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NW-JAWS 公共スペシャル with Gov-JAWS イベントレポート
公開
2025-03-30
更新
2025-03-30
文章量
約3658字
2025年2月14日、ネットワークと公共分野に携わる多くの人々がオンラインに集結し、「NW-JAWS 公共スペシャル with Gov-JAWS」が開催されました。通算で600名を超える申し込みがあり、ネットワークを専門領域とするAWSユーザーグループ(NW-JAWS)と、公共分野のクラウド利用を推進すべく生まれつつあるGov-JAWSのコラボレーションという、まさにスペシャルな回となりました。
本レポートでは、各登壇セッションの内容や議論のポイント、そして最後に全体を踏まえた考察をまとめています。オンライン開催ならではの気軽さと、公共×ネットワーク×AWSという専門性の高さが同居した、充実の一時間でした。
オープニング
まず、ネットワークJAWSの運営メンバーから本イベントの位置づけやコミュニティの紹介がありました。
「NW-JAWS」は、AWSのネットワーク機能を使いこなすためにキャリアや機器ベンダー、エンジニアが集まる場として発足。オンプレミスとクラウドの橋渡しをしたいという想いで活動しており、既に何度も大規模な勉強会を開催してきました。今回は公共分野に着目し、「Gov-JAWS(ガブ上手)」とのコラボが実現した形です。
自治体や中央省庁向けのDX支援が加速するなかで、ネットワーク周りの課題は多岐にわたります。そこにAWSがどのように絡めるか、またガバメントクラウド(Government Cloud)の概念や接続方法を学ぶのが今日のゴールとして示されました。
LT:「公共分野でクラウドコミュニティを始めたい理由」
登壇者
杉井 正克
西川 洋平(株式会社NTTデータ)
公共分野のシステムは「ガバメントクラウド」への移行機運が高まっているとはいえ、まだまだ始まったばかり。そこに向けて新たなコミュニティを作りたい、という熱い想いが語られました。
背景には、少子高齢化に伴う公務員数の減少や、2026年3月までに全国の自治体が一部業務システムをクラウド化する「システム標準化」の流れがあります。効率よく高品質なサービスを作るためには、エンジニア同士が情報を持ち寄り、一緒に学習・実践していける場が不可欠。そこで官民問わず誰でも参加できるコミュニティ「Gov-JAWS」を正式に立ち上げ、オープンかつポジティブな場を目指していくとのことでした。
「公共案件に従事していなくても大歓迎」との呼びかけが印象的で、参加者も多様な視点でこの新しい取り組みを応援する雰囲気がありました。
メインセッション #1:「ガバメントクラウドの概要」
登壇者
高橋 広和(名古屋市)
名古屋市役所でガバメントクラウド移行を支援している立場から、ガバメントクラウドの成り立ち・仕組みが丁寧に解説されました。 過去の「霞が関クラウド構想」から、クラウドバイデフォルト方針、そしてクラウドスマートへと移り変わってきた歴史を踏まえ、現在は複数のクラウドベンダーが、厳しい基準(ISMAPや追加の技術要件)を満たした上でガバメントクラウドとして選定されている状況です。 さらに、地方自治体での「システム標準化」やマイナンバー情報を扱う場合の専用線接続の必要性など、実際に自治体がクラウドを使う際に直面するポイントも紹介。「AWSのベストプラクティスがそのまま適用できない」といった制約があるため、公共分野ならではのノウハウ共有が強く求められているという話が印象深かったです。
メインセッション #2:「自治体ネットワークとAWSの接続について」
登壇者
白鳥 翔太(NTT東日本)
