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Proxmox VE超入門 〜無料で作れるご自宅仮想化プラットフォーム〜 レポート
公開
2025-04-03
更新
2025-04-03
文章量
約4251字
2025年3月27日、「Proxmox VE超入門 〜 無料で作れるご自宅仮想化プラットフォーム」というテーマの勉強会がオンラインで開催されました。
本勉強会は「とことんDevOps勉強会」の一環として行われ、仮想化プラットフォームを自宅や小規模環境で気軽に活用したい方や、VMware ESXiの無償版終了に伴い代替手段を探している方など、多くの受講者が集まりました。ここでは、全体の流れやプレゼンテーション内容、質疑応答のやり取りを振り返りつつ、Proxmox VEの魅力や注意点を整理します。
イベント概要
今回の勉強会では、Proxmox VE(Proxmox Virtual Environment) に焦点を当てました。仮想マシンを多数管理しようとすると、Web UIのあるハイパーバイザー型の仮想化プラットフォームが欲しくなる場面が増えます。長らくホビーユーザーが愛用してきたVMware ESXiの無償版提供終了の影響もあり、「ESXiの代替としてProxmoxを試してみたい」という声が大きくなっているようです。
Proxmox VEはDebian GNU/Linuxをベースとしたオープンソースの仮想化プラットフォームで、KVMによる仮想マシンとLXCによるコンテナの両方を一元管理できます。無料で使える上、商用サポート契約も用意されており、ホビー利用から業務利用まで幅広く対応可能な点が大きな魅力です。
オープニング:勉強会の趣旨
冒頭、運営チームからは本勉強会の進行や雰囲気について案内がありました。DevOpsに関するテーマを毎月扱い、参加者同士で学びを深める場としており、今回はProxmox VEのインストール方法から実践的な運用ポイント、そして質疑応答を中心に進めるという旨が説明されました。
さらに、勉強会ではQ&Aツール(Slido)を利用し、参加者は匿名で質問を投稿可能となっていました。講師によるメインセッション後は、参加者からのさまざまな疑問・悩みに対応するQ&A・相談会の時間が設定され、実際に多くの質問が寄せられました。
メインセッション:Proxmox VEの基本と使い方
Proxmox VEとは
登壇者の水野さんからは、まず「Proxmox VEの概要」について説明がありました。
Debian GNU/LinuxベースでKVM仮想マシンとLXCコンテナ管理を行う。
オープンソースで無料で使えるが、サポート契約を結べば企業用途でも安心して利用可能。
ISOイメージをダウンロードしてインストーラーを起動すれば、数ステップで導入完了。
VM管理だけでなく、LXCコンテナも同じUIで扱えるため、軽量なコンテナを大量に運用するのにも向いている。
VMware ESXi経験者ならば、Proxmoxの画面を見たときに「GUI構成がそっくりで使いやすい」と感じるとのことでした。
インストールから初期設定
インストーラーはルートパスワードやネットワーク設定、タイムゾーンなどごくわずかな項目を入力すればOK。再起動後、別PCのブラウザでhttps://<ProxmoxのIPアドレス>:8006/
にアクセスすると、すぐにWeb管理画面が開きます。
初回ログイン後にISOイメージをアップロードし、新規VM作成ウィザードで名前やディスクサイズを入力。
コンソール画面もWebで確認でき、インストール手順をGUI越しに進められる。
VMとコンテナは別タブで管理され、どちらも同一のインターフェイスで扱える。
管理画面と機能
Proxmox VEの管理画面には以下のような主要機能が備わっています。
クラスター構成 複数ノードをまとめて管理。WebUI上で、どのノードにどのVMやコンテナが所属しているかがひと目で分かる。ライブマイグレーションやHA機能にも対応。
ストレージ管理 ZFSやLVM、NFS、SMB、Cephなど多様なストレージに対応。ローカルディスクとの併用も可能だが、ディスクの扱いで少々癖がある。
ファイアウォール Proxmox VE側でクラスタ単位、ノード単位、各VM/コンテナ単位でのファイアウォールルールを設定できる。
バックアップ/スナップショット/クローン 仮想マシンやコンテナのスナップショットやフルバックアップを簡単に取得・復元できる。
注意したいポイント
ディスクイメージの扱い VM削除時にディスクも削除されるが、「ディスクだけ残したい」といった場合は少しトリッキーな手順が必要。IDで紐づけ管理されるため、知らないと誤ってイメージを消してしまうリスクがある。
権限設定(RBAC)が直感的でない VMアドミンロールがあっても仮想ディスクの割り当てには別ロールを足さなければ作成できないなど、ロールが細かく分かれていて分かりづらい。一部でロールの考え方が実運用と乖離している。
クラスターに関連する設定や操作の一部がUIから行えず、設定ファイルを直接編集する場面がある ノード脱退後のリストから削除など、残念ながらWebUIで完結しないケースが存在する。
