🏝️
「エンジニア×地域共創」で進化するイノベーション都市・北九州市の挑戦と可能性 #KITAKYUSHU Tech Day3 レポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約3746字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
北九州市が掲げる「エンジニア×地域共創」にフォーカスしたイベント「DX LEADERS SUMMIT in TOKYO #KITAKYUSHU Tech Day3」が、2025年2月8日に東京・大手町で開催されました。オンラインとオフラインのハイブリッドで行われた本イベントには、地域デジタル化を推進するリーダーや国内外で活躍するエンジニアが集結。北九州市の“リアル”と“ポテンシャル”を掘り下げつつ、各地域との比較や事例共有が行われました。
本レポートでは、当日の熱いセッションやディスカッションの模様をお伝えします。
北九州市がいま“アツい”三つの理由
イベント冒頭、北九州市産業経済局の山下さんから「北九州市がなぜいまエンジニアにとって魅力的な地域なのか」が紹介されました。ポイントは大きく以下の三つです。
多様な産業基盤 製造業をはじめ、創業120年以上の企業から新興IT企業まで幅広い分野が存在。現場やプロダクトを結びつける機会が豊富です。
IT企業誘致の本気度 近年、北九州市は全国規模でIT企業誘致を加速。すでに大手企業からスタートアップまで数多くの進出実績があり、横の連携(いわゆる“縦連携”ならぬ“横連携”)も進んでいます。
生活コストと暮らしやすさ 家賃や物価の安さ、子育て環境の充実度は全国トップクラス。オンとオフを両立しながらエンジニアとしてスキルアップするにはうってつけの環境です。
「北九州に足りないのは“自分が活躍して街を変えるんだ”という新たなエンジニアの数。逆に言えば、そこには大きなチャンスがある」との言葉から、当日のセッションはスタートしました。
データが握る地域再起動の鍵:ザ・北九州モデル
最初のセッションは、ウイングアーク1st株式会社 代表取締役社長執行役員CEOの田中潤さんによる「データ活用は『地域再起動』の鍵になり得るか? ―ザ・北九州モデルの全容とねらい―」。同社が取り組む「ザ・北九州モデル」は、地域課題をテクノロジーとデータを駆使して解決し、かつそれを“汎用型”として他地域にも展開していこうという構想です。
北九州市に拠点を置く理由 「ものづくりの街」として蓄積された技術力やコミュニティ力が、DXやGXに自然とマッチしたとのこと。自らもエンジニア出身である田中さんは「挑戦したいエンジニアが光を放てる場所。それが北九州」と語りました。
地域共創の事例 スポーツ×データの連携(プロサッカーチーム・ギラヴァンツ北九州のDX推進など)や、市役所職員向けのDXリスキリングを通じて、公官民が一丸となって“デジタル行政”を実装していく構想を次々と紹介。 北九州で芽生えたソリューションを全国、さらには海外にも横展開する姿勢からは、大規模都市にはない柔軟性とスピード感を感じさせられました。
未来型エンジニア教育の挑戦
続いて登壇したのは、北九州市立大学 国際環境工学部 教授の西田健さん。 テーマは「デジタル人材ニューノーマル。『近未来型の技術者育成エコシステム』を考える」。
4年間通じてPBL(プロジェクトベースラーニング) 通常は短期間で終了しがちなPBLを、1年生から4年生まで継続的に実施。企業メンターも随時参加し、産学官が連動して本当に使えるデータサイエンス人材を育てる仕組みを確立しようとしています。
「ギークスプログラム」で高校生の才能を発掘 さらに高校生の段階から“ギーク”な才能を持つ生徒に手を差し伸べ、大学進学前に研究室へ招き入れるなど、従来の枠を壊す教育モデルを推進。 西田さん曰く「やる気のある技術者の“居場所”を大学がつくることで、地域全体のスキル底上げにつなげたい」とのこと。このアプローチは、企業側にとっても大きな魅力になるはずです。
エンジニア都市・北九州 未来会議
田中さんや西田さんのプレゼンに続くのは、ギグワークスクロスアイティ株式会社の赤星直樹さん、株式会社メンバーズの秋野郁実さん、株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスの千葉直樹さん、そしてモデレーターを務めた西田健さんによるパネルディスカッション。テーマはずばり「いまの北九州ってぶっちゃけどう? エンジニア目線で考える足りないパーツ」です。
「学生との接点をもっと」 多くの参加者が抱いていたのは「潜在能力を秘めた学生と企業が結びつく仕組みがまだ足りない」という問題意識。特に1〜2年生のうちから現場を知れるインターンや勉強会を充実させることで、学業と実践をスムーズにつなげられるはずという提言が出ました。