続いて、自治体ネットワークを軸にAWS接続を考えるうえで外せない要素が詳説されました。ポイントは「マイナンバー用のネットワーク」「LGWAN(LG1)」「インターネット接続系」の三つに分けられる点です。自治体はこれらのネットワークを分離することで情報漏えいを防ぎ、さらに入り口出口のセキュリティを強化しています。 AWSとダイレクトコネクトでつなぐには、既存の専用線をどう経路設計するか、どの拠点で集約するかなど、自治体ごとの事情によって最適解が異なるとのこと。さらにLGWAN経由で外部クラウドにアクセスする場合は、無害化処理や通信経路のIP制御など、独自の審査やルールが加わります。 現在は地方自治体にもテレワークやSaaS活用のニーズがあり、従来の仕組みを残しつつAWSを活用していく混在状態が続きそうです。将来的には「三層分離の見直し」も検討されており、自治体ネットワークのあり方が大きく変わる可能性があるという示唆がありました。
メインセッション #3:「ガバメントクラウドにおけるネットワーク接続概要(省庁編)」
登壇者
川村 吏(株式会社NTTデータ)
最後は中央省庁側のネットワーク事情が紹介されました。自治体とは異なる法整備や運用体制があり、とくに政府共通ネットワーク(GSS)と呼ばれる仕組みを活用する話が印象的でした。
GSS経由でガバメントクラウド(AWSなど)に専用線接続を行うケースや、インターネット接続を許容するケース、さらには複数の省庁間を束ねる構成など、現行の推奨パターンが示されました。クラウド間連携や運用保守用のアクセスはシステムマネージャー経由にするか、VPNではなくゼロトラストの考え方を導入するかなど、多岐にわたる検討ポイントがあるとのこと。
「公共系システムはコスト面やセキュリティ要件で専用線に頼りがちだが、できるだけマネージドサービスを生かすのがクラウドスマートの考え方だ」と語られ、公共案件においてもAWSの最新機能を活用する流れが加速しそうだと感じました。
クロージングと今後の展望
イベントの締めくくりでは、「JAWS DAYS 2025」や「Gov-JAWS(仮)の今後の勉強会」、そして「NW-JAWS」の次回開催情報が告知されました。
JAWS DAYS 2025 2025年3月1日に池袋サンシャインシティで開催予定のJAWS-UG最大イベント。登壇セッションやコミュニティ交流が盛りだくさんで、すでに参加枠は大人気とのこと。ネットワーク関連や公共分野のセッションも複数予定されています。
Gov-JAWS(仮称) 公共分野でクラウドを利用する技術者や行政担当者を中心とした新コミュニティ。現在コンパスページがオープンしており、4月頃の第1回イベントに向けて準備中。官民問わず参加歓迎とのことです。
NW-JAWS次回勉強会 2月21日にオンラインで開催予定。すでに150名以上がエントリーしており、ネットワークの知見をさらに深めたい人には見逃せない内容になりそうです。
アンケートへの協力依頼もあり、運営メンバーが「今後のイベント改善やテーマ設定に役立てたいので、皆さんの生の声をいただけると嬉しい」とコメントしていました。
まとめ:広がり続ける「公共×ネットワーク×AWS」の可能性
今回の「NW-JAWS 公共スペシャル with Gov-JAWS」では、ガバメントクラウドへの移行をめぐる国家全体の方針や、自治体・省庁それぞれのネットワーク事情、さらにAWSでの実装のポイントなどが一気に共有されました。
公共分野のクラウド活用は、法整備やセキュリティ要件によって複雑に見えがちです。しかし、逆に言えば「安定したネットワークとAWSをどうつなぐか」という点で、イノベーティブなサービスやノウハウが生まれる可能性が高いとも言えます。今回の登壇者たちは、「まずは知識を共有しよう」「制約を逆手に取りつつ、最新のAWSサービスを活かしたい」といった前向きな姿勢を強調していました。
今後、Gov-JAWSが本格始動すれば、地方・国の垣根を超えた具体的な事例や成功談がますます増えていくことが期待されます。NW-JAWSをはじめ、既存のコミュニティと連携しながら、公共分野のクラウド移行がよりスムーズかつ発展的に進んでいくでしょう。
「やるべきことが山ほどある」という声も聞かれましたが、それ以上に「みんなで取り組めば、大きな社会インパクトが生まれるはず」という熱気が画面越しに伝わってきたのがとても印象的でした。これからの公共ITとAWSの関わりがどう進化していくのか、今後の展開に大いに期待したいと思います。
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