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「AI Code Agents 祭り 2025 Winter」レポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約4252字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
目次
オープニング
特別メッセージ:堂前 紀郎
キーノート:「なぜ、いま開発を変えるのか」 by Gunther Brunner
セッション1:「AIコーディングエージェント vs. 従来のコーディング補助ツール」
セッション2:「AIエディタ・エージェントのリアリティと近未来」
セッション3:「AIコーディングエージェントのコラボレーション開発 〜 v0/Bolt/Lovable/Cursor/Windsurf/Devin 〜」
セッション4:「AI駆動開発でサービスを量産してる方法」
セッション5:「Cursor × MCPで実現するAIアシスタントの拡張機能」
セッション6:「メモ管理はObsidian in Cursor が最強」
セッション7:「Cursor、PR-agentを使った開発」
セッション8:「非エンジニアが分析補助のためにCursor使ってみた」
セッション9:「AIで実現する高速開発:プロダクション対応Webとモバイルアプリの構築」
クロージング
全体を踏まえた感想:未来の開発を体験し、加速を実感
2025年2月26日、渋谷スクランブルスクエア 21F にて「AI Code Agents 祭り 2025 Winter」が開催されました。AIコードエージェントをテーマとしたカンファレンスというだけあって、参加者はエンジニアのみならずビジネス職や非エンジニア層まで幅広く集い、会場はまるで熱気あふれるお祭りのようでした。オンライン視聴を合わせると1500名超という驚きの盛況ぶりです。本レポートでは、当日のオープニングから各登壇内容、そして懇親会直前までの流れを、参加者の視点を交えながら詳しく紹介します。
オープニング
司会進行の担当から始まり、イベントの趣旨や注意点が案内されました。とにかく会場には多くの人が詰めかけ、事前に用意していた座席がほぼ満席。さらにオンライン視聴者も800名以上に上ったそうです。 「AIコードエージェントによって、開発環境は5倍の速さで変革される可能性がある」という主催者のメッセージからは、開発者にとっての“転換期”を強く実感させるものでした。すでにプロトタイピングや高速リリースで成果を出している事例が出始めており、今回の祭りを機にさらに多様な情報共有が進むのではないかと期待が高まります。
特別メッセージ:堂前 紀郎
サイバーエージェントの新規事業責任者でもある堂前氏からのメッセージは「経営レベルでAIエージェントは必須のツールになり得る」という点が大きな話題となりました。 これまでは大人数で大型プロジェクトに取り組んできたが、AIエージェントを活用すれば少数精鋭かつスピーディにMVPを作り上げられる。そのための基盤として、カーソルなど強力なAIコードエディタを社内で標準化していく重要性を強く感じているそうです。 また、堂前氏はこの日が誕生日というユーモアを混ぜつつ「今日は特別な日として、皆で明るく元気に学んでいきましょう」と締めくくっていました。
キーノート:「なぜ、いま開発を変えるのか」 by Gunther Brunner
続いてキーノートに登場したのはグンタ氏。アルゼンチンから来日し、サイバーエージェントで多くの技術プロジェクトに携わってきたユニークな経歴をもつエンジニアです。 彼が語る背景は、まさにAIエージェント時代への大きなシフト。リニアやスーパーベースのようなモダン環境と、ChatGPTなどのLLM活用をどう融合するかが今後の鍵だといいます。 「コード補完を超えて、エージェント同士が連携してタスクを自律的にこなす未来がもうすぐそこにある」「必要なのは開発者以外にもUIや経営陣が自ら手を動かして理解すること」と強調。AIエージェントによるデモや歴史的考察を交えた内容がとても印象的でした。
セッション1:「AIコーディングエージェント vs. 従来のコーディング補助ツール」
北海道のアクセプト社からリモート登壇したホーダチ氏が、Copilotのような従来型の補助ツールと、いわゆるエージェント型の違いを比較。 1行入力するとコード補完を返すCopilotとは違い、エージェントは複数ファイルをまたいだ修正・補完、さらにはCLI操作や自律的なタスク実行をこなせる点が突出している、という主張が印象深かったです。 一方で学習コストはやはり高めで、CI/CDやコードレビューとの噛み合わせにも注意が必要。現状は「個人レベルでの運用から試すのがおすすめ」とまとめられていました。
セッション2:「AIエディタ・エージェントのリアリティと近未来」
木下雄一朗氏(きのぴーさん)は、カーソルやWindsurfなど“次世代AIエディタ”を追いかけ続ける第一人者として登壇。 「エージェント=自律的にタスクを完結させる仕組み」が、どこまでエディタ内で実現されているかをじっくり解説。 さらにWindsurfの作者との交流や、実際のコード事例を通じて、「自然言語での指示だけでも高度なロジックを書けるようになりつつあるが、開発者がさらに使いやすくなるにはUIやアシストの設計が鍵」と指摘。今後は“以心伝心レベル”に進化する可能性を語り、参加者の関心を大いに引きつけていました。
セッション3:「AIコーディングエージェントのコラボレーション開発 〜 v0/Bolt/Lovable/Cursor/Windsurf/Devin 〜」