“キラキラモデル”が地域のステレオタイプを覆す 北九州=“シュラの国”と揶揄されることがある一方、「目立つ成功事例や先進的なDX事例がもっと可視化されれば、若手や経験者が『面白そう!』と集まる」との声も。実際、北九州発の最新テクノロジーや働き方を“キラキラ”と発信することが、イメージを更新する鍵になりそうです。
具体的な一歩を踏み出そう 議論の末、「じゃあ企業と大学で一緒に何か始めてみよう」という合意が交わされたのは本パネルのハイライト。横のつながりを深めながら具体的なプロジェクトを始動していく予感が漂いました。
「よそ者」の視点から見る北九州市と各地域のギャップ
続くパネルは「地域発デジタル化プロジェクトを俯瞰する」と題し、株式会社ラックの又江原恭彦さん(“まえはら”表記が話題に)とI.I.代表の糸川郁己さんが登壇。お二人とも北九州市出身ではなく、様々な地域を渡り歩いてきた経験を持ちます。
「何もない」からこそ挑戦しやすい 「北九州はいい意味で何もない。だからこそフットワーク軽く動けるし、テクノロジーを持つ人が目立ちやすい」と又江原さん。対して糸川さんも「課題も多いが、動けば直にインパクトに結びつく。市全体がチャレンジを歓迎している雰囲気がある」と語ります。
失敗を許容するカルチャー 国や大都市では許されにくい小さなトライアンドエラーこそ、地域DXの第一歩。そこにフリーランスや中小IT企業が身軽に参画できる土壌が北九州には育ち始めているのではないか、という見解が印象的でした。
地域エンジニアが語るリアルライフ
最後は日本アイ・ビー・エム株式会社の池澤あやかさん(通称いけあやさん)と、日本アイ・ビー・エム デジタル・サービス株式会社の川上聡一さんによる「九州で働くことで見えてきた地域ITエンジニアのリアルライフ」。元々は東京や海外でエンジニアとして活躍されていたお二人が、九州・北九州ならではの生活や仕事観を語りました。
オンライン前提でも上流工程ができる時代 リモートワークの定着により、北九州にいながら東京や海外の案件に携われるのは当たり前に。以前なら「地方に移住=キャリア選択肢の減少」というイメージがありましたが、今や海外メンバーと同じテーブルで仕様決めすることも可能になっています。
休日は大分や瀬戸内へひとっ飛び 北九州での暮らしは、都市の機能と自然の恵みがぎゅっと詰まった絶妙なバランス。週末に温泉地や瀬戸内方面へドライブし、平日は駅近のオフィスでグローバルプロジェクトに参加するという働き方も十分現実的とのことです。
こうした新しいエンジニアライフスタイルは、北九州が“自然と都市のいいとこ取り”だからこそ実現できるのかもしれません。
エンジニアだからこそ、北九州発のデジタル革命に乗り遅れるな
「エンジニアとしてのスキルを伸ばしたい」「社会実装が早いプロジェクトに関わりたい」「暮らしやすい環境でじっくり新しい価値を生み出したい」。そんな欲張りな願望を持つ人にとって、北九州市は今まさに絶好のフィールドではないでしょうか。
チャンスは“ここ”にある 参加者や登壇者の声を総合すると、北九州市はエンジニアにこそ開けたフロンティア。課題がありながらも、市役所や大学、大手企業、スタートアップなどが非常に近い距離で連携し合っています。
行けばわかる“縦連携”の魅力 発言や質問にも何度か出てきた「縦連携」「横連携」という言葉からもうかがえるとおり、実際に北九州の現場に飛び込むといきなり繋がりが広がる感覚があるはずです。現地でプロトタイプを試すもよし、大学や企業主催の勉強会に参加してみるもよし。まずは一歩を踏み出すと、おそらく想像以上に濃いコミュニティと出会えるでしょう。
“エンジニアが目立つ”街から、世界を視野に 人口規模の大きい都市では得られない、いわゆる“目立つチャンス”も多々あります。地元スポーツチームや行政のDXプロジェクトに深く入り込めば、世界に通用する実績をつくることも夢ではありません。 北九州を舞台に、一気に躍進するチャンスをつかみたいエンジニアは、ぜひ今こそ動き出してみてはいかがでしょうか。
今回のイベントで印象的だったのは、登壇者同士が「じゃあ具体的に動きましょう」と迷いなく提案しあっていたこと。社会課題をエンジニアリングで解決するうえで大切なのは、遠慮や躊躇ではなく“まずは動く”姿勢だと改めて感じました。北九州市が次にどんな“挑戦の舞台”を見せてくれるのか、ますます目が離せません。
Yardでは、テック領域に特化したスポット相談サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポット相談をお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。