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CA.ai #1 イベントレポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約3041字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
目次
1. オープニング:生成AIによる競争力強化
生成AIを「会社の競争力」に
AIオペレーション室の役割
2. LTセッション:多様な分野で進化する生成AI活用
(1) ABEMAのコンテンツ制作を最適化!生成AI × クラウド映像編集システム
(2) MCP世界への招待:AIエンジニアが創る次世代エージェント連携の世界
(3) 未来を切り拓くAIエージェントの可能性
3. パネルディスカッション:生成AIの進化と未来戦略 〜CA × AWSが語る最前線〜
1) AIエージェントの本質は“行動と環境”
2) 基盤モデルとエージェント特化チューニング
3) オープンモデル vs. クローズドモデル
4) さらなる進化:マルチモーダルへの展望
全体を踏まえた感想 〜「生成AI」が決める未来の開発スタイル〜
サイバーエージェントが主催する生成AI特化の技術勉強会「CA.ai #1」が、2025年3月27日に開催されました。オンラインとオフラインのハイブリッドで行われた本イベントでは、社内外の最先端エンジニアやAIリーダーが集結。生成AIの活用事例から、次世代のAIエージェントやモデル開発の最前線まで、多角的なテーマで語り合いました。
以下では、当日のセッション内容を章立てで振り返り、本イベントの大きな潮流として見えてきたポイントをまとめます。
1. オープニング:生成AIによる競争力強化
最初に登壇したのは、サイバーエージェント執行役員でAIオペレーション室 室長を務める上野千紘さん。2023年から全社レベルで取り組む生成AI活用の軌跡と今後の展望を紹介しました。
生成AIを「会社の競争力」に
サイバーエージェントは、これまでも広告やメディアでAIを活用してきた実績があります。しかし、チャットGPTをはじめとした「生成AI」は、業務効率化や新しいサービス価値の創出において“産業革命級”とも言えるインパクトをもたらすと考え、さらに注力領域を拡大中とのこと。
AIオペレーション室の役割
上野さん率いるAIオペレーション室は、社内の生成AI活用を統括する専門組織。社員のリテラシー向上やガイドラインの整備に加え、アイデアコンテストや全社リスキリングなどを推進しています。専任の開発メンバーを抱え、約70もの生成AI関連プロジェクトを横断的に支援しており、「エンジニア以外にも生成AIを当たり前に使ってほしい」というメッセージを強調していました。
2. LTセッション:多様な分野で進化する生成AI活用
オープニングに続いて、3本のLTが行われました。各15分という限られた時間の中で、それぞれの現場ならではの「仕組み」と「工夫」が明かされ、会場・オンラインともに盛り上がりを見せました。
(1) ABEMAのコンテンツ制作を最適化!生成AI × クラウド映像編集システム
登壇者:株式会社AbemaTV 加藤 諒 さん
ABEMAの切り抜き動画やニュース記事作成フローに、生成AIを導入した事例を紹介。クラウド映像編集システム「vmc」と、動画解析基盤「メディアアナライザー」を組み合わせて、SNS投稿や記事作成のスピードを大幅に向上しているとのこと。実際に動画生成だけでなく、文字起こし→記事化→最終チェックという流れが30分以内で完結できる仕組みが示されました。
(2) MCP世界への招待:AIエンジニアが創る次世代エージェント連携の世界
登壇者:サイバーエージェント CTO統括室 Developer Productivity室 Günther Brunner さん
AIエージェントを連携させる新たなプロトコル“MCP”を解説。MCPを介すことで、ブラウザ操作やデータソース連携など複数のツールを柔軟に扱う「次世代AIエコシステム」が構築できると語られました。カスタマイズ度の高い作業フローやプロジェクト環境も“MCP”によってシンプルに統合でき、エンジニアが抱える開発生産性の革新をもたらす可能性が強調されました。
(3) 未来を切り拓くAIエージェントの可能性
登壇者:サイバーエージェント AIオペレーション室 李 俊浩 さん
AIエージェントを使えば、単純な「Q&A型」のチャットボットを超えて、タスクの分解・自律的なツール操作など、より複雑な業務を“丸ごと任せられる”世界が見えてくると紹介。具体的には「Dify」などのノーコードツールを用いれば、非エンジニアでもドラッグ&ドロップでエージェントを構築できるというデモが注目を集めました。
3. パネルディスカッション:生成AIの進化と未来戦略 〜CA × AWSが語る最前線〜
後半のメインセッションとして、AWS Japan 技術統括本部 Machine Learning Developer Relations 久保隆宏さん、サイバーエージェント 基盤モデル事業部 石上亮介さんが登壇。モデレーターをAI事業本部のイ ドンホさんが務め、「これからの生成AI技術とモデル開発」をテーマに深い議論が展開されました。
1) AIエージェントの本質は“行動と環境”
エージェント開発の要点は、「エージェントが取れる行動(ツール連携やAPI操作など)」「エージェントが動く安全な環境」「報酬・評価」の3つが肝になると久保さん。AIを自由に動かすほどリスクも大きくなるため、“権限の制約”や“サンドボックス環境”の提供が必須だと説明されました。
2) 基盤モデルとエージェント特化チューニング
石上さんは、基盤モデル自体の賢さがエージェント性能を左右すると指摘。さらに、開発事例としてオープンAIの「DEEPリサーチ」が挙げられ、「エージェント向けに追加学習や強化学習でチューニングすれば、LLMの能力を最大化できる」との見解が示されました。
3) オープンモデル vs. クローズドモデル
話題は、近年MITライセンスでリリースされた「DEEPシーク」などのオープンモデルへ。久保さんは「ディープシークの衝撃で、モデル開発が予測不能な程オープン化へ進む可能性がある」と評価。石上さんも「クローズド勢も引き続き強いが、オープンモデルが性能面で追いつきつつあり、今後は両方の共存時代になる」とまとめました。
4) さらなる進化:マルチモーダルへの展望
最後に、マルチモーダル(テキスト以外の画像・音声など)領域への広がりが注目されました。画像生成や音声理解を含む総合的なAIエージェントが登場すれば、手作業の多くが自動化されるだけでなく、チームコミュニケーションやUX面にも大きな変革が起こるのではないかという見解が語られました。
全体を踏まえた感想 〜「生成AI」が決める未来の開発スタイル〜
「CA.ai #1」は、まさに“生成AIの可能性”が目の前に広がるイベントでした。クローズドかオープンかを問わず、基盤モデルは加速度的に進化し、AIエージェントという新たな枠組みが業務効率やサービス開発を劇的に変革しようとしています。
一方で、セキュリティや倫理問題、プロンプトインジェクションへの対策など、実運用のハードルも依然として高いという指摘も多く挙がりました。しかし、逆に言えば「これらの課題を解決できる開発者・エンジニアには大きなチャンスが巡ってきている」と言えるでしょう。
今回の勉強会では、AIオペレーション室による全社推進体制や、AWSによるクラウド基盤の視点など、多面的な知見が交差していました。サイバーエージェント内外の垣根を超えて、“生成AIによる新しい開発文化”をつくるムーブメントが始まっているのを強く感じます。次回以降の「CA.ai」シリーズでも、より具体的なノウハウや成功事例がますます増えていくはずです。
この先、エンジニアにとって「生成AI」は避けて通れない技術領域。今回のイベントが、その学びと実践への大きなきっかけとなったことでしょう。
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