MK(川北氏)が多彩なAIエージェントをどのように組み合わせ、一つのリポジトリで共同開発するかの事例を披露。 v0でUIプロトタイプを作り、Lovableで微調整し、Boltで大きく構造を変え、CursorとWindsurfでコードを仕上げ、DevinでCI/CDとレビューをする。そのフローが非常に細やかに説明されました。 「エージェント同士をリモートリポジトリで繋げば、複数のAIが同時並行で開発を進めることもできる」「新たなコラボレーション様式が生まれそう」との感想が面白かったです。
セッション4:「AI駆動開発でサービスを量産してる方法」
Taishi Yamasaki氏からは、月1で生成AIを活用した新プロダクトをリリースし続ける個人開発の取り組みが語られました。 自らが運営する個人開発コミュニティやAI生成アプリについて、BoltやCursor、Windsurfを活用したスピード重視の開発フローを例に紹介。「UIの細部に時間をかけすぎず、Radix UIなど既製のコンポーネント+AIで大胆に作る」といったノウハウが詰まっていました。 特に「QA能力が人間側に求められる。AIが書くコードをうまくレビュー・テストし、タスクを正しく言語化する必要がある」という指摘は共感を呼んだようです。
セッション5:「Cursor × MCPで実現するAIアシスタントの拡張機能」
サイバーエージェントAIオペレーション室のイ ジュンホ氏が、CursorとMCPサーバーを組み合わせて社内ドキュメント検索やリサーチ機能を実現した例を紹介しました。 特に「AIが自律的に必要なツールを判断し、ウェブ検索なりドキュメント検索なりを行う」というフローが興味深く、ディファイというノーコードプラットフォームでそれらを素早く構築できる話は、非エンジニアにも参考になったようです。
セッション6:「メモ管理はObsidian in Cursor が最強」
山口大陽氏は、個人のアウトプットを最大化するためのメモ管理術を披露。Obsidianでタグ付けをするのは大変だが、Cursorでまとめてタグ生成を頼めば楽になると実演していました。 さらにマークダウンのメモをスナップショット的にアウトプットし、SlidevやAnkiとも連携できるという話に「個人の学習プロセスもAIで効率化できる」と会場は感心している様子でした。
セッション7:「Cursor、PR-agentを使った開発」
同じくサイバーエージェントAIオペレーション室の岡部利樹氏が、State of DevOpsレポートなどを踏まえ「ドキュメントの品質・コードレビュー速度向上がAI導入の最大のメリット」と解説。 PR-agentというOSSツールとCursorを連携させ、プルリクエストの説明を自動生成し、レビューを高速化する事例が印象的でした。コードそのものの良し悪しだけでなく、ドキュメント品質をどう高めるかに焦点を当てるのが鍵とのことです。
セッション8:「非エンジニアが分析補助のためにCursor使ってみた」
マーケティングアカウント担当の宇佐美良治氏が、まさに非エンジニアである自分がCursorを使ってどのように広告分析の幅を広げたか語っていました。 「コードを書くのはAIに任せ、ビジネス側は“いい感じ”をどう具体化し言語化するかが仕事」とのコメントに、開発者も大きくうなずいていたのが印象的です。エンジニアリングとビジネスを橋渡しするためにも、“触れる人が一度AIエージェントを試すべき”と強く訴えていました。
セッション9:「AIで実現する高速開発:プロダクション対応Webとモバイルアプリの構築」
最後に、Rishi Mathur氏が海外から参加し、CodegiantというプラットフォームでCloudflare上に一気に本番アプリを構築するデモを披露。「単なるプロトタイピングを超えて、実際に数百万人が使えるインフラまで自動化」という視点は圧巻でした。 すぐにQRコード付きのイベントページを生成し、参加者がリアルタイム登録して表示される様子を見せて会場が大いに沸きました。「モバイルアプリのサポートも準備中」という話に、興味津々な反応が多数見受けられました。
クロージング
後半はタイムスケジュールが若干押したものの、予定通り21時過ぎに全セッションが終了。「あまりに盛り沢山すぎて消化しきれない」という声も多く、最後の挨拶ではアンケートへの協力が呼びかけられました。 終わってみれば、約3時間半の密度の高いカンファレンス。初めは「AIコードエージェント」というキーワードにピンと来ていなかった参加者も、最終的には「もう一度チャレンジしてみたい」「これから開発を変えてみたい」と背中を押される内容だったようです。
全体を踏まえた感想:未来の開発を体験し、加速を実感
振り返ると、登壇者たちの主張は「AIコードエージェント時代は本格的に始まっている」というものでした。単なるコード補完やチャット生成を超え、複数ファイルを横断するリファクタリング、自律的なCI/CD連携、さらに完全プロダクション対応のデプロイまでをこなせる時代が到来しつつあるのです。 もちろん学習コストや運用面の課題もあるため、一気に誰しもがスムーズに導入できるわけではありません。ただ「まず触ってみる」「小規模から導入する」ことで、ビジネス職でもエンジニアでも得られるメリットは大きいと語られていました。 近い将来には、人間側の“言語化能力”や運用設計がさらに重要になり、AIエージェント自身はますます高度で自然な働きをするようになるでしょう。今回の「AI Code Agents 祭り」は、その新局面を一足早く体感できるイベントだったと言えます。今後もコミュニティでのノウハウ共有を通じて、AIエージェントの可能性が広がり続けることを期待せずにはいられません。
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