ただし個人利用や小規模の開発環境であれば、それらの難点はそこまで大きく問題とならず、無料で柔軟な仮想化を構築できる点は非常に魅力的だと語られました。
Q&Aハイライト
ここからは参加者から寄せられたQ&Aをまとめます。一部、当日のやり取りを簡略化した形で紹介します。
1. ハードウェア要件・CPU世代が異なる場合のマイグレーション
質問: CPUの世代が異なるマシン同士でクラスターを組む場合、ライブマイグレーションは問題なく動きますか? 回答: 公式には「CPUを揃えるべき」とありますが、実際にはKVMの設定で使う命令セットを制限しておけば、世代違いでも動くケースがあります。ただし大規模運用するならCPUを揃えるのが無難でしょう。
2. ディスク周りの運用方法
質問: VMを削除すると同時にディスクも消えてしまい、ディスクだけ残したいケースに苦戦しています。どうするのが良いでしょう? 回答: ProxmoxはVMごとにディスクを紐づけて管理する方針のため、ディスクを切り離して残すのはややトリッキーです。事前に別のマシンへディスクを移動するか、IDを直に書き換える等、工夫が必要です。
3. 権限の設定(RBAC周り)
質問: VMアドミンのロールだけだと仮想マシン作成ができず困っています。ロール設計のドキュメントはどこかにありますか? 回答: 権限モデルがやや細かく分かれており、VMアドミンだけではディスクやネットワーク割り当てができません。公式ドキュメントもまとまっておらず、実運用ではフル権限を与えるか、複数ロールを組み合わせる場合が多いようです。分かりやすい一括まとめは現状ないため、使いながら把握していくしかありません。
4. 物理マシンからの移行(P2V)
質問: 物理Windows機をそのままProxmoxに移行(P2V)したいのですが、公式のコンバーターツールはありますか? 回答: 専用のP2Vツールは公式にはないようです。泥臭くクローンツールを使うか、VMwareのコンバーターを介してOVAなどにしてインポートするなどの方法が考えられますが、あまり情報が多くないため慎重に検証が必要です。
5. 複数NICの使い方・ネットワーク構成
質問: クラスター組む際に、管理用と外向け用などNICを分けたい。優先するNICを指定するには? 回答: ProxmoxのWebウィザードでVM作成時は1つのNICしか選べませんが、作成後に「ハードウェア → ネットワークデバイス」から複数NICを追加できます。優先度はゲストOS内でルーティングやデフォルトゲートウェイをどう設定するかによって変わるため、OS側で調整しましょう。
6. その他の質問
外部にさらす構成 ご自宅サーバーを外部公開するときは、ルーター設定やセキュリティをしっかり考慮する必要があります。Proxmox自体には特別な制限はなく、普通のLAN内サーバーと同じ手順でポート開放が可能です。
優勝サブスクリプションの料金 ソケット単位の課金で、年間費用は数百〜千ユーロ規模。無料版は自己責任運用になるが、個人や小規模なら問題ないケースが大半。
まとめと感想
さらなる可能性を広げるProxmox VE
今回の勉強会では、Proxmox VEが「自宅や小規模環境で仮想マシンやコンテナを気軽に管理できる」点が大きな魅力だと改めて示されました。
インストールの容易さや管理のシンプルさはESXiに勝るとも劣らず、オープンソースで無料なのは非常に魅力的です。
一方で、クラスター管理や権限設定などを本格的に使い込むと分かりづらさが表面化するため、大規模運用では一層の検証と設計が要るとの指摘もありました。
とはいえ家庭内や検証用途、開発環境としては十分すぎる機能を備えており、「まずは1台か2台のノードでProxmoxを触ってみる」のが最良の第一歩と感じさせる内容でした。好みのミニPCを用意し、ぜひクラスタやLXCコンテナなどを実際に動かしてみると面白いかもしれません。
「あえて自宅仮想化する意義」を再確認
クラウド前提の時代であっても、「自宅で手軽に仮想化プラットフォームを組む楽しみ」は依然として強い需要があると実感しました。Proxmox VEはデビアンベースの馴染み深い設計と豊富な機能、そして無償利用が可能という大きな強みを持ちます。課題としては、やや複雑な権限周りやクラスター操作の一部がUIから行えない点などが挙げられましたが、ちょっとした検証やホビーユースであれば十分カバーできるものだと思えます。
今回の勉強会では、登壇者のデモやQ&Aを通じて、Proxmox VEが「基本的な仮想化〜コンテナ管理」はもちろん、ライブマイグレーションやHAの機能までオールインワンで備えている点が強調されました。VMware ESXi無償版終了をきっかけに乗り換えを検討する人にとって、Proxmox VEは魅力的な選択肢と言えるでしょう。まずは軽量なミニPCや余っているサーバーに入れ、自宅クラウドを構築してみてはどうでしょうか。ツールの知見が深まり、インフラや仮想化の基本を再確認する良い機会にもなるはずです。
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