、約9年運用している。
やったこと
ローカライズを徹底的に 海外ユーザー獲得のため、多言語化を一気に進めた。LLMを活用し、自動翻訳や管理コマンドの整備を行う。海外売上が25%以上を占めるようになり、英語以外にも多言語化を試みたことで新たなユーザーベースを発見できた。
サブスク導入 広告収益に加え、安定収益を確保するためのサブスクリプションを投入。広告除去や保存無制限化など、有料機能を「これを無料化したらサービス継続が危うい」ラインで切り分けた。起動時のアプリ内ポップアップで認知を高め、加入者が着実に増えているとのこと。
買い切りプランの追加 「サブスクは避けたい」ユーザー向けに、一度の課金で機能アンロックできる買い切りプランを導入。サブスクと競合しそうな印象はあるが、実際はユーザー層が違い、収益全体の30%ほどが買い切りプランから発生している。
得られたポイント
広告収益は外的要因に左右されがち。サブスクで下支えして、収益源を多角化すると安定する
LLMなどAIツールで翻訳が容易になり、ローカライズの敷居が激減
サービス規模に応じた柔軟なマネタイズ(サブスク+買い切り)で、多様な需要に応える
LT2「時間割アプリFulltanのこれまでとこれから」
登壇者: 緒方裕樹(個人開発者)
概要
大学生向けの時間割管理アプリ「Fulltan」を5年間継続運用している緒方さんが、立ち上げ期の地道なマーケティングやレッドオーシャンの中で個人開発を続けるための工夫を披露しました。
Fulltan 大学生が時間割を管理できるフラッター製アプリ。ダウンロード数の伸びを狙い「春から大学生」ユーザーに直接アプローチして認知を高めていった。
ポイント
立ち上げ初期のダイレクトマーケティング Twitter(X)で「春から大学生」などのタグを検索し、いいねやフォローを行う手法を実践。最初期のユーザーを着実に獲得し、ランキング上位に食い込む結果に。
個人開発者ならではのスタミナ・フットワーク 大人数の組織と異なり、撤退やリソース切り替えの制約が少なく、モチベーションさえあれば長期的に取り組める。意思決定が爆速で、リリースや機能追加もスピーディーに行える。
ミニマムコストでサービスを維持 広告以外にサーバー費などをほぼかけず、赤字化しない範囲で安定運用。機能も無理に増やさず、自分の開発キャパとユーザーニーズのバランスを保っている。
学び
個人開発こそ「認知度0→1」のフェーズで地道なマーケを実行すると効果あり
お金や組織を使った大規模戦略が難しくても、撤退せずにコツコツ育てるとユーザーが定着してくれる
LT3「個人開発のテーマ選定からマネタイズまで」
登壇者: 福田佳祐(株式会社リアルバインド 代表取締役)
概要
AIによる恋愛相性分析アプリ「IsTalk - トーク分析」などを展開する福田さんが、ニッチ市場でトップを狙う発想や、TikTokを用いたマーケティングなど、運営10年超えの知見を語りました。
IsTalk LINEでの会話から恋愛の脈あり・なしを判定するAIアプリ。累計80万DL、サブスク+広告収益で月250万円を達成。
特徴
ニッチ市場選定 いわゆる占い系とは異なる「分析系」相性アプリという立ち位置で、ASOでも上位を獲得。日常的に継続利用しやすい領域にフォーカス。
アンケートやTikTokを駆使 ユーザー属性を知るため、フォーム送付やSNSでの告知に力を入れた。TikTokでのバズ狙いはハードルが高いが、成功時の流入が大きい。
細分化された収益モデル 広告表示のオフ+機能アンロックをサブスクや買い切りプランで柔軟に用意。積み上げ売上を安定させつつ、学生層でも抵抗なく利用しやすい設計とした。
ポイント
ユーザーに「取り残される不安」を刺さる形で提示し、共感を誘う施策も活用
収益モデルの多角化とコスト意識で、赤字を避けながら運営継続
LT4「自分のために作ったアプリが、グローバルに使われるまで」
登壇者: 長澤光希(ブルーコメットラボ合同会社 代表社員)
概要
米国企業DoistでiOSエンジニアとして働きながら、個人開発の家計簿アプリ「Expenses」を成長させてきた長澤さんが語る「小さく始めて地道に改善する」スタイル。多言語対応を意識し、北米や欧州ユーザーからも高評価を得ています。
Expenses 手動入力中心の家計簿アプリ。複数通貨をまとめて管理でき、家族でシートを共有可能。iOS/iPadOS/macOS対応で合計35万DL、MRRは100万円近く。
特徴
Apple純正技術を活用 SwiftUIやCatalyst、クラウドキットなどを使い、外部依存を最小限に。1~2週間ごとに小規模リリースを重ねる。
グローバルを狙いつつ日常をシンプルに 翻訳やアクセシビリティ、通貨管理など「海外ユーザーにも当たり前に役立つUI」で支持拡大。アプリ内でのチュートリアルはなく、直感的操作でわかる設計を貫く。
レビュー評価を重視 大幅な広告投下やSNS施策は行わず、ユーザーとのメール対応とストアレビュー促進で着実に信頼を高めるスタイル。
学び
海外市場を念頭に置くと、特にiOS/macOS領域なら比較的小さなチーム(1人)でも達成可能
細部にこだわる日常ツールが高評価を得ると、口コミでじわじわ世界に広がる
全体を踏まえた感想 〜個人開発の可能性を再確認〜
4名の発表を通じて浮かび上がったキーワードは「地道な継続」と「バランス感覚」でした。巨大な組織であれば大規模マーケティングや潤沢な資金で攻められますが、個人開発は意思決定の速さ・モチベーションの持続力が武器になります。ただし赤字やメンテナンスコストには慎重になりつつ、ユーザーの声を拾い、サブスクや買い切りを組み合わせて安定した収益を確保するのが肝要です。
また、海外ユーザーへのローカライズが思いのほか低コストで実現できるようになり、ニッチな需要でもグローバルで集めれば収支をプラスにできる事例も大いに参考になりました。TikTokやX(Twitter)などの軽めのマーケ手法が大当たりすることもあれば、ストアレビューを丹念に促進してASOを狙う地道なアプローチも有効です。
個人が主役になる時代だからこそ、アイデアと継続力さえあれば想定外の成果を出せる可能性を感じるイベントでした。登壇者たちが示したように、「好きだからこそ続けられる」「自分が最初のユーザーになる」という発想が大事です。リソース不足を嘆くより先に、AIやSNS、使える環境をフルに活用して、今日から個人開発の収益化に挑戦してみてはいかがでしょうか。
Yardでは、テック領域に特化したスポット相談サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポット相談をお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。